田浦正人(たうら・まさと)|第28期・陸上自衛隊

田浦正人は昭和36年12月2日生まれ、長崎県出身の陸上自衛官。

防衛大学校第28期卒業で幹候65期、出身職種は機甲科だ。

平成29年8月(2017年8月) 第37代北部方面総監・陸将。

前職は第34代第7師団長であった。

我が国最大の方面隊にして、その装備、練度、戦技のあらゆる面から他の方面隊を凌駕していると言って良い北部方面隊。

その北部方面隊を指揮する田浦である。

戦後から冷戦時代にかけ、我が国の仮想敵はソ連であり、そのソ連の侵攻目標になる可能性が極めて高い北海道(北部方面隊)は常に人員と装備、予算が最優先で投入されてきた部隊であった。

また幹部曹士もその状況に甘えることなく、むしろだからこそ、自分たちこそが陸上自衛隊のベンチマークであり、自分たちの強さこそが日本の強さであるという自負の下、極めて過酷な訓練と演習を繰り返す。

そのようなこともあり、陸上幕僚長に着任するものが最後に通過するポストになったのは、過去36代を数える陸上幕僚長の中で、北部方面総監が10人と最多となっている。

ちなみに2番めは東部方面総監の9名、中部方面総監と陸上幕僚副長の6名と続き、西部と東北が各1名、その他の部署からが3名という構成になっている。

なおこの傾向は時代によって大きく異なり、戦後から80年代にかけては東部方面総監と陸上幕僚副長の持ち回りで陸幕長が選ばれ、80年代以降は北部方面総監と中部方面総監の時代になる。

東部方面総監からの着任は、1997年に着任した第26代・藤縄祐爾(第8期)から誕生していない状況だ。

然しながら、おそらく今後は北部方面総監優位の時代が終わり、ホットスポットである西部方面総監経験者が陸上総隊司令官を経て、着任する時代になっていくのではないだろうか。

また2018年3月に新設される陸上総隊司令官及び陸上自衛隊教育訓練研究本部長のポストと併せ、恐らく陸上幕僚副長ポストも、或いは格が上がり以前のように、陸幕長に着任する者にとって最後のイスとなる可能性があるだろう。

さて、そんな要職の中でも特に存在感がある北部方面総監に着任した田浦である。

そのキャリアを見てみると、機甲科の幹部として、これ以上はない非常に充実したキャリアの持ち主だ。

陸上自衛隊の入隊は、第28期の卒業なので昭和59年。

1等陸佐に昇ったのが平成15年1月なので、28期堂々の1選抜(1番乗り)スピード出世だ。

そして陸将補に昇ったのが21年7月で、こちらも自衛隊の人事制度最速の昇任である。

更に陸将には平成27年8月で、こちらも同期最速の昇任であった。

その一方で、28期組は非常にタレントが揃いすぎた大豊作の年であった。

2017年10月現在で、次期陸上幕僚長候補として数えられるものが、実に5名もいる。

その顔ぶれだが、

岸川公彦(第28期)・中部方面総監 施設科出身

湯浅悟郎(第28期)・西部方面総監 普通科出身

住田和明(第28期)・東部方面総監 高射特科出身

田浦正人(第28期)・北部方面総監 機甲科出身

岩谷要(第28期)・陸上自衛隊研究本部長 施設科出身

(肩書はいずれも、2017年10月現在)

以上のようになっており、岩谷要は2018年3月に新設が予定されている陸上自衛隊教育訓練研究本部長に横滑りすることが前提だが、この5人の中から誰が次期陸幕長に昇ってもサプライズではない状況だ。

そのため、田浦を除く3名の方面総監については、師団長ポストを経験した後、それぞれ統合幕僚副長、陸上幕僚副長、防衛大学校幹事と言った、方面総監に着任する前に経験するべき師団長より格上ポストを経験しているにも関わらず、田浦は経験していない。

早い話が、同期がたくさん偉くなりすぎて、師団長ポストの次に経験する上級ポストが満員だったというわけだ。

その結果どうなったか。

住田:第2師団長→統合幕僚副長→東部方面総監

湯浅:第9師団長→陸上幕僚副長→西部方面総監

岸川:第8師団長→防衛大学校幹事→中部方面総監

田浦:第7師団長→北部方面総監

と、間をすっ飛ばして北部方面総監にジャンプアップするという異動を見せた。

なお岩谷については、

岩谷:第4師団長→陸上自衛隊研究本部長→陸上自衛隊教育訓練研究本部長(予想)

という動きになっている。

いわば異例の出世を見せたわけだが、これもまた、我が国唯一の機甲師団である第7師団を預かり、機甲科一筋で生きてきた田浦ならではのポストワープと言ったところだろうか。

