前田忠男(まえだ・ただお)|第31期・北部方面総監

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その前田が陸上自衛隊に入隊したのは昭和62年3月。

1等陸佐に昇ったのが平成18年1月、陸将補に昇ったのが24年7月、陸将に昇ったのが30年8月だったので、その全てで30期組1選抜(1番乗り)のスピード出世を果たした。

陸上自衛隊では、1選抜で将官に昇ることは、同期の陸上幕僚長候補に選ばれたことを直接意味する。

そのため前田も、極めて近い将来の陸幕長候補の一人であると言ってよいだろう。


(画像提供:陸上自衛隊第7師団公式Webサイト

原隊(初任地)は、冷戦時代の最前線であり北海道西部の護りの要である第26普通科連隊(留萌駐屯地)。

なお陸自では、将来有望で優秀な候補生ほど、留萌、名寄、遠軽などといった北方、さらに北方の中でも誰もが音を上げるような非常に厳しい原隊を与えられる幹部が多い。

そういった意味でも前田は、3尉候補生の頃から注目を集めていた存在だったのではないだろうか。

そして原隊で1年半、小隊長を務めた後には第1空挺団に異動になり、我が国最強の戦闘集団でも5年間、小隊長として激務を経験する。

以降は真駒内の第18普通科連隊で中隊長を。

さらに米陸軍戦略大学への留学を経て、国分駐屯地に所在する第12普通科連隊で連隊長に上番。

そして平成24年7月、陸自史上一番のイケメンである山之上哲郎(第27期)の後を継ぐ形で、第1空挺団長兼ねて習志野駐屯地司令に着任した。

 

なおその間、中央(統幕、陸幕)では、陸幕で教育訓練部、監理部などを経て装備部装備計画課長、防衛部長などのエリートポストを歴任。

統幕では運用1課の防衛警備班長を経験するなど、非常に幅広いポストで活躍した。

そして平成30年8月、堂々の陸将昇任を1選抜で果たし第7師団長の重責を担うと、後職として北部方面総監に着任。

まさに、31期のみならず、陸自を代表する最高幹部の一人であると言って良いだろう。

 

なお余談だが・・・

ご存知のように、前田の前職である第7師団は公式の別称で「第7機甲師団」と呼ばれるほどに、機動力と打撃力に優れた、我が国を代表する精鋭集団である。

その第7師団長に、普通科出身で空挺の申し子のような前田が着任したわけだが、前田を良く知る第1空挺団のお膝元、地元の自衛隊協力会では、第7師団長着任が発表された際、

「え・・・?前田さんって戦車乗れるの?」

という声が多く聞かれた(特に鈴木さんが言っていたなんて、口が裂けても言えない・・・)。

もちろん師団長なので、戦車に乗る技量は関係ない。

さらに前田は元々が千葉の出身であり、県立安房高校を卒業し防衛大学校に入学した、生粋の千葉っ子である。

そんなこともあり、第1空挺団長に着任して以降、地元の協力会などでも特に愛された幹部であったが、そんな愛を込めた言葉だったのだろう。

とはいえ今は、前田はこれで4回目の、北海道勤務である。

すなわち、第26普通科連隊(留萌)の小隊長、第18普通科連隊(真駒内)の中隊長、そして7師団長に北部方面総監である。

原隊が留萌であることを含めて、第1空挺団への愛と北海道への愛は、いまや全く同じなのではないだろうか。

そんな男が今、近い将来の陸幕長候補としてますます気合の入った任務を続けている。

ぜひ、そんな前田に一人でも多くの人に、注目してほしいと願っている。

 

では最後に、その前田と同期である31期組の人事の動向について確認しておきたい。

31期組は、今まさに陸上幕僚長候補が出揃い、我が国と世界の平和を担う中心となっている世代だ。

そしてその陸将に在るのは、2020年7月現在で以下の幹部たちとなっている。

 

前田忠男(第31期)・北部方面総監(2018年8月)

竹本竜司(第31期)・陸上幕僚副長(2018年8月)

原田智総(第31期)・陸上総隊司令部幕僚長(2019年4月)

沖邑佳彦(第31期)・第4師団長(2018年8月)

蛭川利幸(第31期)・第6師団長(2019年4月)

※肩書はいずれも2020年7月現在。( )は陸将昇任時期。

 

上記のようになっており、正直31期組については組織改編の過渡期であることもあり、やや1選抜陸将の人事が変則的になっている。

そのため誰が陸上幕僚長候補として残っているのか読みづらいところがあるのだが、

前田忠男(第31期)・北部方面総監

竹本竜司(第31期)・陸上幕僚副長

この2名が、31期組の最有力候補と見て間違いないのではないだろうか。

おそらく、まもなく発令されるであろう2020年夏の将官人事で、竹本は西部方面総監に昇るものと予想している。

ちなみに私は、このお二人がおふたりとも、大好きな自衛官の一人なのである・・・

そのため、31期組についてはとてもとても、陸幕長人事予想などできない・・・(泣)

