海将人事・海将補人事|2020年8月・海上自衛隊

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2020年8月、海上自衛隊の海将・海将補の人事異動が防衛省から発令された。

 

当月は言うまでもなく、海上自衛隊にとっても非常に大きな人事の節目にあたり、そして日本と世界の安全保障環境にも大きな影響を与える人事が動いている。

中でも、「プレ海上幕僚長ポスト」とも言うべき

・自衛艦隊司令官

・佐世保地方総監

の2つのポストが動いていること、そしてそのポストに着任した海将2名にぜひ、注目して欲しい。

 

今回の異動で自衛艦隊司令官に着任し、次期海上幕僚長の最有力候補の一人となったのは、湯浅秀樹(第30期)

そして、同じく佐世保地方総監に着任し、湯浅と並び次期海上幕僚長の最有力候補の一人となったのは出口佳努(第30期相当)

以前からたびたびご紹介していたように、管理人が大好きな海上自衛官の中でも、指折りの将官のお二人だ。

 

そのお二人の何がそんなに好きなのか。

直接お会いしたこともなく、もちろんお話をしたこともないのだが、公式にリリースされるお写真や端的な記事からだけでも、このお二人がとても優れた将官であることは容易に推察できる。

 

例えば、今となっては貴重になった、湯浅がまだ海将補で掃海隊群司令だった頃のお写真。

(画像提供:海上自衛隊掃海隊群公式Webサイト

海上自衛隊に限らず、陸海空の高級幹部は指揮官紹介のプロフィール写真に、イカツイ写真だったり、無表情だったり、威厳のある写真を掲載していることが多い。

しかしながら湯浅は、「笑う門には福来る」という揮毫を背景に、満面の笑顔でプロフィールを掲載してみせた。

 

なおこの時、湯浅が指揮を執ってた掃海隊群は有事の際、陸上自衛隊と協働して離島防衛の最前線に立つ殴り込み部隊だ。

平時の機雷処理においても、非常に危険で過酷な任務を任されるが、実際に掃海隊では、艦上で甲板に座ったまま寝る訓練をする。

いつ触雷し、艦が沈むか想定できないためであり、それほどまでに極限の緊張感の中で任務に臨んでいる。

つまり、平時でも、有事でも、極めて厳しい任務が求められる部隊ということだが、だからこそなのだろう。

指揮官自ら心からの笑顔で部隊を鼓舞し、

「笑う門には福来る」

と言ってみせた。

この写真は、そんな一枚だと思っている。

指揮官に余裕があり、こんな笑顔で肩を叩かれたら、部下の方もきっと心に余裕が生まれ力をもらえるのではないだろうか。

そんなこともあり、湯浅の活躍には本当に期待している。

その湯浅が、次期海上幕僚長候補の筆頭たる自衛艦隊司令官に着任したことを、本当に嬉しく思っている。

 

同様に、佐世保地方総監に着任した出口の笑顔も、とても大好きだ。

(画像提供:海上自衛隊公式フェイスブック

こちらもまだ出口が海将補で、佐世保地方総監部の幕僚長だった時代の一枚。

当時、佐世保地方総監だった山下万喜(第27期)とともに、帽振れでインド海軍の出港を見送る様子である。

まるで何かのゲームのキャラクターのように、とても魅力的な笑顔の1枚だ。

それから4年の時が経ち、今は自分が佐世保地方総監として再び佐世保の地に戻ってきた。

 

なお、出口だが、実は防大の卒業生ではなく岡山大学を卒業し海上自衛隊に入隊している。

そのため、海上幕僚長候補としてはどうしても、「次のステップ」には、極めて大きな壁が立ちはだかっていると言って良いだろう。

実際に陸海空3自衛隊では、「空白の80年代」以降、たったの一人も、一般大学卒業生は陸海空の幕僚長に昇っていない。

 

