本松敬史(もとまつ・たかし)|第29期・陸上自衛隊

本松敬史は昭和37年7月3日生まれ、宮崎県出身の陸上自衛官。

防衛大学校第29期の卒業で幹候66期、出身職種は普通科だ。

平成29年8月(2017年8月) 統合幕僚副長・陸将。

前職は第8師団長であった。

なお、第8師団長当時の指導方針は以下通り。

【統 率 方 針】「任務の完遂」
【要 望 事 項】「足元を固めよ!」

なお、要望事項には上記の大項目のもと、以下の訓示がある。

・プロフェッショナルたれ
・南九州三県民とともにあれ
・家族を大切に

29期組の絶対エースにして、次の次の陸上幕僚長候補の一人である本松だ。

休日には趣味のゴルフとジョギングを楽しむと言うが、ジョギングというレベルではなく、既に50代半ばにしてその心肺機能は衰えを知らない。

それもそのはずで、本松は2017年11月現在でも、防衛大学校陸上部のハーフマラソン歴代記録保持者である。

そのタイムは1時間7分00秒。

昭和58年に叩き出した記録が未だに歴代28位で、防衛大学校陸上部に残されているほどの、文字通り歴代屈指の体力の持ち主だ。

なおゴルフの方は(以下自粛)。

極めて穏やかで、部下思いの陸将として知られる本松だ。

第8師団長当時の訓示に「家族を大切に」とあるが、これは自分自身が自衛官の子供として幼少期を過ごし、転勤族で寂しい思いをしたこと。

さらに自身も親として単身赴任を繰り返し、子供の行事にほとんど参加できなかったことから、

「後進にはなるべく家族を大事にして欲しい」

として訓示に入れ、そして実際に家族を大事にする価値観を組織に説き、第8師団で指揮を執った。

そして2017年11月現在で補職されているポストは統合幕僚副長。

いうまでもなく、将来の陸上幕僚長に着任するものとして必ず通っておきたいポストであり、逆に言うと、このポストに着任すると、同期の出世競争では大きなアドバンテージを握ることとなる。

次の異動ではいずれかの方面総監か、あるいは2018年3月に新設される陸上総隊の重要ポストなどに着任するのは確実であり、29期組の絶対エースと言っていいだろう。

なお同じ29期組で切磋琢磨する、ライバル関係にあるのは、以下の陸将たちだ。

柴田昭市(第29期)・第1師団長

山内大輔(第29期)・陸上自衛隊関東補給処長

清田安志(第29期)・第6師団長

納富 中(第29期)・第9師団長

本松敬史(第29期)・統合幕僚副長

上尾秀樹(第29期)・防衛大学校幹事

高田克樹(第29期)・陸上幕僚副長

(肩書はいずれも2017年11月現在)

これらのうち、本松、上尾、高田の3名が、師団長ポストをパスし、その上級職であるそれぞれの現職に着任している。

その意味では、29期組の出世競争はこの3名に絞られたと言っていいかもしれないが、2018年3月に新設される陸上総隊の存在は、もうひと波乱もふた波乱も、人事に影響を与えることは必至だ。

というのも、新設組織の初代司令官に誰が着任したところで、その際にはいずれかの方面総監からの着任が確実であろう。

その場合、方面総監のポストが1つ空くということになる。

あるいはこのタイミングで、もしかしたら28期組の早期退職勧奨もあるかもしれない。

そうなると重要ポストがさらに空く可能性もあり、”敗者復活戦”が行われ無いとも限らないという状況になる。

ifを重ねると収拾がつかないが、いずれにせよどの場合であっても、本松、上尾、高田の3名が最後まで、29期組の最終出走馬として残り続けることは間違いないだろう。

そしてその中でも、やはり統合幕僚副長ポストにある本松のアドバンテージは極めて大きい。

では次に、本松のキャリアについて確認していきたい。

もはやここまでのスーパーエリートなので昇任時期の確認も必要なさそうであるが、念のために解説すると陸上自衛隊に入隊したのが昭和60年3月。

1等陸佐に昇ったのが平成16年1月。

陸将補に昇ったのが22年7月。

陸将に昇ったのが28年7月である。

全てが完璧な1選抜(1番乗り)であり、自衛隊の昇任制度上で最短の、これ以上はないスピード出世だ。

正に絵に書いたような、スーパーエリートである。

その経歴もまたすごい。

3等陸佐の頃にはPKO活動で、第3次ゴラン高原派遣輸送隊長の隊長に着任。

この活動は、イスラエルとシリアの停戦を監視するUNDOF(国連兵力引き離し監視軍)の一員として我が自衛隊も参加したものであり、その後方支援を担当する輸送隊長として現地に赴いたものだ。