なお、詳細はこちらのコラム、

【コラム】次期陸上幕僚長人事予想|第37代・2017年10月予想

で詳述しているので割愛するが、このようなこともあり、恐らく次期陸上幕僚長に田浦が着任するのは難しいものと予想している。

しかしながらその分、中央即応集団副司令官を経験しているキャリアから考えて、あるいは2018年3月に新設される陸上総隊において、何らかの要職に横滑りする可能性もあるのではないだろうか。

なお余談だが、この画像の1佐は誰かおわかりだろうか。

実は平成16年の頃、43歳当時の田浦である。

防衛省の公式サイトである、サマーワの活動記録の中から発掘したなかなかレアな写真なのでここでご紹介しておきたい。

中東の伝統に従いヒゲヅラにしているが、こんな田浦の顔は今の若い曹士は全く知らないのではないだろうか。

この時の派遣先は、まだ戦争の空気が色濃く残るイラクのサマーワである。

当然生命掛けの任務になるわけだが、この任務を下令された時、田浦は妻の両親に充て、

「自衛官に嫁がせたばかりに、ご心配をお掛けして申訳ありません。しかし、私には仕事があります。行かせてください」

と、手紙を書いたそうだ。

そして妻には感謝していること、後のことをしっかり頼みますと、文中義父母にくれぐれも言伝たそうだが、恐らく田浦にとっては遺書代わりであったのだろう。

それほどまでに当時のサマーワは危険な場所であった。

なおかつこの時、田浦には小学校3年生と幼稚園の、まだ幼い2人の息子がいた。

どれほど後ろ髪をひかれる思いであったかと思うが、妻と子供には

「これが父の仕事だ、お父さんに何かあったらお母さんをしっかり頼む」

といい置きサマーワに渡り、そしてイラク復興第2次業務支援隊長として任務を完璧に果たし、部下の生命も守り抜き、日本に無事帰国を果たした。

そんな男が今、北部方面総監に昇り、家族だけでなく、国民の生命と財産を守る要職に就き、日々任務に励んでいる。

年齢的には、あるいはこの北部方面総監が最後の奉職になるかもしれないが、田浦が果たしてきた我が国に対する貢献は特筆するべきものだらけだ。

ぜひその知見を次の世代に伝え、自衛隊をさらに精強な組織へと育て上げるために、もうひと踏ん張りしてくれることを期待したい。

本記事は当初2017年6月23日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年10月27日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年6月に公開した当時のものをそのまま残している。

そんな中、田浦は第7師団の師団長に就任するが、2017年6月21日、第7師団で悲しい大事故が起きる。

陸上自衛隊北海道大演習場千歳・恵庭地区で演習中であった90式戦車が横転し、第73戦車連隊所属の車長(二等陸曹)が戦車の下敷きとなった。

2曹は直ちに救出され病院に搬送されるも、搬送途中での死亡が確認されてしまうという、非常に痛ましい事故になってしまった。

第7師団はもちろん、北部方面隊始まって以来、演習中に戦車が横転したことによる隊員の死亡事故は初めての大事故であった。

隊員の殉職には悲しみを禁じ得ず、心からの哀悼を捧げ、国防に身を捧げた尊い志とその人生に一国民として心からの感謝をお伝えしたい。

田浦師団長も広報を通じ、「痛恨の極みだ。事故の原因を徹底究明し、再発防止に全力を図る」と短いコメントを発表したが、戦車一筋で陸自に人生を捧げ、現場主義に生きてきた師団長だ。

この記事をポストした時点で、事故からまだ僅か1日。

その心中はいかばかりかと思うが、殉職した隊員のためにも、人生を賭けてエキスパートに登りつめた戦車乗りとして、師団長の職を賭して再発防止に全力で取り組み、もって殉職隊員の魂に報いてもらいたい。

◆田浦正人(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
59年3月 陸上自衛隊入隊(第28期)
60年3月 第12戦車大隊(相馬原)

平成
3年3月 第12戦車大隊第2中隊長(相馬原)
7年1月 3等陸佐
10年7月 2等陸佐
14年12月 第3戦車大隊長兼今津駐屯地司令(今津)
15年1月 1等陸佐
16年8月 イラク復興業務支援隊長(サマーワ)
17年4月 陸上幕僚監部防衛課業務計画班長(市ヶ谷)
19年4月 第72戦車連隊長(北恵庭)
20年8月 陸上幕僚監部運用支援課長(市ヶ谷)
21年7月 陸将補
21年12月 中央即応集団副司令官(朝霞)
23年8月 陸上自衛隊幹部候補生学校長(前川原)
25年12月 北部方面総監部幕僚長(札幌)
27年8月 第7師団長 陸将(千歳)
29年8月 北部方面総監(札幌)

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 北部方面隊公式Webサイト(顔写真及び着任式)

http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/

防衛省 イラク派遣記録公式Webサイト(活動記録写真)

http://www.mod.go.jp/j/approach/kokusai_heiwa/iraq/photo_a03.html

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