ちなみに陸自でも2020年8月現在、No2の序列と言って良い陸上総隊司令官は、一般大学(東京大学)の卒業生である吉田圭秀(第30期相当)だ。

湯浅の同期ということになるが、湯浅と合わせて、一般大学卒業生から「てっぺんのイス」に昇るものが現れるのかどうか。

合わせて注目したいと思っている。

 

なお例によって、アイキャッチ画像の美しい女性は人事異動とは何の関係もない。

第53期一般幹部候補生課程(部内課程)を卒業した幹部候補生たちが外洋練習航海に出航した際の立ち寄り先の一つ、フィジー共和国での一コマだ。

「軍人外交」と言えばイカツイ男同士の権謀術数というイメージがあるが、令和の時代の「軍人外交」では、女性もその大きな役割を担う。

そして女性ならではのコミュニケーション能力の高さで、世界各国に個人的な友好のコミュニケーションを、ひいては国家レベルで友好の輪を広げ、日本と世界の平和のために、大いに貢献してくれるのではないだろうか。

世界中に、この素敵な笑顔の輪が広がりますように・・・!

 

その他、異動の詳細な内容は以下の通り。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト

海将に昇任させる
(海上幕僚監部防衛部長)
海将補 齋藤聡

(開発隊群司令)
海将補 下淳市

(呉地方総監部幕僚長)
海将補 森田義和

 

統合幕僚監部運用部長を命ずる
(開発隊群司令)
海将 下淳市

 

海上幕僚副長を命ずる
(教育航空集団司令官)
海将 西成人

 

自衛艦隊司令官を命ずる
(護衛艦隊司令官)
海将 湯浅秀樹

 

護衛艦隊司令官を命ずる
(海上幕僚監部防衛部長)
海将 齋藤聡

 

教育航空集団司令官を命ずる
(呉地方総監部幕僚長)
海将 森田義和

 

佐世保地方総監を命ずる
(海上幕僚副長)
海将 出口佳努

 

舞鶴地方総監を命ずる
(海上自衛隊補給本部長)
海将 伊藤弘

 

海上自衛隊補給本部長を命ずる
(統合幕僚監部運用部長)
海将 中畑康樹

 

退職を承認する
(自衛艦隊司令官)
海将 糟井裕之

(佐世保地方総監)
海将 中尾剛久

(舞鶴地方総監)
海将 大島孝二

 

(以上、2020年8月25日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0825a.pdf

 

 

海将補 に昇任させる
(海上幕僚監部総務部経理課長)
1等海佐 山口宜久

(海上幕僚監部人事教育部補任課長)
1等海佐 平田利幸

(横須賀地方総監部防衛部長)
1等海佐 小杉正博

(横須賀造修補給所長)
1等海佐 山岡鉄司

 

海上幕僚監部総務部長を命ずる
(護衛艦隊司令部幕僚長)
海将補 梶元大介

 

海上幕僚監部総務部副部長を命ずる
(横須賀地方総監部防衛部長)
海将補 小杉正博

 

海上幕僚監部防衛部長を命ずる
(海上自衛隊幹部学校副校長)
海将補 大町克士

 

護衛艦隊司令部幕僚長を命ずる
(第4護衛隊群司令)
海将補 西脇匡史

 

第4護衛隊群司令を命ずる
(海上幕僚監部人事教育部補任課長)
海将補 平田利幸

 

第22航空群司令を命ずる
(海上幕僚監部総務部副部長)
海将補 國見泰寛

 

開発隊群司令を命ずる
(横須賀造修補給所長)
海将補 山岡鉄司

 

呉地方総監部幕僚長を命ずる
(海上幕僚監部総務部経理課長)
海将補 山口宜久

 

海上自衛隊幹部学校副校長を命ずる
(海上幕僚監部総務部長)
海将補 伍賀祥裕

 

退職を承認する
(第22航空群司令)
海将補 岡田真典

 

(以上、2020年8月25日付)

防衛省発表資料

https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2020/0825b.pdf

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