甲斐芳樹(かい・よしき)|第28期・陸上自衛隊

甲斐芳樹は昭和36年10月2日生まれ、熊本県出身の陸上自衛官。

防衛大学校第28期(化学)の卒業で幹候65期、出身職種は普通科だ。

平成29年8月(2017年8月) 第32代第10師団長・陸将。

前職は第11旅団長であった。

なお、第10師団長としての統率方針は以下の通り。

【統率方針】 ー

【要 望 事 項】「任務優先」「訓練実効」「地域信頼」

近年にない大豊作の年次である、28期組の甲斐だ。

28期組には非常に優秀な将官が多く、出世を巡る激しい「椅子取りゲーム」となっており、2017年11月現在で方面総監5人中4人が28期組である。

さらに、2018年3月に新組織として発足する陸上自衛隊教育訓練研究本部長のポストにも、このまま行けば28期組から初代本部長が着任する予定であり、2017年11月現在、最高幹部の中心的役割を果たしている年次であると言って良い。

早速だが、その28期組で将官にある者の状況を見てみると、2017年11月現在で以下のようになっている。

岸川公彦(第28期)・中部方面総監 施設科出身

湯浅悟郎(第28期)・西部方面総監 普通科出身

住田和明(第28期)・東部方面総監 高射特科出身

田浦正人(第28期)・北部方面総監 機甲科出身

岩谷要(第28期)・陸上自衛隊研究本部長 施設科出身

西浩德(第28期)・幹部学校長 普通科出身

甲斐芳樹(第28期)・第10師団長 普通科出身

(肩書はいずれも、2017年11月現在)

方面総監にある4名は、既に師団長を務め上げ方面総監に着任していることから、28期組の陸所幕僚長レースはとりあえず、この4名+岩谷の5名に絞られたと見て良いだろう。

ただし、28期組にはまだもうひと波乱ある。

それは、2018年3月に新設される陸上総隊の存在だ。

この組織の初代司令官には、5人いる方面総監の中からいずれかが着任する可能性が極めて高い。

それが誰になるのかは別コラム、

【コラム】初代陸上総隊司令官人事予想|2017年10月

で詳述しているのでここでは割愛するが、要はそれが誰であるにせよ、方面総監のポストが一つ空席になるということだ。

その空席となった方面総監には、29期組から1名だけが選抜される可能性もあるが、自衛隊は同期の中から一人だけを突出させて昇任させる人事を嫌う。

すなわち、空席が1つだけであるならばそのポストには甲斐が着任する可能性が高いと考えられるわけだ。

なおこのシナリオの場合は、初代陸上総隊司令官は山之上哲郎(第27期)になり、その後任ということになるだろう。

別のシナリオとしては、4人いる28期組の方面総監のうち1名を初代陸上総隊司令官に着任させ、山之上を退役させ空席をもう一つ確保。

29期組に方面総監ポストを2つ用意して昇任させるということが考えられる。

この場合、甲斐は2018年3月で退役となる可能性が高い。

新しい巨大組織がいくつも生まれるとなると、それまでの人事の慣例が通用しないので先が読み難いところがあるが、いずれにせよ28期組は当たり年であり、並大抵の優秀さでは頂点に昇れないという年次になっている。

国民目線では頼もしい限りだが、当事者としては堪ったものではないだろう。

そんな28期組の将官の一人である甲斐だが、どんなキャリアを歩んできたのか。

甲斐が陸上自衛隊に入隊したのは昭和59年3月。

1等陸佐に昇任したのが平成15年1月なので、28期組1選抜(1番乗り)のスピード昇任だ。

そして陸将補に昇ったのが平成23年4月なので、同期1選抜に比べ約2年遅れと言うことになる。

そして陸将に昇ったのが平成29年8月。

こちらも同期1選抜からみると、陸将補昇任時期で遅れた2年そのままに、2年遅れを取っているということになった。

言うまでもないことだが、これをもってして「出世が遅い」というものではない。

そもそも将官に昇るという事自体が自衛官にとって究極の出世であり、これ以上はないトップエリートの自衛官だ。

頂点を極めるレース(陸上幕僚長レース)とは別ルートの出世になっている、という評価はあたるかもしれないが、そもそも将官には様々なタイプが居る。

戦闘部隊を指揮することに長けているもの。

後進を育てることに長けているもの。

部隊間の調整を行うことに長けているもの。

兵站を扱わせたら右に出るものがいないもの。

政治家との折衝に長け、予算を取ってくるのが上手いもの・・・・。

そして陸上幕僚長はある意味で、これらのバランスが良いものであって、決して何かに突出しているものが就くわけではない。

陸将に昇るという事自体が何かに突出した素晴らしい能力があるということであり、その頂点である陸上幕僚長に昇るものは、これらのバランスが高いレベルでまとまっているもの、という傾向があるといえるだろう。

