【退役】山下万喜(自衛艦隊司令官・海将)|第27期・海上自衛隊

山下万喜(やました・かずき)は昭和35年8月2日生まれ、熊本県出身の海上自衛官。

防衛大学校は第27期(電気工学)、幹候は第34期の卒業だ。

平成31年4月(2019年4月) 自衛艦隊司令官・海将のポストを最後に退役の日を迎えられた。

前職は佐世保地方総監であった。

(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト

あらゆることに抜きん出た素晴らしい海の男がまた1人、海上自衛隊を去った。

佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などの要職を務めた、山下万喜(第27期)・海将だ。

多くの人から、「第34代海上幕僚長は、山下で間違いがないだろう」と言われ続けた最高幹部であり、またそれだけの実績・能力を備えた武人であった。

防衛関係ジャーナリストはもちろん、多くの自衛隊ファンにとっても、近年最大のサプライズ人事になった退役となったのではないだろうか。

確かに、「海上幕僚長直前ポスト」たる佐世保地方総監、自衛艦隊司令官の2つを経験した数少ない最高幹部であり、海上幕僚長への”昇格”は、近年まで既定路線であったように思う。

事実、おそらく直前まで山下か山村浩(第28期)のいずれが昇格するべきかは、相当な議論・熟考が為されていたはずだ。

それほどまでに、海上幕僚長の重責すら、山下にとっては決して荷が重いポストではなかった。

しかし個人的には、山下海将の退役は、実はもっとも幸せな海上自衛官としての在り方ではなかったのだろうかと、少なからず思っている。

なぜか。

山下が本物の艦乗りであり、退役の時を陸(おか)で迎えるべき人ではなかったと考えているからだ。

近年、自衛隊では陸海空3自衛隊の統合運用がますます進み、統合幕僚監部の比重が重くなりつつある。

そしてそれに連れて、陸海空幕僚長の重みは相対的に軽くなり、その一方で実力部隊の長の重みが増してきた。

すなわち陸上総隊司令官の創設であり、自衛艦隊司令官と航空総隊司令官の重要性の増大だ。

この流れの延長に近い将来、必ず統合司令官の創設が実現されるだろう。

そして統合司令官はもちろん、統合幕僚長と同格になる。

その時には、陸海空の各幕僚長と実力部隊の指揮官である司令官は、事実上同格になるのではないだろうか。

そして自衛隊には、幕僚よりもやはり指揮官ポストを名誉とする文化がある。

つまり、既にこの流れの中にある今の陸海空自衛隊では、「星が乗る」幕僚長よりも、現場指揮官として自衛隊を去る美学や名誉があるということだ。

そして山下ほど、「政治にも関わる」幕僚長に着任すること無く、将官艇に乗り武人のまま現場を去ることが似合う男もいない。

実際に、上記2枚の写真の山下は、無念を押し殺して現場を去る、消化不良の指揮官のものに見えるだろうか。

期待された役割の全てをやり切り、全力でゴールを駆け抜けた後のアスリートが見せる達成感あふれる表情に見えないだろうか。

美しい令夫人の笑顔も、夫婦で共に走りきった人生の達成感を共有する、素晴らしいものにみえる。

正直、この2枚の写真を見ていると、目から汗が出てくるのを止めることができない。

今の山下の胸中を推し量ることなど、凡人以下の管理人にはとても恐れ多いことだが、大いなる達成感と少しばかりの寂しさで満たされているのではないだろうか。

さらに、変な言い方だが、「政治にも関わる」海上幕僚長になること無く退役をした山下だからこそ、恐らく今後は在野の軍事評論家としての活躍も、期待できるはずだ。

やはり海上幕僚長にまで昇ってしまった人物は、退役後もその言動にはやかましい制約が多い。

しかし、「元自衛艦隊司令官」で退役をした山下であれば、香田洋二(第16期)・元海将がそうであるように、退役後の活動もとても楽しみである。

そういったあらゆることを含めて、山下の退役を祝福したい想いを改めて強くしている。

長い間、本当にお疲れ様でした、ありがとうございました。

山下海将が成し遂げられたあらゆる実績とご活躍を、多くの日本人が記憶に残し続けるでしょう。

最後の最後まで、本当にカッコイイ最高幹部のまま自衛隊を去られたその自衛官人生に、心からの敬意と感謝を申し上げます。

まずはご家族でゆっくりとお花見にでも足を運ばれて、積年のお疲れをどうぞお癒やし下さい。

そしてまだまだ、有り余る気力・体力を存分に振るわれて、あらゆる分野でご活躍をされることを心からご期待申し上げて、楽しみにしております。

重ねまして、本当にお疲れ様でした、ありがとうございました。

【最終更新】2019年4月6日

以下は、2018年11月までに更新の記事

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(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト


(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト

2018年11月現在、海上自衛隊のほぼ全ての実力組織を率いる、自衛艦隊司令官を務める山下だ。

自衛艦隊という名前から、水上艦艇部隊の統率者である印象を受けるかも知れないが、航空集団、潜水艦隊、掃海隊群を始めとした、あらゆる部隊を率いる組織の司令官である。

有事の際に防衛大臣からの指揮命令を受け、部隊の指揮を実際に執る重要な任務を担うポストだ。

「将」としての格は、陸上総隊司令官、航空総隊司令官と同格となる指定職5号だが、他に海自では、佐世保地方総監と横須賀地方総監が、同格の扱いとなる。

実際に海上自衛隊では、自衛艦隊司令官、横須賀・佐世保の地方総監、それに海上幕僚副長の4名から、次の海上幕僚長が選任される人事が慣例になっており、この4ポストが、海上幕僚長を除く海自の最重要幹部と言ってよいだろう。

その一角である、自衛艦隊司令官の重責を担う山下である。

さらに山下は、その前職では同じ指定職5号の佐世保地方総監までも務めた。

「海上幕僚長直前ポスト」である重責を2つこなしており、もはや誰がどう考えても、2018年12月、すなわちこの記事をポストしてから1ヶ月以内となる間もなくに、海上幕僚長に昇任することは誰の目にも明らかだ。

中央(海上幕僚監部)でも、班長ポストは防衛、課長ポストは装備体系課長に補任課長、部長ポストは防衛である。

現場でも中央でも、過去に海上幕僚長に着任した最高幹部たちが歩んできた最重要ポストをすべてこなしてきており、もはや山下が、村川豊(第25期)の跡を継がない理由が見当たらない。

全てのキャリアが、海上幕僚長に昇るために設計されてきたかのような、近年稀に見るほどに充実した経歴を誇る最高幹部である。

しかし、本当に山下は、このまま順調に第34代海上幕僚長に着任することがあるのだろうか。

一部の軍事ジャーナリストなどの雑誌への寄稿を見ていると、既定路線であるという意見と、いや難しいのではないか、という意見が混在しており、意外にも意見は分かれている。

しかしさすがに、今の時期(2018年11月下旬)であれば、もはや関係者に内示は出ているだろう。

今更何を言っても変わるわけはないのだが、だからこそ、ではなぜ山下の海幕長昇任は無いのではないか、ということを言っている評論家がいるのか。

その辺りを含めて、少し次期海上幕僚長人事についても、予想を入れていきたい。

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