1佐人事・1佐職人事|2020年2月・航空自衛隊

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2020年2月、航空自衛隊1佐・1佐職の人事異動が防衛省から発令された。

 

当月、おそらく自衛隊関係者以外では全く注目していないであろう、それでいて

「・・・ん?なんじゃこれ?」

と思わずにはいられない、ちょっと目を引く人事異動が発令されている。

結論から言うと、2月1日の人事異動のうち、以下のものだ。

 

兼ねて航空幕僚監部防衛部防衛課勤務を命ずる
(航空幕僚監部総務部総務課総務班長)
1等空佐 井上利光

(航空幕僚監部人事教育部人事計画課養成班長)
1等空佐 阿部尚武

(航空幕僚監部運用支援・情報部運用支援課部隊訓練第1班長)
1等空佐 三宅英明

(航空幕僚監部装備計画部装備課企画班長)
1等空佐 稲村健吾

(航空幕僚監部首席衛生官付衛生官)
1等空佐 山口大介

 

これをみて、どう思われるだろうか?

なお、自衛隊の人事に詳しくない人に少し補足説明をすると、中央の幕(幕僚監部)における班長ポストとは、将来の陸・海・空幕僚長候補とも目される、若手1佐の登竜門である。

言い換えれば、「偉い人たち」の方針を実現するために、手足になって実務を担う人たちだ。

非常な激務であり、ちょっとシャレにならないレベルで心身ともに追い込まれる。

言い換えれば、このポストでの仕事ぶりによって、将来のキャリアも大きく左右されると言ってもよいだろう。

 

そのことを理解した上で、もう一度上記の発令を見てほしい。

そのような主要なポストにある中央の班長クラスが多数、防衛部防衛課、すなわち自衛隊の運用・作戦を担う部署に「兼務で」赴くよう命じられたのが、上記の辞令だ。

・総務課総務班長

・人事計画課養成班長

・運用支援課部隊訓練第1班長

・装備課企画班長

・首席衛生官付衛生官

の5名である。

これら5名が兼務で赴いたのが防衛部防衛課なので、当然のことながらこの5名に

・防衛部防衛課防衛班長(唯野昌孝・1空佐)

が加わっていることは、想像に難くない。

 

総務系、人事系、部隊訓練、装備に加え、運用・作戦の実務担当者が、正式に辞令を受け、一同に集められ、一体何をするのか。

考えられる可能性は以下の3つといったところだろうか。

1.航空宇宙自衛隊発足準備プロジェクトチーム

2.護衛艦「たかなみ」運用支援検討プロジェクトチーム

 

このうち、1についてはご存知、航空自衛隊の役割を拡大し、宇宙領域までをも国防の担当地域にしようという構想だ。

そう考えれば、このメンバーは極めて妥当だ。可能性はとても高いと言えるだろう。

航空宇宙自衛隊構想の発表が2020年1月であったことと併せて考えても、整合性がある。

 

2についてはどうだろうか。

こちらもご存じの方も多いと思うが、アメリカとイランの双方の顔を立て、極めて政治的な意味合いで中東海域に派遣されたのが護衛艦たかなみである。

2月26日から本格的に活動を開始したが、この護衛艦たかなみの運用を支援する目的で、空自が特別なプロジェクトチームを発足させたと考えるのも、まあ不自然ではないかも知れない。

ただし、それは既存の枠組みでも対応可能なので可能性としては低そうだ。

 

その上で、3つ目の可能性についてだ。

ご覧のように今回のメンバーには、総務系、人事系、部隊訓練、装備、運用・作戦の実務担当者に加え、首席衛生官付衛生官が加わっている。

前・航空機動衛生隊長である山口大介(公募幹部)・1等空佐だ。

なお航空機動衛生隊とは、「空飛ぶICU」の愛称で知られ、CH-130Hに救急救命設備をそのまま持ち込み、大病院並みの治療を行うことができる空自自慢の「病院機」である。

さらに山口個人は、平成7年に香川医科大学を卒業し、長らく市井の救急医として救命活動に従事した、元民間医である。

東京大学医学部付属病院の救急部集中治療部、国立がん研究センター中央病院の麻酔科集中治療科などで過酷な救急医療に携わってきた、救急救命のスペシャリストだ。

 

ぶっちゃけ、このメンバーに山口が加わって無ければ、

1.航空宇宙自衛隊発足準備プロジェクトチーム

なのだろうなと特段気にもしなかったが、山口の存在が目を引き、どうしてもこの人事が気になって仕方がない。

もしかしてこのチームは、2月1日という時期もあり、

3.新型コロナウイルス対策チーム

なのではないだろうか、と、深読みしてしまいたくなるのだが、考えすぎだろうか?

