荒巻謙|第36期・陸上自衛隊

荒巻謙は昭和44年生まれ、長崎県出身の陸上自衛官。

防衛大学校第36期の卒業で73幹候、職種は普通科だ。

平成29年3月(2017年3月) 第21普通科連隊長兼ねて秋田駐屯地司令・1等陸佐

前職は第9師団司令部第4部長(青森)であった。

36期組と言えば、2017年9月現在で陸将補を排出する直前の年次だ。

35期組の1番出世が2017年度に陸将補を出し始めていることから、2018年度中にも将官が生まれ始める、まさにこれからの卒業年次の世代ということになる。

その36期卒業の荒巻だが、陸自のキャリアは精鋭で知られる第25普通科連隊(遠軽)からスタートを切っている。

遠軽は北海道の道北というよりも道東に位置する普通科連隊で、冬場にはマイナス25度にもなる極寒の大地で冬季演習を行う強者揃いの連隊として知られる。

地域柄、冬季レンジャーとも呼ばれることがある冬季戦技に極めて優れた強さを見せており、過去何度も競技会で優秀な成績をおさめている普通科連隊だ。

その極寒・精強な部隊で陸上自衛隊の生活を始め、体の芯から鍛え上げられた荒巻。

2017年9月現在で補職されているのは第21普通科連隊長の職だが、この連隊はその構成人数が1100名余と、通常の連隊に比べてもかなり規模の大きい方だ。

通常普通科連隊は、旅団隷下に設置される普通科連隊(軽)で650名程度。

通常の普通科連隊で800~900名。

そして一部規模の大きな荒巻の第21普通科連隊では1100名余りの構成となっていることから、同じ1等陸佐のポストでも、旅団隷下の連隊に比べると倍近い隊員を指揮することになる。

なお、陸自最大規模の連隊は東千歳に所在する第11普通科連隊で、その人数はおよそ1500名。

ここまで来ると、陸将補が指揮する施設団の中でも最大の、第3施設団(1600名)と同規模ということになる。

また第21普通科連隊は、上級組織である第9師団が即応近代化編成を完了する2010年のタイミングでゲリラ・コマンド対処型連隊へ改編を行い、事態への即応性を高め、その装備も近代化編成のものに換装されている。

そして同連隊は、その人数規模もさることながら、雪深い地域柄から冬季戦の技術にも長けている精鋭揃いでもあり、代々の連隊長はエース級の人材が投入されることが多い。

直近では、第35代陸上幕僚長の座を岡部俊哉(第25期)と最後まで争った松村五郎が、2003年から2005年まで、当連隊の連隊長職を務めている。

最後は岡部に敗れたとは言え、それでも一般大学(東大)卒業ながら、東北方面総監まで務めて退役となった、堂々の最高幹部であった。

また現役では、2017年9月現在で西部方面総監を務めており、次期陸上幕僚長最有力候補の一人である湯浅悟郎(28期)も、当連隊の連隊長出身だ。

湯浅については、同期で東部方面総監の住田和明(第28期)、中部方面総監の岸川公彦(第28期)のうちの3名から、次期陸上幕僚長が誕生することが確実視されていることからも、若年より多くの期待を集めた上での、当連隊の連隊長職への上番であったことが窺えるだろう。

その他、陸将補で中部方面総監部幕僚長の蛭川利幸(31期)や、同じく陸将補で中央即応集団副司令官を務める橋爪良友(第34期)など、当連隊で連隊長を預かったものからは、多くの最高幹部を排出しており、荒巻に対する陸自の期待も極めて大きなものであると言えるだろう。

(肩書はいずれも、2017年9月現在のもの)

その荒巻のキャリアを見ると、今後を占う上で一つのポイントになるかもしれないのが、平成21年8月から務めた第4対舟艇対戦車隊長(現:西部方面対舟艇対戦車隊)のポストであろうか。

このポストは、隊長という名前ではあるものの、その任に当たるのは2等陸佐。

当時の年齢はまだ40歳になる年であるはずなので、1選抜でも1等陸佐に届かない頃であるが、若くして一つの部隊を預けられた経験は非常に大きなものであるだろう。

なおかつその所在地は大分県の玖珠町であり、我が国の新しい最前線とも言える西部方面隊隷下で、海上から我が国の領土・領海に侵入を試みる敵性勢力を陸上から排除しようとする部隊だ。

2017年9月現在の組織改編予定を見ると、東北方面隊隷下の第4地対艦ミサイル連隊が2018年度中に第15旅団隷下に編成替えになることが決まっているなど、陸上自衛隊の装備や組織も南西方面の脅威を意識したものとなり、その再編が進んでいる。

その中で、一義的には領土・領海を侵そうとする敵性勢力に対処するのは航空自衛隊であり海上自衛隊となるが、そのユニットコストは非常に高く付き、また飽和攻撃の前には対処しきれない事も予想されることから、陸自の地対艦ミサイル連隊がその役割を補う意味は大きい。

地対艦ミサイル連隊が運用する12式地対艦誘導弾の有効射程距離は100kmを越えるとされているので、これら危機対処の部隊として、極めて大きな役割をはたすことだろう。

一方で西部方面対舟艇対戦車隊の運用する96式多目的誘導弾システムの有効射程距離は10数kmとされているので、さすがに我が国の島嶼部防衛全てで活躍できるほどの長射程はない。

一方で、遠距離射撃兵器には必ず、近距離射撃兵器の支援が不可欠だ。

危機に際しては本土近辺まで敵性勢力の接近があることも予想され、近距離からの誘導弾で確実に舟艇を排除する西部方面対舟艇対戦車隊の存在意義は極めて大きい。

我が国の新しい危機は、2017年現在、西部方面隊が対処している南西方面になりつつあることからも、同方面で2等陸佐の頃に、隊長職を得た経験は非常に大きなものであろう。

これらの経験に加え、第21普通科連隊の連隊長職という重責を任された荒巻だ。

今後どこまで重責を任され、また階級を上げていくのか。

注目して追って行きたい。

◆荒巻謙(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
4年3月 陸上自衛隊入隊(第36期)
4年10月 第25普通科連隊(遠軽)
13年3月 第2師団司令部(旭川)
15年3月 富士学校付(富士)
16年3月 富士学校付普通科部(富士)
17年3月 中央業務支援隊付(市ヶ谷)
18年3月 陸上幕僚監部監理部総務課(市ヶ谷)
21年8月 第4対舟艇対戦車隊長(玖珠)
23年8月 富士学校普通科部(富士)
25年12月 中部方面総監部防衛部防衛課(伊丹)
27年8月 第9師団司令部第4部長(青森)
29年3月 第21普通科連隊長兼ねて秋田駐屯地司令

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【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 秋田駐屯地公式Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/akitasta/about-camp-akita/greeting/greeting.html

防衛省陸上自衛隊 第9師団公式Webサイト(21連隊訓練検閲写真)

http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/kunnrenn/h29dai2ji/h280615dai2ji.htm

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