【自衛官の出世と給料】一般大学卒業生は自衛隊で出世できない、は本当か

世間一般でよく聞くお話だ。若者などが進路に悩み周りの人に相談した際に、

「自衛隊に入っても、一般大学卒業からの入隊だと出世できないぞ」

と言われた、という話である。

確かに、自衛隊の幹部と言えば普通、防衛大学校卒業生が務めるものと相場が決まっている。

本当はそう単純なものでもないのだが、少なくとも世間一般ではそう思われている。

そこで、今回のコラムの目的だ。

一般大学卒業生は、本当に自衛隊で出世できていないのかを、最新のデータで見てしまおうというものである。

2018年6月時点での、出世しているエライ自衛官の中に、一般大学卒業生はどれくらいいるのか。

それをみれば、自衛官の出世について僅かばかり、傾向が掴めそうではある。

一方で、究極の結論を先に一つ言ってしまいたい。

1980年代に発生した、日本軍将校と防衛大学校卒業生の間が開いた例外的な期間を除き、一般大卒業生が陸海空自衛隊の最高位である陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長に着任した事例は、たったの1つもない。

その意味では、少なくとも一般大学卒業生は、

「どれだけ頑張っても社長にはなれないよ」

という指摘があれば、それは今のところ一つの事実である。

しかし出世は必ずしも、社長だけではない。一般企業で言えば、副社長や専務、その他取締役などの役員に昇ることができれば、十分な出世である。

同様に、自衛隊で言えば「将官」と呼ばれる、将補以上の階級に昇ることができれば、もはや誰にも文句を言わせない「出世」ということができるだろう。

なお将官とは陸将、陸将補、海将、海将補、空将、空将補のことを指す。

そして2018年6月現在で、一般大学卒業生(防衛大学校卒業生以外)から、陸海空の将官に昇った者たちは、以下の通りだ。

総勢28名のスーパーエリートである。

防衛大学校を卒業していない陸海空自衛隊・将官一覧(2018年6月現在で現役の者)

通番号 氏名 階級 相当期 生年月日
(昭和)
昇任 出身大学 備考
1 吉田圭秀 陸将 30 37年10月 2017.8 東京大
2 坂下栄治 陸将補 29 36年9月 2016.12 東洋大 生徒
部内A幹等
3 勝井省二 陸将補 30 37年1月 2018.8 関西大
4 小瀬幹雄 陸将補 30 38年12月 2013.8 東京大
5 小和瀬一 陸将補 31 38年1月 2014.3 東京理科大
6 鬼頭健司 陸将補 32 39年8月 2014.12 東京大
7 堀井泰蔵 陸将補 32 39年12月 2013.8 二松学舎大
8 梅田将 陸将補 33 38年5月 2015.12 神奈川大 生徒
部内A幹等
9 斎藤兼一 陸将補 33 38年7月 2017.12 東京大
10 堀江祐一 陸将補 33 39年7月 2017.3 日本大 生徒
部内A幹等
11 平田隆則 陸将補 34 39年7月 2017.3 高校卒 生徒
部内A幹等
12 高島辰彦 海将 28 35年8月 2017.12 京都大
13 出口佳努 海将 30 37年6月 2017.8 岡山大
14 岡﨑光博 海将補 29 37年12月 2016.3 東京水産大
15 丸澤伸二 海将補 29 38年2月 2015.8 大阪外大
16 横田友範 海将補 31 39年11月 2018.3 国士舘大
17 瀨戸慶一 海将補 32 38年2月 2018.3 東海大
18 柴田弘 海将補 32 38年6月 2015.8 愛媛大
19 小座間義隆 海将補 32 39年9月 2015.3 明治大
20 小峯雅登 海将補 33 40年7月 2016.3 宮崎大
21 近藤奈津枝 海将補 33 41年1月 2016.12 山口大
22 泉博之 海将補 34 39年5月 2015.12 早稲田大
23 竹中信行 海将補 36 44年12月 2017.8 龍谷大
24 井上浩秀 空将 29 36年4月 2017.12 学習院大
25 石上誠 空将補 33 40年12月 2016.12 神奈川大
26 横尾広 空将補 34 42年6月 2017.7 日本大
27 船倉慶太 空将補 35 42年9月 2017.12 和歌山大
28 加藤康博 空将補 36 43年12月 2018.3 高校卒

なお備考欄の「生徒・部内A幹等」というのは、自衛隊生徒・工科学校等として自衛隊に入隊したもの、あるいは高校を卒業するなどして曹士として自衛隊に入隊したもののうち、通信や夜間の大学を卒業し幹部に転じた幹部である。

中には、最終学歴高校で一般幹部候補生に合格し幹部に転じ、将官に昇ったバケモノもいる。

いずれにせよ、防衛大学校を卒業していないということは共通だ。

この中には、教員から海上自衛隊に転じた自衛隊の  女将  アイドル、近藤奈津枝(第33期相当)・海将補ももちろん含まれている。

まずはこれが、客観的な状況だ。

では次に考えたいのが、この28名という数字が多いのか少ないのか、ということだ。

陸海空の将官が総数で50名しかいないのであれば、28名は十分な数だろう。つまり、防衛大学校卒業生に出世のアドバンテージはないことになる。

逆に1000名のうちの28名なら、一般大学卒業生は出世に圧倒的不利、と言える。

また別の観点もあり、そもそも防衛大学校卒業生と一般大学卒業生は毎年、どれくらいの人数が幹部として採用され、そして将官に昇っているのか、ということも考えなければいけない。

防衛大学校卒業生が毎年1000人で、そのうち将官にたどり着くものは10名。

一方で一般大学卒業生は100名で、そのうち将官にたどり着くものは5名。

もしこのようなことがあれば、自衛隊では一般大学卒業生こそが圧倒的に出世に有利といえる。将官の絶対数では半分でも、将官になれる者の割合が5倍(1%と5%)だからだ。

そのため、「一般大学卒業生は自衛隊で出世できない」という仮説が真実なのかは、以下の数字と併せて考えなければ真実は見えてこないと言えそうだ。

1.将官の総数に対する防衛大学校卒業生と、それ以外の出身者の数の比較

2.幹部に任官される防衛大学校卒業生と、それ以外の出身者の数の比較

では、これら1、2の状況は具体的にどうなっているのか。

次ページでそれら数字を、明らかにしてみたい。

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