 

2月1日の時点で、航空自衛隊はすでに、日本がまもなく国家的非常事態になることを予見し、

1.総務・人事の実務責任者に、緊急時の人事や勤務体制・家族の安全確保を検討させ、

2.部隊訓練担当者に、非常時における部隊練度の維持・向上計画を立案させ

3.装備担当者に、来たるべき非常時に備え空自のリソースをどのように活用するのか確認を求め

4.救命救急のスペシャリストである山口に、国民保護計画の立案を命じ

5.防衛班長がその全体を取り仕切る

というプロジェクトチームを発足させたと考えれば、非常に納得感が高いのだが、いかがだろう。

 

全く別の可能性として、新年度を控えて空自には、毎年この時期にこのような人事が発令されるという可能性だ。

ただ、昨年の1月、2月、3月の辞令を全てあたってみたが、類似のプロジェクトチームが発足された形跡はまったくなかった。

つまり、今年限りの何か特別な事情に対応するためのチームということだ。

 

常識的に考えれば、

1.航空宇宙自衛隊発足準備プロジェクトチーム

ということで間違いがないだろう。

宇宙領域への進出を考えれば、医官としての見識が極めて豊富な山口が参加する事に、矛盾はない。

しかし、救命救急のスペシャリストである山口である必要はない。

 

本当のところは、さすがにわからない。

中の人に聞いても教えてくれるはずもないので、あれこれ想像をするしかないが、兼務が解かれる時期で、今回の人事の本当の狙いがわかるのではないだろうか。

もし新型コロナウイルスへの対策チームであるとするならば、空自は相当早い段階から、非常に高い危機対応能力を発揮していたと言えそうだ。

今回の非常事態に際しても、自衛隊がとても頼りになる存在であることを証明してくれる事になるだろう。

そしていい意味で、証明しなくて済むことを祈る思いは、もちろん隊員さん一人ひとりの本意であることも疑いようがない。

そんなことを思わずにはいられない、2月の空自の人事であった。

 

なお、例によってアイキャッチ画像の美しい女性は人事異動とは何の関係もない。

航空自衛隊名物である「輝く美しい女性隊員」を集めたパンフレット、「空女」2020年版に掲載されている、西美貴恵・3等空曹である。

岐阜県出身で武器弾薬を扱うスペシャリストであり、我が国と世界の空の安全を守る戦闘機の整備に責任を担う。

彼女がいなければ、F-15戦闘機もただの「すごく早い乗り物」でしかない、張子の虎である。

日本の安全保障は、このように強く美しい女性なしには、もはや成り立たない。

 

その他、詳細な異動の内容は以下の通り。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:航空自衛隊公式Webサイト

航空幕僚監部防衛部防衛課勤務を命ずる
(航空幕僚監部防衛部装備体系課)
1等空佐 谷口弘樹

 

兼ねて航空幕僚監部防衛部防衛課勤務を命ずる
(航空幕僚監部総務部総務課総務班長)
1等空佐 井上利光

(航空幕僚監部人事教育部人事計画課養成班長)
1等空佐 阿部尚武

(航空幕僚監部運用支援・情報部運用支援課部隊訓練第1班長)
1等空佐 三宅英明

(航空幕僚監部装備計画部装備課企画班長)
1等空佐 稲村健吾

(航空幕僚監部首席衛生官付衛生官)
1等空佐 山口大介

 

(以上2020年2月1日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0201a.pdf

 

 

航空幕僚監部総務部総務課総務調整官を命ずる
(西部航空方面隊司令部防衛部長)
1等空佐 村上博啓

 

航空総隊司令部防衛部運用課作戦室長を命ずる
(航空総隊司令部)
1等空佐 濱谷淳

 

西部航空方面隊司令部防衛部長を命ずる
(航空総隊司令部防衛部運用課作戦室長)
1等空佐 有松勝行

 

第8航空団副司令を命ずる
(航空幕僚監部総務部総務課総務調整官)
1等空佐 伊藤敬信

 

航空開発実験集団司令部監理監察官を命ずる
(第8航空団副司令)
1等空佐 長谷川純一

 

(以上2020年2月2日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0202a.pdf

 

 

航空幕僚監部会計監査室長を命ずる
(航空自衛隊補給本部武器弾薬部長)
1等空佐 原田一樹

 

航空自衛隊補給本部監理監察官を命ずる
(航空幕僚監部会計監査室長)
1等空佐 大森太郎

 

航空自衛隊補給本部武器弾薬部長を命ずる
(航空自衛隊第4補給処資材計画部長)
1等空佐 黒子一也

 

航空自衛隊第4補給処資材計画部長を命ずる
(航空自衛隊第4補給処)
1等空佐 浅木恒二

 

(以上2020年2月26日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0226a.pdf

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