【退役】坂下栄治(中央会計隊長・陸将補)|第29期相当・陸上自衛隊

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坂下栄治(さかした・えいじ)は昭和36年9月生まれ、長崎県出身の陸上自衛官。

幹部自衛官のキャリアとしては、東洋大学経済学部を卒業し、幹候66期を修了しているので第29期相当になる。

出身職種は判明しないが、おそらく会計科と思われる。

 

平成30年8月(2018年8月) 陸上自衛隊中央会計隊長・陸将補のポストを最後に勇退となった。

前職は東部方面総監部総務部長であった。


(画像提供:陸上自衛隊関東補給処公式Webサイト

【以下、2018年8月4日加筆】

昭和52年4月からだ。

当時の自衛隊生徒として陸上自衛官に任官以来、実に41年間にも及ぶ自衛官生活に、陸将補・坂下栄治が別れを告げた。

41年前といえば、今年1選抜で1等陸佐に昇った高級幹部が生まれた年ということになる。

その頃から長きに渡り、我が国の国防に真摯に貢献し続けてきた、坂下の崇高な自衛官人生であった。

 

なお自衛隊生徒出身の幹部は、その後、坂下のように一般大学を出て幹部に任官した場合。

あるいは防衛大学校に入り一旦、自衛官の身分を離れた場合。

最終学歴が自衛隊生徒ではないために、その公式の略歴から、生徒出身であることがわからない場合が多い。

そのため、将補以上の最高幹部にどれだけの生徒出身者がいるのか判明しないのだが、それでも23期と言えば、生徒出身者でも相当な古参であることだけは間違いない。

現役で判明している将官で、生徒出身の古株と言えば、思いつくのは大阪地本長の梅田将(第33期相当)であろうか。

 

なお、その梅田は生徒25期なので、生徒23期の坂下が3年生の頃に1年生であったことになる。

生徒出身の幹部は、何歳になっても、「上官よりも当時の3年生の方が今も怖い」というように、少年時代の想い出がいつまでもトラウマになっている事が多いそうだ。

坂下と梅田の関係がどうであったのかはさすがにわからないが、上級生との関係はともかく、生徒の同期同士は本当に生涯の「竹馬の友」となり、鉄の絆が生まれるとも聞く。

あるいは坂下も今頃、生徒23期の仲間たちに囲まれ、階級章を外した悪童に戻り、酒を飲んで大騒ぎしているのではないだろうか。

 

坂下将補の国防に尽くされた崇高な人生に、心からの敬意と感謝を申し上げます。

まずはごゆっくりとお過ごしになって、積年のお疲れをお癒やし下さい。

本当に長い間、お疲れ様でした。

そして、本当にありがとうございました。

坂下様の第二の人生も充実したものとなりますよう、心からお祈り申し上げます。

 

【以下、2018年3月9日までの過去記事】

2018年3月現在、中央会計隊長を務める坂下だ。

ページ末尾の略歴にも記している通り、陸上自衛隊に入隊したのが実に昭和52年。

防衛大学校第21期入隊の統合幕僚長・河野克俊(第21期)が昭和52年3月の海上自衛隊入隊であることを考えるとおわかり頂けると思うが、陸上自衛隊生徒出身で、生徒は23期の卒業である。

 

その自衛官生活は、15歳の頃から実に40年以上に及ぶ。

防大27期相当、28期相当には生徒出身の現役将官はいないはずなので、あるいはその自衛官生活の長さは、河野に次いで現役自衛官として2番めの長さということになりそうだ。

若年より、現場を支える陸曹として過酷な訓練と任務に励みながら、同時に東洋大学2部の経済学部に進学。

勤務と両立させ無事に卒業すると、幹候66期として幹部自衛官の一歩を踏み出したが、66期はストレートであれば、昭和37年度生まれの幹部が入隊する年次だ。

つまり昭和36年9月生まれの坂下は、自衛官としての極めて厳しい任務をこなしながら、僅か1年の遅れで幹部コースに乗ったということになる。

まさに呆れるばかりの努力の人であり、意志さえ強く持てば、人の努力には限界がないことを結果で示しているかのような凄い幹部だ。

 


