武藤茂樹(むとう・しげき)|第28期・航空自衛隊

武藤茂樹は昭和36年12月生まれ、埼玉県出身の航空自衛官。

防衛大学校第28期の卒業で幹候74期、職種は飛行だ。

F-15戦闘機のパイロットであり、TACネームはトニーである。

平成29年7月(2017年7月) 南西航空方面隊初代司令官・空将。

前任は南西航空混成団司令であり、南西航空混成団が航空方面隊に格上げされ、航空自衛隊が4方面体制に再編された際の最初の司令官となった。

さて、航空自衛隊第28期組の絶対エースの一人、武藤である。

恐らく、第34代航空幕僚長である杉山良行(第24期)の後任には27期組から空幕長が選ばれることになると思うが、その次の空幕長に28期組があたることになれば、その有力候補の一人であるスーパーエリート自衛官だ。

我が国の厳しい安全保障環境の中にあって2017年7月、南西航空混成団が南西航空方面隊に格上げされる際の司令官を務め、多くのF-15戦闘機を新たに受領し、中国人民解放軍に対峙する役割を任された男である。

自衛隊における最大のキーマンであると言っても過言ではない空将と言っていいだろう。

また、これだけの重責を任された男だ。

若年よりそのキャリアは常に周囲からの期待を受け続け、そしてその全ての期待に結果で応えてきた。

航空自衛隊の入隊は昭和59年3月。

1等空佐に昇ったのは平成15年7月なので意外なようだが1選抜(1番乗り)での1佐昇進ではないものの、2番手グループでの昇進である。

そして将補に昇ったのが21年7月であり、さらにそこから6年、27年3月に空将に昇った。

1等空佐でこそ1選抜では無かったものの、空将補と空将への昇進は同期1選抜であり、1佐時代にその実力と頭角を現し、一気にトップグループに躍り出たキャリアであると言えるだろう。

なお2017年10月現在、28期組で空将の階級に在り、武藤のライバルであるのは以下のとおりだ。

荒木文博(第28期)・航空開発実験集団司令官

山田真史(第28期)・航空支援集団司令官

武藤茂樹(第28期)・南西航空方面隊司令官

(肩書はいずれも2017年10月現在のもの)

それぞれの昇進時期を見てみると、

荒木・・・1佐15年1月 空将補22年3月 空将27年8月

山田・・・1佐17年1月 空将補22年12月 空将27年12月

武藤・・・1佐15年7月 空将補21年7月 空将27年3月

となっており、バラバラというよりもメチャメチャである。

特に航空支援集団司令官の山田の場合、1選抜から2年遅れの1等空佐でありながら、空将に昇ったのがトップグループと同じ年度であり、なおかつ航空幕僚長候補であるというのは、陸や海では考えられない人事だ。

正にこのあたりが、航空自衛隊幹部自らが好んで口にする価値観、「勇猛果敢・支離滅裂」の所以であろう。

しかしだからこそ、組織として慣例にとらわれない強みが在り、結果次第ではいつでも上に行けるという凄さを感じる。

別のコラムでも少し触れたことがあるが、航空自衛隊の将官人事は、それまでのキャリアによらずに突然抜け出す幹部がおり、予測がつかないところがある。

だからこそ、軍事組織が陥りがちな硬直化を最も感じさせない組織という意味では、非常に頼もしくもあり、面白くもあり、当サイトのような予想屋泣かせでもある。

さてその上でだが、2017年10月現在、おそらく次の空幕長人事は2017年12月に動きがある公算が大きい。

第34代空幕長である杉山は退役もしくは統幕長に着任することになると思われるが、その際、杉山の後任で航空幕僚長に就任する可能性が高いのは27期組の将官となっており、そしてその最有力候補といえるのが前原弘昭(第27期)だ。

つまり航空総隊司令官のポストも、2017年12月に後任に引き継がれる可能性が高いわけだが、このポストは言うまでもなく、次期航空幕僚長に最も近い役職になっている。

特に近年、このポストを経験せずに頂点に昇る事は相当レアなことであり、そういう意味ではややポストの固定化が為されているとも言えるが、いずれにせよ天辺にもっとも近い椅子であることは間違いないであろう。

そして、おそらく前原の後任には、先述の28期組3人のうち誰かがこのポストに座ることは間違いないが、それは恐らく武藤だ。

近年、我が国の安全保障の最前線は南西方面であり、空自の最高幹部にとって、西部航空方面隊もしくは南西航空方面隊の司令官経験もしくは現場指揮経験は必須となっている。

そういった意味では、荒木は航空団司令ポストが第5航空団(新田原:宮崎)であり、山田は第83航空隊(現第9航空団:那覇)で、さらに航空方面隊司令官ポストは西部だ。

そういった意味では、南西航空方面隊司令官である武藤と並び、この3人にはトップエリートとして十分なキャリアがあると言えるが、やはり急増するスクランブルに対応し、肌感覚で最新の国防の危機に対応している経験は非常に大きい。