なんなら、ふたりとも陸上幕僚長に昇ったらいいのにと言う、わけのわからないことまで妄想しているのである。

 

いずれにせよ、31期組の幹部はこれら将官だけでなく、ここ数年で多くの幹部が定年退官を迎える世代であり、長年に渡り日本と世界の平和と安全に貢献してきてくれた皆様だ。

ぜひ、一人でも多くの読者の皆さんには、この世代に最後の声援を送ってほしいと、願っている。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:陸上自衛隊第7師団公式Webサイト

◆前田忠男(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
62年3月 陸上自衛隊入隊
63年3月 第26普通科連隊小隊長(留萌)

平成
元年8月 第1空挺団普通科群小隊長(習志野)
6年8月 幹部学校指揮幕僚課程(目黒)
8年8月 富士学校普通科部(富士)
10年1月 3等陸佐
10年3月 第18普通科連隊中隊長(真駒内)
12年3月 檜町駐屯地業務付隊・政策研究大学院大学修士課程(檜町)
13年3月 陸上幕僚監部教育訓練部教育訓練課(市ヶ谷)
13年7月 2等陸佐
16年3月 陸上幕僚監部監理部総務課(市ヶ谷)
18年1月 1等陸佐
18年3月 中央資料隊付(米陸軍戦略大学)
19年3月 中央情報隊本部付(朝霞)
19年8月 統合幕僚本部運用1課(市ヶ谷)
19年9月 統合幕僚監部運用1課防衛警備班長(市ヶ谷)
21年3月 第12普通科連隊長兼ねて国分駐屯地司令(国分)
22年7月 陸上幕僚監部装備部装備計画課長(市ヶ谷)
24年7月 第1空挺団長兼ねて習志野駐屯地司令(習志野) 陸将補
25年12月 陸上自衛隊幹部候補生学校長兼ねて前川原駐屯地司令(前川原)
27年3月 陸上自衛隊研究本部総合研究部長(朝霞)
28年7月 陸上幕僚監部防衛部長(市ヶ谷)
30年8月 第7師団長(東千歳) 陸将

令和
2年4月 北部方面総監(札幌)

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38件のコメント

この間までの日米共同訓練・ヤマサクラでも随分活躍されたらしいですね。8月に師団長になって災害派遣、ヤマサクラとお忙しいそうですね。防衛計画の大綱も作ったんでしょ。海空自衛隊が目立ちますが、やっぱり陸上自衛隊が基本ですよね。この国は、勘違いしてますね。機甲師団頑張れ。

機甲命様コメントありがとうございました。
前田さん、北海道に行ってから活き活きされてるようですね!
海空が勘違いしているかはともかく、確かに陸自の重要性が、海空に比べて正当に評価されていないという思いは同感です。
陸自の活躍と働きは、もっと評価されるべき!

忘れたころに地震が寄って。北海道の皆さん大変です。今回は被害もほとんどなくほっとしました。今回も迅速な対応でしたね。師団長以下指揮官も隊員の皆さんも流石ですね。
話は代わって、前田さん、千歳と恵庭のクロスカントリースキー大会に出てました。15km完走してました。開会式でも紹介されましたが、師団長で出たのは初めてじゃあないですか?
最強師団の今後が益々楽しみです。5月の創立記念日も楽しみです。頑張れ、7師団、応援してます。

お忙しいポストに在るのに、体力づくりすごいですね~
次は富士学校長にご栄転か?

前田さんは走るのが好きなんですよ、空挺団長の時も演習場を良く走っていました、幹部学校長を下番した時に逢った時に 前田さん久留米はどうでした と聞いたら 校長と言う職は個人の時間が取れるので、走ってばっかりいました と返してきました、職種は普通科の為体力勝負な所も有る方です、何たって空挺団長時代に式典の際に自らFFで先頭で降下して来ました人ですから、精鋭7師団での御活躍期待しています。

すーさん!
そうだったのですね。
いずれ陸上総隊の最高幹部として、上級組織に帰ってくるときもあるかも知れないですね!

