三谷直人(みたに・なおと)|第29期・航空自衛隊

三谷直人は昭和36年4月生まれ、石川県出身の航空自衛官。

防衛大学校第29期の卒業で幹候75期、出身職種は航空機整備だ。

平成29年8月(2017年8月) 第25代航空自衛隊補給本部長・空将。

前職は平成28年7月(2016年7月) 第40代中部航空方面隊司令官・空将であった。

中部方面航空隊司令官に着任と同時に、空将に昇進している。

三谷は、航空自衛隊第29期組のトップを走って「きた」スーパーエリートだ。

もちろん今でも、空将であって航空自衛隊の兵站を支える中枢的組織、補給本部長を務めており、航空自衛隊を代表する最高幹部の一人であるのは間違いない。

ではなぜ、敢えて過去形なのか。

その前に、少し三谷の経歴を見てみたい。

航空自衛隊入隊は昭和60年3月であり、1等空佐昇進は平成16年1月。

そして空将補昇進が平成22年7月で、空将昇進が平成28年7月になっている。

いずれも29期組最速での出世であり、普通に考えれば次の次の航空幕僚長候補筆頭と言われてもおかしくない逸足であろう。

また三谷とともに、29期組の頂点を狙う、2017年10月現在で空将の階級にあるライバルたちの動向も含めてご説明すると、以下の通りになっている。

城殿保(第29期)・北部航空方面隊司令官・・・2016年7月就任

長島純(第29期)・航空自衛隊幹部学校長・・・2016年12月就任

増子豊(第29期)・統合幕僚監部運用部長・・・2016年12月就任

三谷直人(第29期)・航空自衛隊補給本部長・・・2017年8月就任

(肩書はいずれも、2017年10月現在)

この4名の昇進時期を見てみると、1等空佐は全員1選抜(1番乗り)であり、平成16年1月。

空将補に昇ったのは城殿、三谷、長島が平成22年7月。

増子が24年3月。

空将に昇ったのが城殿と三谷が最も早く28年7月。

長島と増子が28年12月で続く。

さらに、三谷と城殿はそれぞれ同時に空将に昇っただけでなく、その際に座ったポストも三谷が中部航空方面隊司令官で、城殿が北部航空方面隊司令官だ。

頂点のイスを狙うにふさわしい、良きライバルとして切磋琢磨する同期同士であったと言えるだろう。

三谷も城殿も、どちらも昭和36年(度)生まれであり、航空幕僚長に昇る上で年齢が気になるということもない。

ではなぜ、この二人の競争から三谷がコースアウトしたかのように見えるのか。

それはジンクスに過ぎないと言えばそういうことになるのだが、航空自衛隊補給本部長のポストはいわゆる退職ポストであり、過去にこのポストに座った空将は30人以上を数えるものの、1人の例外もなく、後職に就くこと無く退役している。

前身である資材統制隊時代の1959年からであり、既に半世紀以上になる。

本部長に空将、副本部長に空将補が座るほどの重要な組織でありながら、不思議な事だが航空幕僚長へのルートになったことがないばかりか、そのまま退職となるポストとなっているのは不思議な事だ。

これは陸海空に共通して言えることだが、補給系で大元の責任者になるということは、単に「兵站はとても大事」という考え方にとどまらない、極めて大きな責任を背負うことになる。

なぜか。

補給を抑えるということは、我が国の防衛政策そのものを掌握することに等しいほどの情報を握ることになるからだ。

会社を経営しているものであればわかることだが、ある会社のB/S(バランスシート:貸借対照表)をみれば、その社長がどういう性格の人間なのか、ある程度の事がわかる。

P/L(プロフィット・アンド・ロスステートメント:損益計算書)を見れば、その会社が何をしようとしているのか、ある程度わかる。

つまり補給系の責任者は、単に公開されている防衛費の使いみちや予定ということだけでなく、我が国がどのような資材をどのような単価で調達し、そしてそれを何に使いどのように国防体制を構築しようとしているのか。

さらに、防衛白書などで一般に公開されているような「わかりやすい」お金の使いみちだけでなく、その裏に隠されている我が国の意図までも、全て掌握することが可能になるポストということであるということだ。

お金の使い方は国家の意志そのものだ。

だからこそ、補給本部長のポストは極めて重い。

にも関わらず、なぜか航空幕僚長へのルートがないポストとされているのは不思議な事だが、城殿とともに最速で出世を果たしてきた三谷が、中部航空方面隊司令官のポストを1年で切り上げ、補給本部長に異動になったのは正直意外であった。

