開雅史(ひらき・まさし)|第40期・陸上自衛隊

開雅史は防衛大学校第40期卒業で、長崎県出身の陸上自衛官。

77幹候で職種は普通科。防衛省の公式ソースはないものの、卒業年次から考えて昭和48年度の生まれであると思われる。

平成28年8月(2016年8月) 第51普通科連隊長・1等陸佐

前職は幹部学校付(統合幕僚学校統合高級課程)であった。

なお、第51普通科連隊長としての指導方針は以下の通り。

【統率方針】

「分隊」

【要望事項】

「積極進取」

統率方針の意味が正直分からないが(※1)、ある意味で、とても陸上自衛隊のエリート幹部らしいキャリアだ。

開が陸上自衛隊に入隊し、最初に配属になったのが北海道の名寄に所在する第3普通科連隊。

第3普通科連隊は我が国最北端に位置する普通科であり、まとまった戦闘集団として、陸海空全ての最北の地にある。

それ故に、冷戦時代からこの普通科連隊は対ソ連戦争の最前線部隊と位置づけられ、ソ連の侵攻が始まった際には捨て石となってでも、道北の地にソ連軍を釘付けにし、時間を稼ぎ、増援部隊の到来まで持ちこたえることが要求された部隊だ。

過酷な任務ゆえに、その曹士の精強さは我が国の普通科連隊の中でも群を抜いており、そのため、この第3普通科連隊を指揮することは、普通科の幹部にとって最高の栄誉とされた部隊の一つである。

実際に過去、第3普通科連隊長を経験した者からは、第10代陸上幕僚長(第7代統合幕僚会議議長)の中村龍平(陸士49期)、第14代陸上幕僚長(第11代統合幕僚会議議長)の高品武彦(陸士54期)、第32代陸上幕僚長の火箱芳文(第18期)など、陸上自衛隊の頂点に立ったものを多数生み出してきた。

陸上幕僚長のイスに座ったものは、2017年10月現在で36名。

我が国に存在する(存在した)普通科連隊の数は50を超えている中で、36名のうち3名までが第3普通科連隊長経験者というのはやはりすごい数字である。

なお陸上幕僚長に就任しないまでも、5つある方面隊の方面総監に昇った最高幹部まで挙げると、第28代連隊長であった番匠幸一郎(第24期)を始め、陸上幕僚長の有力候補であった者は数知れない。

また、2017年10月現在の連隊長は岡本宗典(第37期)だが、その前任であった坂本雄一(第35期)は1選抜で1佐に昇ったスーパーエリートで、既に陸将補に進んでいる。

時代は変わっても、精強な曹士に充実した戦力を誇る部隊であることに変わりはなく、その部隊を任されるのはスーパーエリートの1等陸佐であるということに変わりはない。

そんな連隊に、開は陸自入隊早々で着任し、翌年には第3普通科連隊の小銃小隊長になっているのである。

どれだけ怖い先任がいたのか、そしてその部下である先任とどうやって上手く人間関係を作り指揮命令を下達させ、部隊を機能させたのか。

23歳やそこらの防大を出たばかりの3尉が、30年も自衛隊でメシを食ってきたような先任とどう上下関係を作るのか、とても気になるが、特にこの精鋭ぞろいの第3普連であれば、相当な苦労があったのではないだろうか。

※1

「分隊」という統率方針について、読者の方から解説するご連絡を頂きました。

それによると、この統率方針には以下の意味があるようであり、要旨を転載させて頂きます。

M様、いつもありがとうございます。

【以下要旨の転載】

分隊とは部隊単位の一つですが、連隊のように500人以上いる部隊を動かすためには中隊が重要であり、中隊のためには小隊、小隊のためには分隊がしっかり機能しなければなりません。
分隊の長である陸曹に対して「あなたたちはとても大事な人材なんですよ!」という感謝?と「おまえらがしっかりせないかんぞ!」というハッパをかける思いから「分隊」という統率方針になったのです。
ちなみに分隊は多くて10名前後です。

なお余談だが、開の防衛大学校年次は先述の通り第40期。

この年は防衛大学校が女子1期生を受け入れ始めた記念すべき年であり、1選抜で昇進を果たし、既に1等陸佐に昇っている女性幹部が存在する。

画像の弥頭陽子(やとう・ようこ)などだが、イラク派遣経験もある通信科の高級幹部であり、あるいは4~5年後に、史上初の陸将補となるかもしれない女性の高級幹部だ。

ぜひ彼女の名前を覚えておいて欲しい。

開にとっては出世競争のライバルということになるが、こんなにきれいな女性と出世競争を争うことになるとは、夢にも思わなかったのではないだろうか。

(画像は陸幕人事計画課勤務時代で、2等陸佐当時のもの)