(画像提供:防衛省公式Webサイト

さてその坂下だが、中央会計隊長として、全国の方面隊に所在する会計隊を統制する責任を担う。

各地に所在する会計隊は、隊員の給与や旅費、需品や資材の調達等を任務とするが、その仕事柄一般企業の担当者と接することも多いポジションだ。

そのため良い意味でも悪い意味でも、数字に卓越した技能を持ち合わせていることから、高い倫理観を持って職務に臨む素養が求められる。

その責任者であれば言わずもがなであり、あるいはこの補職からも、坂下の実直で誠実な人柄が窺えるようだ。

 

さて次に、坂下の幹部自衛官としてのキャリアと、同期である29期の状況について見てみたい。

坂下が幹部候補生学校に入校し、初級幹部としての1歩を歩みだしたのが昭和60年3月。

1等陸佐に昇任したのが平成16年1月なので、29期組1選抜でのスピード出世だ。

陸将補に昇任したのが平成28年12月であったので、およそ13年に渡り1佐として現場の指揮を執り続けたことになり、生徒出身の幹部ということも併せ、誰よりも現場を知り尽くす。

まさに、現場を知り尽くす最高幹部という意味では、陸上自衛隊で坂下の右に出るものはいないという頼りになる陸将補だ。

 

そして29期の動向だが、既に同期の陸上幕僚長候補レースの”最終出走馬”は固まっており、人事に大きなサプライズは残っていない状況になっている。

2018年3月現在だが、その29期組で陸将にあるものは以下のとおりだ。

 

本松敬史(第29期)・統合幕僚副長(2016年7月)

上尾秀樹(第29期)・防衛大学校幹事(2016年7月)

高田克樹(第29期)・陸上幕僚副長(2016年7月)

納富 中(第29期)・第9師団長(2016年7月)

柴田昭市(第29期)・第1師団長(2017年3月)

山内大輔(第29期)・陸上自衛隊関東補給処長(2017年3月)

清田安志(第29期)・第6師団長(2017年8月)

※肩書はいずれも2018年3月現在。( )は陸将昇任時期。

 

この中でも、29期組から陸上幕僚長が選抜されることがある場合、本松、上尾、高田の3名に絞り込まれたと言って良いが、納富にもまだ可能性が残されている。

他の将官については、あくまでも陸上幕僚長候補という意味においてではあるが、既に追いつくのは不可能であり、29期組の陸幕長候補レースは終わっていると言って良いだろう。

 

坂下については先述の通り、誰よりも長い自衛官生活、誰よりも現場に精通した極めて豊富な経験、そしてそこで培われた知見から生み出される確かな仕事ぶり。

その仕事ぶりで我が国の平和と安全を根底から支える屋台骨であり、そしてこれからもあり続けるであろう。

このようないぶし銀の幹部自衛官こそ我が国の宝であり、組織を強靭たらしめる核心だ。

これからもその活躍には注目し、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

◆坂下栄治(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
52年4月 陸上自衛隊入隊(生徒23期)
60年3月 陸上自衛隊幹部候補生学校(第29期相当)

平成
8年1月 3等陸佐
11年7月 2等陸佐
16年1月 陸上幕僚監部装備計画課 1等陸佐
16年8月 幹部学校付
17年8月 研究本部研究員
17年12月 陸上幕僚監部厚生課厚生班長
19年12月 中部方面総監部会計隊長
22年3月 陸上幕僚監部会計課長
23年8月 研究本部主任研究開発官
24年12月 東北補給処副所長
27年4月 東部方面総監部総務部長
28年12月 中央会計隊長 陸将補
30年8月 中央会計隊長のポストを最後に勇退

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