丸澤伸二(まるざわ・しんじ)は昭和38年2月生まれ、兵庫県出身の海上自衛官。
大阪外国語大学を卒業し、昭和60年3月に海上自衛隊に入隊しているので、第29期相当となる幹候36期である。
水上艦艇の指揮官出身だが、情報系士官としての活躍も目立つ海将補だ。
平成28年12月(2016年12月) 海上幕僚監部指揮通信情報部長・海将補
前職は情報本部情報官であった。
(画像提供:防衛省統合幕僚監部公式フェイスブック)
(画像提供:防衛省防衛白書2012公式Webサイト)
2019年2月現在、海上幕僚監部で指揮通信情報部長を務める丸澤だ。
防衛大学校卒業生が有利と言われる自衛隊制服組の昇任において、一般大学の卒業生でありながら中央(海上幕僚監部)の部長ポスト、そして海将補にまで昇りつめた最高幹部である。
なおいきなりの余談で恐縮だが、一般大学卒業生は本当に自衛官として出世することは厳しいのか。
そんな分析をかつて記事にしたことがある。
その時の分析結果では、実は3自衛隊の中で海上自衛隊がもっとも、非防衛大学校組で将官に昇るものが多いという調査結果が出た。
その時のデータの一部は以下のようなものだ。
【陸海空別】防大・非防大出身者比較
将官総数 | 防大卒業生 | 非防大卒業生 | 非防大生率 | |
陸 | 122 | 111 | 11 | 9.0% |
海 | 65 | 53 | 12 | 18.5% |
空 | 65 | 60 | 5 | 7.7% |
将官総数 | 252 | 224 | 28 | 11.1% |
※(データは2018年6月現在で将官にあるものを集計)
何となく、陸海と言えば伝統墨守で防衛大学校卒業生を重視しそうなイメージを持ち、航空自衛隊と言えば「勇猛果敢・支離滅裂」と言われるように型にこだわらないイメージがあったが、意外にも海上自衛隊がもっとも、”外部の血”を取り入れているという結果になった。
もっともこれは、この年だけの調査なので今後も引き続き調査をしていけば、また違う結果になるのかも知れない。
この際の詳しいお話は、よければこちらを参照して欲しい。
【自衛官の出世と給料】一般大学卒業生は自衛隊で出世できない、は本当か
それでもなお、ただでさえ狭き門である将官への昇任であり、さらにその中でも狭き門である、一般大学から将官に昇った丸澤である。
そのキャリアはとても印象深いものばかりではあるが、敢えて一つ挙げるとすれば、それはシンガポール防衛駐在官のポストだろうか。
シンガポールは人口わずか560万人の小国であり、職業軍人は2万人程度で、外形的な軍事規模は小さいと思われがちだ。
しかし同国では徴兵制を敷いており、実は常備兵力は8万人程度の規模とも評価される。
さらに国民は、退役後に予備役としての義務も負っていることから、有事の際に動員可能な兵力は実に20万人を越えている。
人口560万人の小国が、動員可能な兵力では我が国と同程度の規模を保有しているというのだから驚くばかりだ。
これは、少子高齢化の中で人材確保に苦しむ我が国の国防事情にとって、極めて興味深い運用と言えそうだ。
正直、20万人規模の軍事組織を動かすのに、職業軍人2万人程度では補給も衛生も輸送も足りず、指揮官や指揮命令系統、その他あらゆる後方支援系の機能が有効に稼働するとは思えない。
おそらく非常時には、このような機能を民間から調達することでなんとか運用を確保することを想定しているのだと思われるが、これもまた小さな国の軍事組織のあり方だ。
そういった意味でも、常備兵力はミニマムにしながら、有事の際には国力を最大限動員することを可能ならしめているという意味において、シンガポールは非常に参考になる国である。
またシンガポールは、伝統的にASEAN諸国や旧宗主国のイギリス、それにオーストラリアと軍事的結び付きが強く、基本的に西側勢力ではあるものの、華僑も多いことから中国と一定の友好関係を維持しており、その外交バランスは非常に教唆に富む。
シンガポールの、世界の情報センターとしての価値も極めて高く、このような国に防衛駐在官として赴くことは極めて重い責任を伴うことは言うまでもないだろう。
また丸澤個人にとっても、今日に続く情報系最高幹部としてのキャリアに非常に大きな経験となったのではないだろうか。
なお余談だが、防衛駐在官に赴任中は外務省に出向するためであると思われるが、陸・空自衛隊では赴任中に昇任が予想される場合、1選抜の時期より早くても1階級昇任させた上で、外務省に出向させている。
にも関わらず、なぜか海上自衛隊だけは、丸澤の例に限らず、防衛駐在官在任中であっても普通に昇任人事が行われている。
なぜ陸空と海で扱いに差があるのか、さすがにそこまで昇任に関わる規則を承知していないので詳細は分からないが、結果として陸空と海では、防衛駐在官の扱いに差があるようだ。
ちなみに赴任前に1佐に階級だけ上がっても、公務員としての級号はそのままであり、実はなんちゃって1佐であることも多い。
この辺りは、防衛駐在官として海外に駐在するにあたり、1佐の階級章を付けることに意味がある措置なのであろうか。
それだけ、2佐と1佐では国際舞台での扱いも大きく変わるということのようだ。
では、そんな要職で活躍を続けてきた丸澤とは、これまでどのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。
少し詳細に、その経歴を見ていきたい。
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