いよいよ来週は7師団の創立記念日ですね。今年は十数年ぶりに空挺降下もやるそうですね。本当に楽しみです。
ところで、師団長は書道もやるらしく師団長室には自筆の「機甲師団」の掛軸があると聞きました。見てみたいですね。
創立記念日晴れたらいいですね。

おぉ、本当ですか?!
恐らく、前田さんが空挺団長出身だと言うこともあるのでしょうね。
ちなみに私は、19日の練馬(第1師団)創立記念行事に出席します!
ヽ(=´▽`=)ノ

創立記念日すご~。ヘリによる入場、戦闘服に双眼鏡姿、勝どきと野戦軍指揮官にこだわったことがよくわかりました。
また、戦車等の展示特に大砲の展示はびっくりしました。
機甲百年だそうですね。
それから、会食最後の万歳三唱は「いやさか」三唱でした。初めて見ました。
この人、軍神それとも発想豊かのどっちだろう。
とにかく、見たことのない創立記念日でした。
これから、応援します。頑張れ。

1D長の竹本さんとライバルの前田さんらしい演出だったようですね!
方面総監レースが楽しみです!

Ytamon様
質問があります。
式典で、師団長は「トキノコエ、カチドキ」を上げて、最先任上級曹長?が「イヤサカ三唱」?したと聞きましたが本当ですか?

陸上自衛隊の幹部雑誌、修親の新年号に前田さんが投稿してます。リーダー論の記事を読みました。結構面白いです。人は見かけによらずいろいろ考えてるんですね。ただの酒飲みのおっちゃんかと思ってましたが。校長もやってるし、後輩育成に思いがあるんですかね。
ytamonさん、今年も楽しませてもらいました。よいお年を。来年もよろしくお願いします・

おぉ、マジですか?!
またこっそり、陸自OBの人に読ませてもらおうっと。。
素敵な情報をありがとうございました!
こちらこそ、駄文にお付き合い頂きましてありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いします!
^^

今偶然見ましたが、前田陸将と陸上幕僚副長の竹本陸将って生年月日が一緒で防大も31期でしかもともに1選抜、ある意味生まれ場所が違うだけの双子って感じに思えました。たぶん、8月あたりでどちらかが方面総監辺りに就くんじゃないかと。

Σ(゚◇゚;)マジデッ!?

すごいですね!
31期の1選抜組は皆、次の異動で方面総監かも知れないですね。
夏辺りに動きがありそうです。

やっと出ましたね、総監とは多少意外でしたが、、でも昨今は師団長→総監のコースも以外と有るんですね、空挺出身での総監は3人目です、前田陸将に頑張ってほしいものです。

あれ?
お名前が違いますがすーさんですか?
ついに出ましたね!
31期ではこれで、トップランナーとなりました。
陸幕副長の竹本さんと2トップということになるのでしょうか。
竹本さんは、西方でしょうかね~。

すんまへん、酔って打ったら変換を間違えて、、本当に前例が当てはまらくなりましたね、不思議に思うのは 総隊司令 の任期がやけに短くないですか?、ご意見を聞きたいものです、今後の御活躍を期待しています。

やっぱりすーさんでしたか(笑)
陸上総隊司令官ですが、どうにも2代目、3代目と病気説がありますね・・・
グーグルで「陸上総隊司令官」と打つと、サジェストに、「陸上総隊司令官 病気」って出ます。
要するに、ネット上で陸上総隊司令官と病気を絡める発信が多いということです。
2代目さんは顔色が少し冴えませんでしたし、3代目さんの任期も短すぎましたし、あるいはそんな事情もありそうです。

ホームページの総監プロフィールでは政策研究大学院大学研修が削除されていますが、何を勉強したんですかね?防衛大学校では機械工学の専攻でしたよね。機械学会賞をもらっているとか。大学院は政策だから政治の勉強ですね多分。講話では経済の話をしてくれましたが。市ヶ谷の勤務も多彩でしたよね。偉くなる人は普通は人事か防衛ですけどね。活躍を期待します。

前田総監は、確かに中央でのキャリアが多彩ですね。
中央では最後に防衛部長をされているので、この辺りで陸幕長最有力候補が決定したのでしょうね。
竹本竜司・陸上幕僚副長が対抗と言ったところでしょうか。
31期組、いよいよ大詰めですね。

鈴木さんが「前田さん戦車云々」は、空挺団の陸曹達が言ったセリフです、悪しからず(笑)
前田さんの事再度り上げていただいて有難う御座います。
前田陸将は本当にフランクな方です。
空挺団長時代の自己紹介の前振りは
「私は千葉の田舎の車修理工場の次男坊です。高校時代に親父の手伝いで習志野の陸運局に行った折に、陸運局の近隣に有る演習場での空挺団の降下訓練を見て、防大に入り空挺兵への道を歩んだ」
と言っていました。
真剣な顔で
「団長を遣ると達成感であとは呆ける方がいますが 私は成らない様にします」
と言っていました。
千葉県初、空挺団長三代目、陸幕長を祈念しておしまいに致します。
頑張って下さい応援しています。

すーさん!!
酔っ払って書いて頂いたせいか、いつもよりも誤字脱字が多め(というか、お名前がバグってました(笑))でしたので、私の方で少し直しておきました(笑)
習志野の夏祭りも中止で、今年は寂しい1年になりそうですね・・・。
コロナが収まったら、すーさんと飲むためだけに、習志野に行きますね!
また一杯やりましょう!

