河野克俊(かわの・かつとし)第21期・海上自衛隊

河野克俊は昭和29年11月28日生まれ、神奈川県出身の海上自衛官。

防衛大学校は第21期の卒業、幹候は28期の卒業だ。

昭和20年代生まれの、最後の制服自衛官となる。

平成26年10月(2014年10月) 統合幕僚長・統合幕僚長たる海将

前職は海上幕僚長であった。

言わずと知れた自衛隊のラスボス、河野だ。

統幕長として異例の2度の定年延長措置を受け、朝鮮半島危機に揺れる我が国において、制服組最高責任者として難局に当たり続けている。

そのキャリアは極めて充実しており、海将補までは21期組1選抜、海将昇任は1選抜から数ヶ月遅れたが、海空将官人事では大した差にはならない。

その勢いのまま24年7月に海上幕僚長に、26年10月に統合幕僚長に昇った。

歴任してきたポストも、第3護衛隊群司令、掃海隊群司令、護衛艦隊司令官、自衛艦隊司令官と、現場における要職を全て通過。

海幕では監理部長、総務部長、防衛部長と、冗談のように部長職を歴任し、さらに統合幕僚副長も経験した上で制服組のトップに昇りつめた。

その河野だが、昭和29年11月生まれなので平成30年3月現在で63歳。

統合幕僚長の定年は62歳だが、緊迫する東アジア情勢下においては容易に退役させることができないということであったのだろう。

すでに2回、定年の延長が閣議決定され、2018年3月現在でその在任は3年半に及ぶ。

なお、統合幕僚長の定年が2度に渡り延期されたのはもちろん、河野が史上初めてであった。

とは言いながら、いくら河野が他に得難い統幕長であったとしても、いつまでも務めるわけにはいかない。

そしてその河野の延期された任期は2018年5月までとなるが、さすがに今度ばかりは交代となる可能性が高く、この記事をポストしている時から考え2ヶ月後には、久しぶりの統幕長交代人事がある見込みだ。

政府高官から「ドラえもん」とあだ名されるほどに愛され、そしてあらゆる難局をまるでひみつ道具を出してしまうかのように解決してきた河野だが、その自衛官生活は終りが近づいている。

そうなるとやはり、注目されるのは後任人事であり、どのように人事が動くのか。

少し状況を整理してみたい。

統合幕僚長に選ばれる可能性がある有資格者は、3名のみ。

すなわち、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長であり、この3名の中から必ず選ばれる。

なおかつ、実務的であると同時に政治的な意味合いも持つ統合幕僚長のポストは、どれほど優れた幹部であっても連続して同じポストから選ばれることは想定できない。

つまり、陸上幕僚長出身者である統合幕僚長の後任には必ず海か空出身の幕僚長が着任するということだ。

なおかつ、あくまでも慣例という意味ではあるが、これまでの統幕長は陸が優遇されてきた傾向がある。

すなわち、陸→空→陸や、陸→海→陸のように、間に海か空を挟んで再び陸出身者が統合幕僚長に就くことはあったが、空→海→空や、海→空→海などのように、3代で1度も陸が選ばれなかった人事の歴史はない。

これは統合幕僚長の前身である統合幕僚会議議長の時代からも同様であり、冷戦構造下では旧ソ連が最大の仮想敵であったことから、陸上自衛隊の役割が非常に大きかったという事情も背景にあったと考えられる。

その上で、2018年3月現在の候補者3名は以下の通りとなっている。

陸上幕僚長 山崎幸二(第27期) 2017年8月着任。

海上幕僚長 村川豊(第25期) 2016年12月着任。

航空幕僚長 丸茂吉成(第27期) 2017年12月着任。

これらのうち、河野の跡を継ぎ、誰が第31代統合幕僚長に着任するのか。

おそらく、先に述べたような慣例から考えると、どれほど適材適所であり、有能であったとしても、海自出身である村川の可能性は極めて低く、まず0であると言って良いだろう。

なおかつ村川は後方支援職種(経理)の出身であり、現下の東アジア情勢下においては、統合幕僚長に昇るとは考えづらい。

これらのことから、統幕長候補としては消去法で消えることになる。

次に候補になるのが陸の山崎幸二だ。

先述の通り、統合幕僚長に3代連続で陸が着任しなかった例はなく、統合幕僚長は29代が岩崎茂(19期)で航空自衛隊出身、第30代が河野克俊(21期)で海上自衛隊出身と続いている。

そのため本来であれば、いわゆる南スーダン日報隠蔽問題の騒動で岡部俊哉(25期)が引責辞任に追い込まれていなければ、陸上幕僚長から岡部がそのまま統合幕僚長に着任していただろう。

