納冨 中(のうどみ・みつる)|第29期・陸上自衛隊

納富 中は昭和37年7月生まれ、神奈川県出身の陸上自衛官。

防衛大学校第29期の卒業(管理学)で幹候66期、出身職種は野戦特科だ。

平成28年7月(2016年7月) 第33代第9師団長・陸将。

前任は東北方面総監部幕僚長兼 仙台駐屯地司令であった。

なお、第9師団長としての指導方針は以下の通り。

【要望事項】「プロたれ」

なお、納冨の正式な漢字表記は富がうかんむりではない冨だが、ここでは標題以外、略字を用いずに納富と表記する。

いろいろな意味で特殊な経歴をもつ興味深い師団長、納富中である。

その経歴は非常に充実しており、陸上自衛隊を背負っていくトップエリートとして、これ以上はない理想的なキャリアを歩んできた。

防衛大学校の卒業は昭和60年3月。

幹部候補生学校の教育を終えると、最初に配属になったのは名寄駐屯地に所在する第2特科連隊の第2大隊だ。

名寄駐屯地は、我が国の陸上自衛隊の中で、1線級の戦闘集団としては最北に位置する第3普通科連隊が所在する駐屯地である。

その為、冷戦時代から対ソ連戦闘の最前線の拠点と位置づけられており、第3普通科連隊長(名寄駐屯地司令兼補)職は、トップエリートたちがこぞって志願した役職でもある。

そして実際に、第3普通科連隊長経験者からは、第13代陸上幕僚長(第11代統合幕僚会議議長)である高品武彦(陸士54期)や、第32代陸上幕僚長である火箱芳文(第18期)など、名だたる名将を排出している地でもある。

まだ冷戦の緊張感が冷めやらない中、陸上自衛官生活をその名寄駐屯地から始めるというのは非常な名誉であり、またそれだけ、納富に対する期待値も非常に大きなものであったことが窺える初任地と言えるだろう。

しかしその後、平成4年に幹部学校のCGS(指揮幕僚課程)に進むと、一転して野戦特科のエキスパートというよりも、軍人外交に従事するキャリアが目立ち始める。

平成6年8月には外務省に出向し欧亜局西欧第1課に勤務。

さらに平成10年から12年まではハーバード大学大学院に学び、そのまま研究員を務め、さらに平成16年からは米国陸軍戦略大学にも留学し、極めつけの米国通なキャリアを形成する。

それらキャリアはまるで、駐アメリカ日本大使館付きの防衛駐在官として設計されたかのような経歴になっているが、そのままと言うべきであろうか。

平成20年6月から3年間、駐米防衛駐在官として軍人外交に従事し、その充実したキャリアを活かす、数々の外交成果を挙げるに至っている。

なおこの際、3等陸佐に昇任した平成8年から、陸将補に昇任した平成20年までの佐官時代では、野戦特科の現場に赴任したのは平成19年から平成20年6月までの第8特科連隊長職のみである。

ある意味で、野戦特科出身でありながらどちらかというと軍人外交が専門とも言える佐官時代を過ごしたとも言えるキャリアになっており、非常に興味深い最高幹部の一人だ。

更に興味深いのは、その昇任の仕方であろうか。

先述のように、納富の防衛大学校卒業年次は昭和60年3月で第29期である。

この年次の卒業生は、1選抜(1番乗り)で1等陸佐に昇るのは平成16年1月だ。

そして納富も、陸将にまで昇るトップエリートの多くがそうであるようにこの時期、1選抜で1等陸佐に昇っている。

特殊なのはこの後である。

通常、1等陸佐から陸将補に昇るには6回の人事考課(つまり6年)が必要というルールが有り、そのためどんなトップエリートでも、これ以下の年数で1等陸佐をパスし、陸将補に昇ることはない。

しかし納富の場合、なぜか平成16年1月に1等陸佐に昇った4年後、平成20年6月に陸将補に昇った旨の記載が防衛年鑑に記載されている。

またこの時代、出向先の外務省の記録を見ると(防衛駐在官在任中は外務省職員となる)、陸将補の身分で防衛駐在官を務めている記載がある。

つまり、なぜか納富の場合、6回の人事考課が必要な陸将補昇任人事をなぜか4回でパスし昇任を果たしていることになるのだが、その理由まではさすがにわからない。

おそらく外交儀礼上の問題などで米国防衛駐在官に必要な階級に上がるのか、もしくは任期中に陸将補の昇任が予定されている、などが理由だと思われるがいずれにせよ納富は、1選抜というレベルではない速度で陸将補に昇任した。

もちろん、同期ぶっちぎりの最速だが、これが1選抜と呼べるのかどうかはわからない。

ところで、師団長まで昇れば意識せざるを得ないのが、トップ争いの行方である。

2017年10月現在、陸上幕僚長を務めているのは山崎幸二(第27期)であり、その後任候補としては当然、28期組と29期組が視野に入ってくる。

28期組まで含めると話が拡散するので、29期の同期だけで見ると、2017年10月現在で陸将の階級にあり、次期陸上幕僚長候補の有資格者といえるのは以下の通りだ。

柴田昭市(第29期)・第1師団長

山内大輔(第29期)・陸上自衛隊関東補給処長

清田安志(第29期)・第6師団長

納富 中(第29期)・第9師団長

本松敬史(第29期)・統合幕僚副長

上尾秀樹(第29期)・防衛大学校幹事

高田克樹(第29期)・陸上幕僚副長

(肩書はいずれも2017年10月現在)

これら最高幹部の現状を見ると、あくまでも2017年10月現在の段階では、1歩リードしているのは本松、上尾、高田の3名である。

統合幕僚副長、防衛大学校幹事、陸上幕僚副長はいずれも師団長より格上のポストであり、実際にこの3名は師団長ポストをパスして、これらの役職に着任している。

しかしながら、2018年3月に行われる陸自大改革では陸上総隊の新設に陸上自衛隊教育訓練研究本部の新設など、陸上幕僚長に着任するものが最後に通過するであろうポストになる可能性が高い役職が2つ誕生する。

そうなれば、これまでは当たり前であった人事の慣例が崩れることになり、上記の3名がそのまま方面総監に格上げになるのかも不透明な情勢だ。

場合によっては、上級組織である陸上総隊の幕僚長(主席幕僚)ということもあるだろう。

その為、これまでの人事の慣例がもっとも通用しないのが第29期組の人事であり、その行方は正直、2018年3月に新設されるこれら組織の人員配置を見てみなければなんとも言えないところがある。

そしてその中心メンバーとなるのが、上記29期組の最高幹部であり、納富もその一員ということだ。

これ以上はない、陸上自衛隊だけでなく自衛隊全体を代表するほどの米国通である納富だ。

第30代統合幕僚長である河野克俊(第21期)が、数次に渡る定年延長を経て異例の長期在任を果たしているのも、その米国通で知られる知見と、米国に対する太いパイプを持つ事が主因であると言われている。

或いは納富も、その米国通の知見を活かしてさらに要職に昇ることがあっても決してサプライズではない。

29期組の人事は、これほどまでにとても興味深く目が離せない。

ぜひ注目して、納富の異動と併せて注視してもらえれば幸いだ。

本記事は当初2017年6月25日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年10月25日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年6月に公開した当時のものをそのまま残している。

◆納冨 中 第9種団長(陸将) 主要経歴

昭和
60年3月 陸上自衛隊入隊(第29期)
60年9月 第2特科連隊 (北海道名寄)

平成
4年8月 幹部学校付 指揮幕僚課程(東京都市ヶ谷)
6年8月 外務省 欧亜局西欧第1課(東京霞が関)
8年1月 3等陸佐
8年8月 統幕事務局 第5室軍備管理班(東京都檜町)
10年6月 ハーバード大学 ケネディー行政大学院修士課程(ボストン)
11年7月 ハーバード大学 ケネディー行政大学院研究員(ボストン) 2等陸佐
12年8月 陸上幕僚監部 防衛部防衛課防衛班(東京市ヶ谷)
16年1月 1等陸佐
16年6月 米国陸軍戦略大学(ペンシルベニア)
17年8月 陸上幕僚監部 教育訓練部 訓練・演習班長(東京市ヶ谷)
19年3月 第8特科連隊長(北熊本)
20年6月 在米国防駐在官 国防・陸軍担当(ワシントンDC) 陸将補
23年8月 中央即応集団副司令官 国際担当(東京朝霞)
24年7月 陸上幕僚監部 運用支援・情報部長(東京市ヶ谷)
26年8月 東北方面総監部幕僚長(仙台)
28年7月 第9師団長 陸将

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 第9師団公式Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/gyouji/h29Dkinenn/h29Dkinenn.html

http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/33dcg/33dcg.html

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コメント

  1. sarudon1961 より:

    「みつる」?「あたる」の間違えでは、中高校時代は「あたる」
    でしたよ。

    • ytamon より:

      sarudon1961様
      ご連絡ありがとうございす。
      納富陸将の元同級生とは、なんとも羨ましい限りですね。
      どんな少年だったのか、とても気になるところです。

      さてご指摘の件ですが、わざわざご連絡ありがとうございました。
      ご指摘を受けて、自衛隊年鑑2016~2017年版、防衛年鑑2017年版を改めて確認しましたが、どちらも「のうどみ・みつる」となっているようです。
      食い違いの理由は正直わかりませんが、自衛隊でのお名前はみつるであることは、どうやら間違いなさそうです。