酔っぱらっていました(笑)、コロナの影響で行事も無く家飲みの日々です、落ち着いたら是非御来訪下さい、今夏の人事を楽しみにしています。

久々の更新でしたね。ありがとうございます。毎回、楽しく拝見してます。
新型コロナの真っ只中の交代劇でどうなっているのか気になっていたところでした。北海道の雑誌、財界さっぽろ7月号に掲載されたことは耳にしていましたが目にはしていません。
これまで、酔っ払いのおっさんと思ってましたが、防衛大学の時は日本機械学会賞っていうのをもらっているそうですね。見た目よりアカデミックな将軍なんですね。これからは酔っ払いという呼び方は辞めます(笑)。
防大31期だから、今の人事の流れだと総監か総隊司令官で終わりになるんですかね。胆振東部地震はじめ名指揮は定評があり、益々頑張ってもらいたいです。

財界さっぽろ7月号にさっそく掲載されてましたね。
さすがに、存在感のある前田陸将といったところでしょうか。
見た目は本当に猛将タイプですよね笑
しかし、それだけでは北方の指揮官にはなれないということなのでしょう。

さらなるご活躍、楽しみです!

遅れ馳せながら司令官への就任おめでとうございます。
ようやく胸に空挺やレンジャーのついた司令官になりましたね。世界の軍隊は当然ですが、自衛隊には少ないのでこれで世界標準の気がします。
それにしても前田陸将の要望事項には毎回感心します。師団長が「一騎当千」、総監が「必成」、司令官は「劯心」で、今回は圧巻です。「劯」は「つよい」で強い総隊を、また陸上自衛隊を表わす字で、しかも、読み的には「初心」と重ねて総隊の設立の趣旨を守るとのことです。「必成」もさすがと思いましたが。部下部隊には自筆の色紙が配られているそうです。見てみたいです。
運用畑の経歴が象徴するように仕事の仕方も「抑止する努力は最大限するが今戦争が起こったら勝つ方策を準備する」という「運用」に徹しているそうです。
益々の活躍を期待しています。頑張ってください。

総隊ファンさまコメントありがとうございました。
空挺出身で、総隊司令官らしい指揮官が着任されたという感じですね。
かつて、一部の政治勢力から根拠のない攻撃を受けたことがありましたが、裏をかえせばそれだけ脅威であったと言うことかも知れません。
今後の活躍に期待しましょう!

仰るとおりですね。
空挺団の中の人にもお聞きしましたが、絶対にありえないと皆さん、口を揃えておっしゃいます。
思想的に誰かを批判するつもりはありませんが、このようなデマを流すから信用を失うのだと、自称リベラルのこの人は、よくよく考えるべきだと思います。
まあ最近、全くテレビで見ることがなくなりましたので、さもありなんという感じですね。

総隊司令官初の降下、隊員の士気は上がったでしょうね。水上降下って見てみたかったです。
それにしても、3つ星も降下するんですね。空挺団長までかと思いました。

司令官が最先任の退官を記念して降下したそうですね。男気ですね。もう還暦近いですよね。流石です。
世の中、戦時に近付いてるとすると、役人みたいな指揮官より戦争に強い指揮官が必要ですよね。頑張ってください。

陸上総隊司令部のtwitterで昨日も降下したというのですが?
7月と8月に降下したんですかね。某国に対抗しているんですかね。戦う将軍ですか・・・。

暑中お見舞い申し上げます。
本日、前田さんの退官パーティーです。船橋で空挺団や協力会の主催だそうです。私は都合で参加できません。盛り上がるんでしょうね。行きたかったなあ。
ヘリで亡くなられた同僚の冥福をお祈る額を贈ったそうです。
名将軍が自衛隊を去り、寂しいですね。

私は参加します!
前田さんに心からのねぎらいのお言葉を申し上げてまいります!

前田さんが富士学校の企業展示で、2日間、企業展示会場の低頭で案内をしてました。
元司令官が某企業の一社員になって頑張っている姿は嬉しくもあり、別の意味で寂しくもあり。それでも、前田さんと分かった隊員が敬礼してる姿は名将のゆえんかと一安心しました。
名将とは何事にも徹する人なんですね。

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