2017年6月の河野の定年延長期限切れの時であり、スムーズに次の人事が既定路線で動いていたはずだ。

このような慣例を踏襲するのであれば、2018年5月に、陸の山崎が陸幕長の任期を1年も務めずに切り上げ、第31代の統合幕僚長に着任する見通しとなる。

慣例を考えた上では、一番スムーズな落とし所だ。

では空の丸茂はどうだろうか。

率直に言って丸茂のキャリアは完璧だ。

2018年現在の安全保障環境を考えると、丸茂以上に我が国の最前線を知り尽くす自衛隊最高幹部は他にいないと言っても良い。

空幕においては次期主力戦闘機の選任責任者を務め、現場では南西航空混成団(現:南西航空方面隊)や西部航空方面隊において指揮官を歴任。

朝鮮半島情勢だけでなく、中国人民解放軍の行動が活発化しスクランブルが急増する時代において最前線で指揮を執り、完璧な対応で我が国の空の安全を守り続けた経歴を持つ。

キャリアだけで言えば、今の安全保障環境下において、丸茂が統幕長に昇らないとは思えない。

後は、空幕長に昇ってわずか5ヶ月後に着任することがあり得るのか、ということくらいであろうか。

とは言え在任期間の短さで言うなら、山崎は2018年5月の段階で10ヶ月である。

5ヶ月は短すぎるが10ヶ月ならOKというのも根拠のない理屈だ。

つまり、慣例で考えれば山崎、キャリアで考えれば丸茂ということだ。

そして軍事組織の慣例は、おそらく一般に知られている以上に相当強固なものがあり、容易に変えがたいものがある。

軍事組織とはそれほどまでに本能的に保守的であり、新しい試みを嫌うが、これは軍事組織による意思決定が人命と国運に直結しているからだ。

言い換えれば、効果が読めない武器、結果の予測が困難な作戦で人命を損耗し、国運を変えるようなことなどできるはずがないということであり、保守的になるのが当たり前ということである。

人事についても思い切ったことをし辛いのは、何らかの問題が発生した場合に、その原因が人事にあるとされかねないことも大きい。

特に平時では、そこまでして前例を破りリスクを背負う理由が人事権者に無い以上、前例を踏襲したくなるのは当たり前であろうということになる。

なお参考までに、これまでに統合幕僚長(統合幕僚会議議長)に昇った陸海空の各幕僚長のうち、それぞれ出身での幕僚長在任期間の最短記録は280日であり、約9ヶ月であった。

第11代統合幕僚会議議長であり、第14代陸上幕僚長であった高品武彦(陸士54期)の記録で、1977年10月20日に陸幕長に昇り、 1978年7月28日に統合幕僚会議議長に着任した。

このことから考えても、2017年12月に航空幕僚長になったばかりの丸茂が、僅か5ヶ月後の2018年5月に統合幕僚長に昇ることは、極めて難しいと言うのが常識的な線だ。

つまり、第31代統合幕僚長に昇る可能性が極めて高いのは山崎ということだ。

おそらく2018年3月現在で、山崎の統幕長着任を予想していない関係者は相当な少数派ではないだろうか。

その上で、このコラムでは敢えて、違う予想としたい。

第31代統幕長はおそらく丸茂であり、なおかつ河野の統幕長任期も、異例中の異例である3度目の延長になるという、相当ムチャな予想もセットにする。

そして2018年12月を目処に、丸茂が第31代統幕長に着任する。

つまり、

・統幕長人事で史上初のローテーション崩れ(3代連続での、陸幕長以外からの着任)

・史上初となった統幕長定年2度目の延長を越える、史上初3度目の定年延長

・史上初となる、統幕長任期4年超え

を予想してしまったということだ。

ちなみに2018年1月のこちらのコラム、

【コラム】次期統合幕僚長人事予想(第31代・2018年1月)

では、河野の定年延長がないことを前提に、山崎を予想していたが、撤回したい。

定年延長の上で丸茂になる。

ならば新たにコラムを立ち上げて書けよと、我ながら言いたいところだが、河野のページでコッソリと触れることで、予想変更としたい。

本記事は当初2017年9月11日に公開していたが、加筆修正が重なったので2018年3月6日に整理し、改めて公開した。

◆河野克俊(海上自衛隊) 主要経歴

昭和
52年3月 海上自衛隊入隊(第21期)

平成
4年8月 おおよど艦長
8年1月 1等海佐
9年8月 第1護衛隊群司令部幕僚
10年12月 海上幕僚監部防衛部防衛課防衛調整官
11年12月 第3護衛隊司令
12年6月 海上幕僚監部防衛部防衛課長
14年8月 海将補
14年12月 第3護衛隊群司令
16年3月 佐世保地方総監部幕僚長
17年7月 海上幕僚監部監理部長
18年3月 海上幕僚監部総務部長
18年8月 海上幕僚監部防衛部長
20年3月 掃海隊群司令
20年11月 護衛艦隊司令官 海将
22年7月 統合幕僚副長
23年8月 自衛艦隊司令官
24年7月 海上幕僚長
26年10月 統合幕僚長

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省 統合幕僚監部公式Webサイト(会談写真)

http://www.mod.go.jp/js/Joint-Staff/js_topics.htm

防衛省海上自衛隊 海上自衛隊幹部候補生学校公式Webサイト(卒業式写真)

http://www.mod.go.jp/msdf/mocs/mocs/news/news/event/sub41/index.html

※幹候校の画像は2012年のものであり、右側は若き日の池太郎・海将

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする