1佐人事・1佐職人事|2020年2月・海上自衛隊

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2020年2月、海上自衛隊1佐・1佐職の人事異動が防衛省から発令された。

 

当月、海自の人事異動で注目を集めたのは、残念ながら不祥事による人事だろうか。

余り自衛隊に詳しくない読者の方には何のことかわからないかも知れないが、詳細を言い過ぎると少し支障があるので曖昧な書き方をご容赦願いたい。

海自1佐が副業をしていた上に、その副業が性風俗関連のサービスで、自ら経営とサービスの提供まで行っていたという疑惑が指摘されたものだ。

そして定年退職間際に、事実上、指揮官ポストから更迭された。

どのような思いでそのような副業をしていたのか、あるいはただの噂なのかは不明だが、人事という形で厳しい判断が下ったのであれば、事実無根というわけでは無さそうだ。

 

今後だが、長年に渡り奉職した組織から、相当厳しい扱いを受けることになってしまうだろう。

以前、官舎に女性を連れ込んだとして更迭された将官も、退役後にも非常に厳しい扱いをされているそうだが、自衛隊は「信頼」に背いた高級幹部には非常に厳しい。

厳しいようだが、人の命を預かり、実力組織を運用する能力と権限を国家から与えられている以上、仕方のないことだ。

なんともやりきれない思いだが、99%の実直で誠実な自衛官と自衛隊に対する信頼を揺るがした報いとしては、それもまたやむを得ないだろう。

20万人以上もの「人」を扱う組織である以上、一定数発生してしまうことは避けられないのだとは思うが、やはり残念でならない。

 

その一方で、このような自衛隊不祥事が発生すると必ず湧いてくる「軍事評論家」さまが、適当なニュースを配信しているのを見るとやはり面白くない。

先日、週刊文春に「石動 竜仁」氏なる安全保障の専門家を名乗る方が、以下のような記述を掲載されていた。

問題の1佐は、護衛艦『やまゆき』、『まきなみ』、『こんごう』、練習艦『かしま』、補給艦『ましゅう』と、計5隻で艦長を歴任している他、司令部勤務や教育に関与している。筆者が目にした海上自衛官のキャリアの中で、ここまで多くの艦艇の艦長を務めた人物は記憶にない。過去の海上幕僚長でも、だいたい2隻くらいしか艦長を経験していない。

『女性向け風俗店を経営 海自幹部がブログに書いていた「ありえない内容」とは』

https://bunshun.jp/articles/-/32667

この方は、『安全保障入門』という著作も出されているようだが、その割には自衛隊の人事には、全く知識も理解もないようだ。

 

多数の護衛艦で艦長を経験するこのようなキャリアは、典型的な「艦方(ふなかた)」と呼ばれる幹部のものである。

艦乗りの中には、艦の扱いには抜群に長けていても、陸(おか)に上がると全く力を発揮できない幹部もいる。

そのような幹部は、将官に昇ることなく1佐のまま現場職を歴任し、必然的に多くの護衛艦で艦長を務める。

そしてこのキャリアは、海上幕僚長に昇るような幹部のルートではないので、この方の分析は前提から間違えている。

 

また、「過去の海上幕僚長でも、だいたい2隻くらいしか艦長を経験していない。」という表現には、多くの護衛艦で艦長を務めることがエリートのコースであると考えているフシが滲むが、それも間違いだ。

下手をしたら、海自には護衛艦キャリアしかないと勘違いしてる気すらするが、そもそも、海上幕僚長に昇るような途上にある護衛艦幹部は、艦長ポストを歴任しない。

 

実際に、近年の海幕長を見てみると、現任である第34代の山村浩(第28期)は、2000年8月から務めた「護衛艦みねゆき」艦長が、唯一の艦長ポストである。

以下、

第33代 村川豊(第25期)  0 (護衛艦キャリアではないため)

第32代 武居智久(第23期) 1 (護衛艦いしかり)

第31代 河野克俊(第21期) 1 (護衛艦おおよど)

第30代 杉本正彦(第18期) 1 (護衛艦はるゆき)

第29代 赤星慶治(第17期) 0 (護衛艦キャリアではないため)

 

など、近年、護衛艦の艦長ポストを2つ以上こなした海幕長など存在しない。

「過去の海上幕僚長でも、だいたい2隻くらいしか艦長を経験していない。」

などと、軍事専門家を名乗って影響力のあるメディアに寄稿しているにも関わらず、堂々とデタラメを書かれるとさすがに気分が悪い。

 