3人のうち誰が次期航空幕僚長候補筆頭である航空総隊司令官に昇ってもまったくサプライズではないが、2017年10月現在で、2017年12月にあるであろう空幕長の交代と27期組の退役では、以下のような将官人事になるものと予想している。

航空総隊司令官・・・武藤茂樹(第28期)

航空幕僚副長・・・荒木文博(第28期)

航空教育集団司令官・・・山田真史(第28期)

いずれも航空幕僚長に昇るものが最後に座るポストの一つであり、つまり最後まで、この3人は航空幕僚長候補を争い続けることになるだろう。

そして、もし28期組の中から空幕長が生まれる政治状況が発生するようであれば、この3人の誰かが第36代航空幕僚長に就任することになる。

さらにその場合、それはおそらく武藤である。

最高幹部人事は一寸先は闇ではあるが、空幕長人事が動く可能性がある2017年12月を前に、次の次の空幕長人事を、このように予測して置いておきたい。

本記事は当初2017年7月3日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年10月16日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年7月に公開した当時のものをそのまま残している。

武藤のパイロットとしての最初の任地は千歳の第2航空団。

冷戦の残り香がまだ色濃く感じられる昭和63年からF-15戦闘機を任された20代の若者は、猛烈な緊張感の中で対ソ防衛の最前線に立ち、日夜スクランブルで空に上がり続けた。

千歳における最前線での勤務は4年に及んだが、武藤はこの激務の中にあっていつの間にか美しい令夫人とめぐり逢い結婚し、子供まで授かるという、公私に渡るタフさを余すことなく発揮している。

(本当にタフである・・・)

そのため近年、人生で思い出深い地の一つとして第2航空団201飛行隊時代の千歳を上げているが、もっともであろう。

なお、その思い出の地である第2航空団では、平成22年7月から司令として指揮を執り、再び北の防人として我が国の平和と安全に大いに貢献した。

2016年度、航空自衛隊が行ったスクランブルの回数は過去最多で、実に1168回におよんだ。

そしてその7割は南西航空方面隊、つまり武藤の管轄空域であり、侵略の意図を強める中国の脅威は極めて現実的になっている。

常に国防の最前線で戦い、そして指揮を執り続ける武藤だが、今後とも我が国と国民の安全・生活を守るため、ますますの活躍を期待したい。

なお、南西方面の空の安全を守るエキスパートとして武藤を支える准曹士先任は荻野浩幸(おぎの・ひろゆき)・准空尉だ。

南西航空方面隊の初代先任であり、埼玉出身の新隊員213期。

航空方面隊に格上げになったこの方面隊の伝統を新たに作っていく、現場の責任者である。

ある意味において、事実上我が国の南西方面における防空任務を担う防人であるといえるだろう。

幹部だけでなく、曹士の力があってこそ我が国の平和と安全が担保されることは間違いなく、そしてその先頭に立つのが荻野だ。

ぜひ、現場を支える曹士にも目を向けて、自衛隊を応援して欲しい。

◆武藤茂樹・南西航空方面隊司令官(空将) 主要経歴

昭和
59年3月 防衛大学校卒業(第28期・横須賀)
63年6月 第2航空団201飛行隊(千歳)

平成
3年8月 第13飛行教育団(芦屋)
5年10月 第6航空団(小松)
6年8月 幹部学校指揮幕僚課程(市ヶ谷)
7年1月 1等空佐
7年8月 中部航空方面隊司令部(入間)
10年3月 航空幕僚監部運用課(檜町)
11年1月 2等空佐
12年2月 第7航空団第305飛行隊長(百里)
14年3月 航空幕僚監部運用課(市ヶ谷)
15年6月 米空軍大学国家戦略修士課程(米国アラバマ州)
15年7月 1等空佐
16年7月 航空幕僚監部装備体系課装備体系第1班長(市ヶ谷)
18年3月 イラク復興支援空輸計画部長
18年7月 航空幕僚監部防衛課防衛調整官(市ヶ谷)
19年7月 統合幕僚監部運用第1課長(市ヶ谷)
21年7月 航空幕僚監部次期戦闘機企画室長(市ヶ谷) 空将補
22年7月 第2航空団司令兼ねて千歳基地司令(千歳)
23年8月 防衛大学校防衛学教育学群長(横須賀)
25年8月 航空幕僚監部人事教育部長(市ヶ谷)
27年3月 空将
27年4月 統合幕僚監部運用部長(市ヶ谷)
28年12月 南西航空混成団司令(那覇)
29年7月 南西航空方面隊司令官(那覇)

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省南西航空方面隊Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/asdf/swadf/second/third/sireikan.html

防衛省知念分屯基地Webサイト(視察及び訓示写真)

http://www.mod.go.jp/asdf/chinen/katsudo1.html