ただこれは、見方によっては空幕長レースからの脱落と見ることもできるが、実はそうでもない事情があるのかもしれない。

ご存知のように、海上自衛隊では第33代の海上幕僚長に、大方の予想を裏切ったサプライズ人事となる形で、村川豊(第25期)が着任した。

村川は経理の出身であり、海上自衛隊史上初となる、後方支援系からの着任である。

後方支援系からの幕僚長着任はいつかあってしかるべき人事であったとは言え、我が国の国防の意思を強く示す必要がある時期に、という意味でもやはり、諸外国から穏健的と取られる可能性がある村川の着任はやはり意外であった。

そしてこの人事を断行したのは安倍政権だ。

この記事をポストしているのは2017年10月の衆議院議員選挙直前だが、恐らく安倍政権は、引き続き盤石の基盤の上に政権を維持することが予想されている。

つまり安倍政権下では、慣例によらない、というよりも、軍事組織に必要な新陳代謝を敢えてしっかりと根付かせるために、海上自衛隊と同様に、人事の慣例を敢えて壊すトップ人事を仕掛ける可能性がある。

その1つが、海上自衛隊の幕僚長人事であった。

そしてその2つめは、おそらく統合幕僚長人事だ。

統合幕僚長人事では、統合幕僚会議議長の時代から半世紀以上、3代連続で陸上幕僚長出身者が着任しなかったことはない。

しかし今の客観情勢では、第30代統合幕僚長である河野克俊(第21期)の後任は、恐らく航空幕僚長である杉山良行(第24期)となるだろう。

つまり統合幕僚長は、

第29代岩崎茂(第19期)・・・航空幕僚長出身

30代河野克俊(第21期)・・・海上幕僚著出身

第31代杉山良行(第24期)・・・航空幕僚長出身

ということになり、史上初めて陸上幕僚長経験者が、3代連続で統幕長に着任しない慣例破りの人事となる公算が高い。

これもまた、軍事組織から慣例という名の硬直性を排除しようとする政治の意志となるだろう。

そしてその3つめ。

今のところは何が来るのか見通せないが、少なくとも、航空自衛隊補給本部長がそのポストを最後に退役するという慣例が、今の政治状況ではいかにあてにならない慣例であるのか。

そんな気がしてこないだろうか。

つまり三谷は、「トップエリートだった」わけではなく、今も城殿とともに、29期組の航空幕僚長を争うトップエリートで有り続けている可能性を疑うべきだ。

自衛隊の人事はいつも、こうやって客観的な予想を裏切り続けて来てくれたからこそ、ハラハラして面白い。

(当事者には堪ったものではないだろうが・・・)

本記事は当初2017年7月2日に公開していたが、加筆修正が重なったので2017年10月14日に整理し、改めて公開した。

なお、ここから下の部分は2017年7月に公開した当時のものをそのまま残している。

三谷をめぐるキャリアの中で印象深いのは、何と言っても東日本震災における指揮であろうか。

多くの国民が無力感に沈みただ事態の悪化を見守ることしかできなかった中、危険を顧みず、福島県の福島第一原発に赴き決死の消火活動を行い放水を敢行した部隊の中に、航空自衛隊新田原基地の消防小隊がいた。

その際に新田原基地司令を務めていたのが三谷であり、田之頭茂穂空曹長(当時)以下の志願隊員をまとめ、被災地に送り出す厳しい任務を担当し指揮を執った。

あの状況で福島第一原発に部下を派遣するというのは、基地司令としてこれほどタフな命令もないであろう。

赴任する側、送り出す側、どちらもあの状況の中で、事態収集のためにギリギリの仕事をしていたことは間違いない。

◆三谷直人(航空自衛隊) 主要経歴

昭和
60年3月 防衛大学校卒業(第29期)

平成
8年1月 3等空佐
11年7月 2等空佐
11年8月 航空幕僚監部補任課(東京都)
14年2月 航空幕僚監部防衛課(東京都)
15年8月 幹部学校付
16年1月 1等空佐
16年8月 航空幕僚監部援護計画班長(東京都)
18年3月 航空幕僚監部業計班長(東京都)
19年3月 航空幕僚監部防衛部(東京都)
20年4月 航空幕僚監部装備調整官(東京都)
20年8月 第4航空団整備補給群司令(宮城県)
21年8月 航空幕僚監部人事教育部人事計画課長(東京都)
22年7月 第5航空団司令兼新田原基地司令(宮崎県) 空将補
23年8月 第1補給処長兼木更津基地司令(千葉県)
24年7月 防衛監察本部監察官(東京都)
26年8月 航空幕僚監部防衛部長(東京都)
28年7月 中部航空方面隊司令官(埼玉県) 空将
29年8月 航空自衛隊補給本部長(東京都)

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省中部方面航空隊Webサイト(顔写真)

http://www.mod.go.jp/asdf/cadf/shireikan_aisatu/index1.html

http://www.mod.go.jp/asdf/cadf/katsudou_jyoukyou/index3.html

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