この任務を成功させ、全ての部下と共に無事帰国を果たした本松は、そのわずか2年後には米陸軍指揮幕僚大学に留学。

1佐昇任後は陸幕の人事系で要職を歴任し、陸将補に昇進。

自衛官としての優れた能力はもちろん、高い人格と人間力を備えているものだけが着任できる沖縄地方協力本部長も経験し、師団長経験は、ホットスポットである第8師団長である。

まさに昇任スピードと同様に、これ以上無い最高の出世コースで統合幕僚副長に着任した。

2017年11月現在で、自衛隊トップに着任するものを10年計画で育てようと考えた場合、これ以上はないポストを歴任しており、何一つとして足りない経験がない。

もちろん、連隊長経験や師団長(相当職)経験などで、他にも陸幕長候補者が通るルートはある。

例えばCRF(中央即応集団)や、施設団長経験などもあれば凄いことだが、同格ポストを幾つもできるわけではないのでそれは無い物ねだりというものだ。

普通科出身の最高幹部として、2017年11月現在のホットスポットである西方・南西方面経験も十分であり、有事が勃発した際の肌感覚に不安はない。

ちなみに、ライバルである同じ29期組の上尾は、本松の前任として沖縄地本長に着任。

さらに第15旅団長(那覇)を経験している。

師団長は第6師団(山形)で地域のバランスを取った形だが、29期組トップエリートの3人のうち2人までが、このように西方経験を手厚く歴任している形だ。

そして上尾は、本松と同じ普通科出身でもある。

2017年現在で、いかに人事権者が普通科出身の最高幹部に対し、西方での経験を重視しているか。

おそらく、これをもってしてもおわかり頂けるのではないだろうか。

ちなみに30期組のトップエリートである髙田祐一(第30期)もまた、連隊長と師団長経験は西方(西部方面隊)である。

今後さらに、29期組は切磋琢磨して我が国の平和と安全のために全力を尽くし、職務に取り組んでくれることであろう。

その中でも注目を集める幹部の一人が本松ということになるが、まずは、次の方面総監人事でどのポストに着任することになるのか。

注目して追ってもらえれば幸いだ。

本記事は当初2017年6月24日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年11月4日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年6月に公開した当時のものを一部抜粋する形で、そのまま残している。

意外なようだが、第8師団長経験者で陸幕長に登りつめたのは、自衛隊史上ただ一人。

東北方面総監から陸幕長に昇った故・君塚栄治氏のみである(2017年6月現在)。

かつ君塚の場合、東日本大震災の発生に際し、東北方面総監という”退任ポスト”に在りながら、陸海空を統合する自衛隊史上初めての司令官に就任した功績が評価された側面が大きい。

逆に言うと、君塚の指揮統率能力はそれ程までに卓越していることが「有事」において改めて証明され、東北方面総監からは陸幕長になれないという先例を覆す形での、第33代陸幕長に着任する環境が整ったということだ。

君塚の指揮統率に関する素晴らしさは様々なエピソードに溢れており、ここでご紹介するのは本論から外れるので控えるが、本当に惜しい人物を失ったことが悔やまれる。

退任後わずか2年、63歳の若さで早逝されるとは、やっと家族との時間を過ごせる事になった幹部自衛官の人生が何であったのかと。

ただ、神様の気まぐれを恨めしく思い、我が国にとってまだまだ必要であった男をこんなにも早く連れて行ってしまったことを、悔しく思うばかりだ。

本松にはぜひ、君塚以来となる第8師団長出身者として2人目の陸上幕僚長を目指し、さらに国民の期待に応える活躍を重ねることを期待したい。

◆本松敬史(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
60年3月 陸上自衛隊入隊(第29期)
61年3月 普通科教導連隊(滝ヶ原)

平成
4年3月 富士学校 普通科部教官(富士)
5年8月 指揮幕僚課程(第39期、市ヶ谷)
7年8月 第1普通科連隊中隊長(練馬)
8年1月 3等陸佐
9年1月 第3次ゴラン高原派遣輸送隊長(ゴラン高原)
9年9月 陸上幕僚監部防衛部(檜町)
11年3月 中央資料隊付(米陸軍指揮幕僚大学)
11年7月 2等陸佐
12年8月 陸上幕僚監部 防衛部(市ヶ谷)
16年1月 1等陸佐
16年8月 陸上幕僚監部人事部補任課(市ヶ谷)
17年4月 陸上幕僚監部人事部補任課人事1班長(市ヶ谷)
19年8月 第39普通科連隊長(弘前)
21年3月 陸上幕僚監部人事部人事教育計画課長(市ヶ谷)
22年7月 陸将補
23年4月 北部方面総監部幕僚副長(札幌)
24年7月 自衛隊沖縄地方協力本部長(沖縄)
26年8月 陸上幕僚監部教育訓練部長(市ヶ谷)
28年7月 第8師団長 陸将
29年8月 統合幕僚副長

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 第8師団公式Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/kisikawadcg/kisikawadcg.html

防衛省 統合幕僚監部公式Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/js/Joint-Staff/js_vcs.htm

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