さて、その開が2017年10月現在で補職されているのが第51普通科連隊。

沖縄の那覇に所在する即応近代化(離島型)の普通科連隊(軽)だが、極めて特徴的で、そして重要な任務を背負っている部隊だ。

ちなみに普通科連隊のナンバリングは51普連で終わりではなく、もう1つあって、第52普通科連隊が北海道の真駒内に所在する。

2017年現在だが、途中に欠番となった連隊も存在するものの、52連隊が最後のナンバリングになっている。

この51普連は軽編成で、約700名の比較的小さな所帯であるものの、非常に特殊な戦力構成を持っており、陸士に至るまでその構成員全員が、空中機動訓練(リペリング降下など)を行い、極めて迅速な機動力で作戦予定地に展開する能力を身に着けている。

それはなぜか。

51普連の主たる戦闘の形は正面戦争ではなく、離島に上陸した敵性勢力や、あるいは離島の守備隊を背後から脅かす少数の敵性勢力、すなわちゲリコマ(ゲリラ・コマンド)の撃滅だからだ。

我が国の南西方面における島嶼防衛は極めて重要で喫緊の問題であり、安全保障環境を考えると、もっとも紛争が起きる可能性が高い地域といえる。

そのため、石垣島と宮古島に陸上自衛隊の新しい駐屯地を整備し、同地に地対艦ミサイル連隊と高射特科隊を置くことは、もはや一刻の遅れも許されない防衛上の課題である。

これら駐屯地に地対艦ミサイル連隊と高射特科隊が配属されればなぜ我が国の安全保障環境は飛躍的に向上するのか。

それはこちらのコラムでご説明している通りだが、この防衛体制が整うと、中国人民解放軍はますます正面から、尖閣を始めとした島嶼部を奪取することが困難になる。

その場合中国は、ひとたび島嶼部を本気で奪う作戦を発動した際には、離島守備隊を撹乱させるための武装集団を我が国に潜伏させた上で一斉に蜂起させ、あるいは沖合から小さなグループで上陸して、守備隊を近接戦闘で無力化しようとするであろう。

この際に、1分でも1秒でも早くこれら敵性勢力の展開地域に駆けつけ、迅速に制圧することが第51普通科連隊に課せられたもっとも大きな責任となる。

そのためその装備は軽武装で機動力に優れたものになっているが、これはこのような企図で上陸する敵性勢力も重武装の上で上陸を図ることが困難であることにもよる。

迅速に確実に敵の制圧を図る必要があるため、陸士に至るまで空中機動可能な訓練を行っているということになるが、実はその責任者である開は、平成18年から5年間に渡り、習志野の中央即応集団で指揮を執ったキャリアを持つ。

普通科の最精鋭である第3普連で鍛え上げ、空中機動を始めとした事態即応能力では我が国最高の戦力を持つ中央即応集団での指揮経験も持つというわけだが、このような見事なキャリアを持つ開が第51普通科連隊を任され、連隊長職にあるのはある意味で必然であるといえるだろう。

むしろ、この日を想定してキャリアが積み上げられたのではないかと思うほどに、極めて適任の連隊長職である。

2017年現在の安全保障環境と人事の状況を見ると、かつては北部方面隊隷下部隊出身者が最高幹部に昇るルートの定番であったが、それが西部方面隊に変わりつつあるように見受けられる。

新たな国防の最前線として、この地域に陸海空の戦力シフトが進んでいるためだが、あるいは開も、この地域で最前線を経験したことにより、40期組の将官レースに力強い名乗りを挙げることになるのではないだろうか。

将官クラスになるには、最短でも4年後の2021年夏頃になるので気が早いのだが、その異動先と任務からは目が離せない高級幹部の一人となるだろう。

◆開雅史(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
8年3月 陸上自衛隊入隊(第40期)
8年10月 第3普通科連隊中隊付(名寄)
9年3月 第3普通科連隊小銃小隊長(名寄)
11年3月 情報小隊長
12年3月 情報幹部
14年8月 運用訓練幹部
15年3月 幹部候補生学校区隊長(前川原)
16年8月 幹部学校付指揮幕僚課程(目黒)
18年8月 中央即応集団(習志野)
23年4月 統合幕僚幹部運用部運用第1課(市ヶ谷)
26年3月 西部方面総監部防衛課運用班長(健軍)
27年8月 幹部学校付(海上自衛隊幹部学校幹部高級課程・目黒)
28年3月 幹部学校付(統合幕僚学校統合高級課程・目黒)
28年8月 第51普通科連隊長

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省陸上自衛隊 第51普通科連隊公式Webサイト(顔写真及び着任式)

http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/15b/15b/images/51rentai/butai/rentaichou.html

防衛省 防衛白書公式Webサイト(弥頭2佐=当時=写真)

http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2012/2012/html/nc3340.html

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