では甲斐が、陸将まで出世するほどに何に優れており、そして評価されたのか。

それは、その歴任してきたポストを見ると、非常にわかり易いものになっている。

甲斐の自衛官人生のスタートは第11普通科連隊(東千歳)。

同連隊は、普通科連隊でありながら1500名もの定員規模を誇り、これは通常の連隊規模(800名)のほぼ倍。

普通科連隊(軽)の650名前後と比べると、2.5倍の規模にあたる。

ではなぜ、この普通科連隊はここまで大規模なのか。

それは、第11普通科連隊が陸上自衛隊唯一の機甲師団(第7師団)隷下にある普通科連隊であり、機甲科と協働する機動力と打撃力を重視した戦力であって、我が国の切り札とも言える戦闘集団だからだ。

機動力と打撃力と戦力の集中。

陸戦戦闘で局地戦を制するために必要な要素を全て持ち合わせた戦力であり、ソ連が仮想敵国であった時代から、北の防人として極めて充実した戦力を保持する師団であり連隊だ。

甲斐はそのような師団隷下にある普通科連隊で、自衛官人生を歩み始めた。

その後は、冬季特殊戦闘に優れ、冬季レンジャーとも呼ばれる第26普通科連隊(北海道:留萌)で指揮を執り、幹部学校で学んだ後に3佐に昇任。

再び第7師団隷下に配属になって、普通科の幹部でありながら第73戦車連隊の中隊長に。

第33普通科連隊で連隊長を経験した後は陸将補に昇り、第1師団副師団長を務めた。

その後、北海道は札幌の第11旅団で旅団長を歴任し、現職である第10師団(愛知)の師団長に着任したわけだが、このキャリアから見えることは、機動力を活かした上での、都市型防衛に優れた将官であるということだ。

陸上自衛隊の予算はどんどん削減され、特に機甲科と野戦特科の定員と予算の削減方針が非常に厳しい。

そして、師団隷下にあった機甲科と野戦特科は廃止・統合の上で、方面隊直轄の部隊に再編される方針が決まっている。

このような状況の中で陸上自衛隊が精強さを維持するためには、戦力を集中させた上で機動展開能力を高める以外の方法はないだろう。

つまり、普通科と機甲科を有機的に連動し機能させ、さらに戦力の機動展開に長けた司令官の存在が絶対不可欠な状況にあるということだ。

そしてその指揮官こそが甲斐であり、どのような状況でも、必要な戦力を必要な場所に迅速に展開させる指揮能力の高さ。

これこそが、甲斐が将官に昇り詰めた理由であり、我が国が必要とする陸将たる所以であろう。

戦力の過渡期にあって、師団という最前線に立ち続け、陸自大改革を現場から支える将官である。

28期組の人事の行方は楽しみではあるが、一方で甲斐が今後どのような異動をみせ、我が国の平和と安全のためにさらに貢献をし続けてくれるのか。

それもまた、併せて注目したい人事の見どころである。

本記事は当初2017年6月26日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年11月9日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年6月に公開した当時のものをそのまま残している。

◆甲斐芳樹(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
59年3月 陸上自衛隊入隊(第28期)
60年3月 第11普通科連隊(北海道:東千歳)
62年3月 防衛大学校 研究科学生(神奈川:横須賀)

平成
元年3月 第26普通科連隊(北海道:留萌)
3年3月 幹部候補生学校(福岡:前川原)
4年8月 幹部学校 学生(東京:目黒)
6年8月 富士学校普通科部(静岡:富士)
7年1月 3等陸佐
8年8月 第73戦車連隊 中隊長(北海道:南恵庭)
10年3月 陸上幕僚監部 装備部 装備計画課(東京:檜町)
10年7月 2等陸佐
13年3月 陸上幕僚監部 防衛部 防衛部防衛課(東京:市ヶ谷)
15年1月 1等陸佐
15年8月 統合幕僚学校 学生(東京:目黒)
16年8月 陸上幕僚監部 人事部 人事計画課 制度班長(東京:市ヶ谷)
18年12月 第33普通科連隊長 兼 久居駐屯地司令(三重:久居)
20年8月 陸上幕僚監部 防衛部 情報通信・研究課長(東京:市ヶ谷)
23年4月 第1師団副師団長 兼 練馬駐屯地司令(東京:練馬) 陸将補
25年3月 北部方面総監部 幕僚副長(北海道:札幌)
26年3月 陸上幕僚監部 法務官(東京:市ヶ谷)
27年8月 第11旅団長(北海道:真駒内)
29年8月 第10師団長(愛知県:守山) 陸将

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 第11旅団公式Webサイト(顔写真および着任式)

http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/head-of-division/index.html

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