なお蛇足だが、5つの艦で艦長を務めた今回の不祥事を起こした1佐について

「筆者が目にした海上自衛官のキャリアの中で、ここまで多くの艦艇の艦長を務めた人物は記憶にない。」

とまで書かれているが、元1佐の山村洋行(第13期)は、ちとせ艦長、しまゆき艦長、はたかぜ艦長、はるな艦長、かしま艦長、おおすみ艦長と、6つの艦で指揮を執られ、1等海佐のままで誇りある海上自衛官人生を全うされた。

典型的な艦方(ふなかた)のキャリアであるが、海幕長ルートとは無縁である。

石動氏はさぞ多くの自衛官のキャリアを目にされたのだと思うが、それでもなお、軍事評論家を名乗るには少し勉強が足りないのではないだろうか。

 

管理人(私)は、自衛隊のド素人であり、ただただ心から自衛隊と自衛官を応援したいと純粋に願うものだ。

だから、軍事評論家などと名乗るつもりもないし、その知識も能力もあるとは全く思わない。

しかし、軍事評論家を名乗り、専門書籍を出されて世の中に影響力があるメディアで記事を書かれているにも関わらず、勉強不足のまま適当な記事を書かれる人はやはり好きになれない。

どうか、

「もう少しまじめに、自衛隊を分析し、そこで働く自衛官のことをもっと知って下さい」

と、苦言を申し上げずには居られない。

そのため、管理人(私)にしては珍しく、他者(他社)批判の記事になってしまったが、どうかご容赦頂きたい。

ご不快に思われた方がいれば、お詫び申し上げます。

 

なお例によって、アイキャッチ画像の若く美しい女性は、人事異動とは何の関係もない。

沖縄・那覇の第5航空隊に所属し、固定翼哨戒機P-3Cの操縦士を務める、渡邊瞳子・1等海曹である。

こんな美人で若い女性が、世界に誇る我が国の固定翼航空機を自在に操縦し、日本と世界の平和のために貢献しているなんて・・・。

オジサンすごく元気が出てきて、ますます自衛隊を応援せずにはいられません!

(*´ェ`*)

 

その他、詳細な異動内容は以下の通り。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:自衛隊沖縄地方協力本部公式ツイッター

海上幕僚監部首席法務官付法務室長を命ずる兼ねて海上自衛隊幹部学校勤務を命ずる
(海上幕僚監部首席法務官付法務室)
1等海佐 大内研治

 

海上自衛隊東京業務隊付を命ずる
(海上幕僚監部首席法務官付法務室長兼海上自衛隊幹部学校)
1等海佐 児島健介

 

(以上2020年2月1日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0201a.pdf

 

 

護衛艦隊司令部付を命ずる
(横須賀海上訓練指導隊司令)
1等海佐 森田哲哉

 

横須賀海上訓練指導隊司令事務取扱を命ずる
(海上訓練指導隊群司令)
1等海佐 岩澤努

 

(以上2020年2月4日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0204a.pdf

 

 

大湊地方総監部監察官を命ずる
(大湊地方総監部管理部援護業務課長)
2等海佐 近江良

 

(以上2020年2月6日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0206a.pdf

 

 

護衛艦隊司令部勤務を命ずる
(第1護衛隊群司令部首席幕僚)
1等海佐 後藤正寛

 

第1護衛隊群司令部首席幕僚を命ずる
(第1護衛隊群司令部)
1等海佐 高橋秀彰

 

(以上2020年2月18日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0218a.pdf

 

 

呉基地業務隊司令を命ずる
(呉地方総監部管理部援護業務課長)
2等海佐 平山敏弥

(以上2020年2月21日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0221a.pdf

 

 

海上自衛隊幹部候補生学校勤務を命ずる
(横須賀地方総監部防衛部)
1等海佐 北山健一郎

(以上2020年2月25日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0225a.pdf

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2件のコメント

このコラムが出たとき明らかに勘違いしている内容なのでTwitterでそのことを指摘しました
この人物の情報源はネット上で集めているものが大半で艦方について全く知っていませんでした
文春とは直接関係ないような言い方ですがそれにしても文春の名は出ているわけです
新潮現代もしかりですがいかにいい加減かがわかります
この手のWEBライターなる者の発信は本当に信用できません

コメントありがとうございます!
そうですよね、本当に自由に情報を発信できる時代だからこそ、情報リテラシーは大事だと思います。
最近では、週刊誌はもとより主要日刊紙でも自衛隊関係のニュースで間違いが散見されるので、物書きの質の酷さを嘆かわしく思います。

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