続けていきたい。
客観的に見れば、山下のキャリアは海上幕僚長に昇るものとして、その能力に疑いの余地を持つところが全く見当たらない。
現場(水上部隊、地方隊)、中央(海上幕僚監部)での要職に加え、幹部学校長も務めており、「軍人外交」でも非常に優れた手腕を発揮し続けている。
その全てが、海上幕僚長としてふさわしい最高幹部であることを証明している。
まずはこれが、客観的な事実だ。
(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト)
なお、いきなりの余談で恐縮だが・・・
上記3枚の写真は、防衛大臣政務官である鈴木貴子氏が、海上自衛隊に視察に訪れた際の画像である。
父親が、あの新党大地の鈴木宗男であるというのがにわかに信じがたいほどに、美人でありチャーミングでありかわいい。
しかも、1枚目の後ろに写り込んでいる女性自衛官まで凛々しくてかわいい。
なんというかもう、山下ですらメロメロの一枚であり、つい紹介したくなったのでこの場を借りて貼らして頂いた。
しかしそれにしても、山下はともかく、3枚め左側に写っている2佐の嬉しそうな顔は、いくらなんでも喜び過ぎじゃないのかと思わなくもない。
自衛隊の外部から(いや、正確には政務官なので、外部ではないが)、若くてきれいな女性が自衛隊に視察に訪れるなんてそうそう無いので、本当に嬉しかったのかもだろうか・・・。
話を山下に戻したい。
そんな山下がなぜ、海上幕僚長に昇らないと予想している論客がいるのか。
詳細をご紹介してはキリがないので、やや荒っぽくまとめるが、要するに
「優秀過ぎて”軍事組織”のトップとしてはふさわしくない」
と言うことのようだ。
実力部隊のトップがあまりにも優秀であれば、政治や事務方がしっかりとイニシアティブを執ることができず、それを恐れて山下を海幕長に昇らせないのではないか、という主張のように理解できる。
確かに、山下が余りにも優秀で仕事ができ過ぎる、と言う話は、いろいろなところで聞くことがあったので、それが理由になるかどうかはともかく、「規格外の最高幹部」ということだけは、おそらく間違いなさそうである。
また別の理由としては、香田洋二(防大16期)を引き合いに出した上での予測だ。
香田といえばかつて、山下と同様、海上幕僚長に向かって最短距離を突き進むキャリアを積み上げ、佐世保地方総監に自衛艦隊司令官も歴任した幹部だった。
しかし、最後の最後で海上幕僚長に昇ることができず、退役となった。
表向きの理由は、香田が自衛艦隊司令官在任中に発生した2007年のしらねCIC火災事故、それに2008年のあたご漁船衝突事故などの責任を取り、更迭に近い形で退役になったものとされている。
しかしこの理由は、当時事務方で絶大な力を持っていた幹部と対立したことによる人事であると、当時から今も言われ続けている。
つまり、制服組に余りにも、強く優秀なリーダーが誕生することを、これほどまでに政治家と事務方は恐れている証拠だ、という理屈だ。
正直、本当のところは全くわからないし、わかるわけがない。
ただ、一つ確実に言えることは、山下とはそれほどまでに凄い最高幹部であり、もし海上幕僚長に着任するような事があれば、非常に楽しみだということだ。
その答えは、おそらくもう出ている。
後は、その発表の時を、楽しみに待ちたい。
ところで最後にもう一つ、余談をご紹介したい。
山下については幹部学校長時代、インターネット上の動画配信サービス「10MTV」に参加し、栗田健男の「謎の反転」の理由(意思決定過程)を解説しているのが非常に興味深い。
民間企業が行っている有料の動画配信サービスになぜ山下が講師として参加しているのか、その経緯は本当に謎だが、顔出しの動画であり間違いなく本人だ。
小泉元総理大臣や岡崎久彦、葛西敬之など政財界の超大物が講師陣として名を連ねている動画サービスなので、あるいは半公営のようなものなのかもしれない。
興味があれば検索して欲しい。
そしてこの動画の中で山下は、栗田がレイテ湾に突入せずに引き返した「謎の反転」について、このまま突入し無駄死にするよりも、北上して敵を発見・殲滅することで危機的な戦況を好転しうる最後のチャンスであると考えたためとしている。
しかしこの際の栗田に与えられた任務は輸送船団の殲滅であり、現場指揮官の行動として「与えられた任務を理解していなかった」ために引き起こされた事態であるとまとめている。
なお任務を理解していなかった原因について、上官によるレクチャー不足であるのか、栗田の理解力不足であるかについては言及していない。
内容的には、小池百合子・東京都知事が愛読書として公表したことでにわかに注目された「失敗の本質-日本軍の組織論的研究-」の書中において、30年以上前に分析されている内容とそれほど大きな違いはなく、正直、新鮮味はない内容だ。
おそらくこれは山下独自の研究発表というよりも、海上自衛隊幹部学校長を経験していることから、海自の幹部学校で教えている海自の共通認識を、一般人に向けて平易に解説したものだと思われる。
しかしそれでも、海上自衛隊のいわば「公式見解」がどうなっているのか。
栗田艦隊謎の反転は、海上自衛隊の中でどのような位置づけになっているのか。
そんなことがわかるので、とても興味深いものであった。
以上、間もなく海上幕僚長に昇ることは確実であろうとされる、山下のご紹介であった。
2018年冬の将官人事を、楽しみに待ちたいと思う。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト)
◆山下万喜(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
58年3月 海上自衛隊入隊(第27期)
平成
6年1月 3等海佐
9年7月 2等海佐
10年 3月 護衛艦「せとぎり」砲雷長兼副長
11年3月 護衛艦まつゆき艦長
12年3月 海上幕僚監部運用課
14年1月 1等海佐
15年8月 海上幕僚監部防衛課業務計画班長
16年3月 海上幕僚監部防衛課防衛班長
17年8月 第3護衛隊司令
18年7月 海上幕僚監部装備体系課長
19年9月 海上幕僚監部補任課長
20年8月 海将補
20年12月 第1護衛隊群司令
22年8月 潜水艦隊司令部幕僚長
23年8月 防衛大学校訓練部長
24年7月 海上幕僚監部防衛部長
26年8月 海上自衛隊幹部学校長 海将
27年8月 佐世保地方総監
28年12月 自衛艦隊司令官
31年4月 自衛艦隊司令官のポストを最後に退役
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