吉野俊二(よしの・しゅんじ)|第31期・九州補給処長

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吉野俊二は昭和38年6月2日生まれ、大阪府出身の陸上自衛官。

防衛大学校第31期の卒業で幹候68期、出身職種は化学科だ。

 

平成30年12月(2018年12月) 九州補給処長兼ねて目達原駐屯地司令・陸将補

前職は化学学校長であった。

(画像提供:陸上自衛隊目達原駐屯地公式Webサイト

2019年4月現在、九州補給処長兼ねて目達原駐屯地司令を務める吉野だ。

九州補給処はご存知のように、全国に5つある補給処の一つであり、方面総監の指揮下であらゆる兵站の実務に責任を負う。

かつての日本陸軍の教訓を引き合いに出すまでもなく、有事に際してもっとも重要な役割を果たす、我が国の安全保障の要とも言える役割を担っている。

 

ところでこの、九州補給処について。

先程、「全国に5つある」とお伝えしたが、なにか違和感はないだろうか。

その5つとは、北海道、東北、関東、関西、九州であり、それぞれ北部方面隊、東北方面隊、東部方面隊、中部方面隊、西部方面隊の隷下に置かれている。

所在地はそれぞれ、島松駐屯地(北海道恵庭市)、宮城駐屯地(宮城県仙台市)、霞ヶ浦駐屯地(茨城県土浦市)、宇治駐屯地(京都府宇治市)、目達原駐屯地(佐賀県吉野ヶ里町)だ。

明らかに、一ヶ所足りないと思われないだろうか。

お気づきの方もいるかと思うが、我が国は、南西方面に喫緊の国防の課題を抱えているにもかかわらず、沖縄・那覇に補給処を持っていないという驚くべき事実が存在している。

 

一度一般国民にも考えてほしいのだが、もし我が国が中国人民解放軍と尖閣諸島をめぐり局地戦に巻き込まれた場合。

120%、宮古島と石垣島、また奄美諸島も攻撃を受けることになるだろう。

言うまでもないがこれは、これらの島嶼部に自衛隊の基地があるからではない。

中国が尖閣諸島を奪おうとしたら、我が国はこれらの島々を橋頭堡にして反撃の体制を整えるからだ。

言い換えれば、これらの島々に自衛隊の基地がないのであれば、中国は尖閣を攻撃する前にまず、これらの島を占領して足場を固めるだろう。

そして、予め反撃の手段を奪ってから、尖閣を奪うのが常識的な戦いの進め方だ。

つまり、自衛隊の部隊が駐屯していないのであれば躊躇せずに部隊を進め、直ちにその住民と国土をその支配下に収めることは目に見えているということだ。

 

(画像提供:グーグル・マップ)

言葉ではなかなか伝わらないと思うので、地図で示してみたい。

尖閣諸島を巡る我が国と中国人民解放軍との地政学上の位置関係は、この様になっている。

ご覧頂ければ明らかなように、石垣島と宮古島は尖閣周辺を射程圏内に収める12式地対艦ミサイルが配備されていることもあり、尖閣有事の際には陸海空自衛隊の最重要拠点として機能する。

そのため、武装の有無に関わらず、確実に攻撃の対象になるだろう。

さらに奄美警備隊の位置関係だ。

沖縄の那覇には米軍も駐留しているために、中国人民解放軍は、ここは絶対に攻撃できない。

日中の争いに収めながら尖閣を奪いたい野心があるのであれば、那覇を攻撃して米軍の尻尾を踏むことは絶対にない。

であれば、本州と南西諸島の連絡を分断するために、どこを攻撃するか。

地図上からも明らかなように、奄美を攻撃することはまず間違いないだろう。

ここを落としてしまえば、南西方面は本土との連絡が絶たれ、兵站も切られることになる。

 

前置きが長くなってしまったが、その前提で改めて考えてみて欲しい。

これら地域の兵站を担うのは、佐賀県に所在する九州補給処である。

上記地図で示しているが、九州北部の佐賀県に所在している。

有事の際に、本当にこんな場所から交戦中の海域を抜けて、石垣島や宮古島、奄美まで物資を届けられるだろうか。

兵站は機能するだろうか。

最悪の場合、奄美が陥ちれば南西諸島への兵站は、全て分断されるのである。

であれば、これら位置関係、防衛体制の現実を考えれば、我が国は那覇に補給処を整備し、最低限の物資を保有するべきだろう。

しかし、現実にはそうなっていない。

吉野が率いる九州補給処が、有事の際を含めてこれら最前線への補給を計画し、実行することに最終責任を担うことになっている。

 

本サイトでは繰り返し訴えていることだが、自衛官は確かに強い。

心身ともに鍛え上げられた、本当に頼もしい防人たちだ。

しかし、彼ら・彼女らはスーパーマンではない。

できることとできないことがあり、不可能なことは不可能であって、無理なことを期待するのは無茶というものである。

その最たるものの一つが、この補給処のあり方ではないだろうか。

確かに、九州補給処を預かる吉野陸将補の経歴は素晴らしいものだ。

最前線の兵站を預かることも、吉野にとっては決して荷が重い責任ではないだろう。

しかし一旦有事になれば、少なくともこれらの配置が、極めて重大なハンディキャップになることは目に見えているだろう。

沖縄の那覇には、6つ目の補給処を設置するべきである。

様々な課題があることは承知をしているが、それをやり遂げるのが政治の役割であり、また存在意義ではないのか。

 

政治家の力不足によって生じている国防の危機を、自衛隊や自衛官個人の能力に過度に依存して、解決しようとしてはならない。

自衛隊や自衛官が命をかけ、国防にその人生を捧げてくれているのであれば、政治家もその想いに応えなくてはならない。

国防という国家の根幹にすらコミットできないのであれば、政治家は政治家を名乗るべきではない。

我が国の政治家の不甲斐なさが、この国防の最前線にも表れていることを、ぜひ読者の皆さんには知ってほしいと願っている。

そして沖縄に補給処が整備され、一つ大きな国防の課題が解決されることを心から願っている。

 

そんなわけで、極めて理不尽な状況下で、国防の最前線の兵站を担っている吉野である。

では、そんな吉野とはこれまでどのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。

少し詳細に、その経歴を見ていきたい。

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