伊藤博幸(いとう・ひろゆき)|第36期・第36普通科連隊長

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伊藤博幸(いとう・ひろゆき)は宮城県出身の陸上自衛官。

幹部候補生学校を平成5年に卒業しているので、防衛大学校第36期もしくは36期相当の幹部ということになるが、出身種別は判明しない。

職種は機甲科だ。

 

平成31年3月(2019年3月) 第36普通科連隊長・1等陸佐

前職は東北方面総監部訓練課長であった。

なお、第36普通科連隊長としての指導方針は以下の通り

 

【統率方針】
任務の完遂

【要望事項】
即動 練磨 絆

(画像提供:陸上自衛隊第36普通科連隊公式Webサイト

2019年9月現在、第36普通科連隊長を務める伊藤だ。

第36普通科連隊は兵庫県の伊丹駐屯地に所在する部隊であり、「政経中枢師団」たる第3師団の戦闘力の要たる役割を担う。

 

なお政経中枢師団とは、東京練馬に所在し、首都圏の防衛を担う第1師団。

それに、兵庫県の千僧駐屯地に所在し、京阪神・中京圏の防衛を担う第3師団の編成であり、文字通り我が国の政治と経済の中枢を防衛する重い責任を担う。

その中核となる普通科連隊の一つ、第36普通科連隊を率いるのが伊藤ということだ。

西方を除けば、我が国で喫緊の驚異は都市部に対するテロを始めとしたNBC攻撃、すなわち核兵器(nuclear)、生物兵器(biological)、化学兵器(chemical)による攻撃であることを考えれば、第36普通科連隊と伊藤に掛かる、陸自の期待の大きさがご理解頂けるのではないだろうか。

 

なお36普通科連隊と言えば、私たち一般国民はもとより、自衛隊関係者の間でも、そろそろ風化が進んでいるであろう、忘れてはならない話がある。

それは1995年(平成7年)に発生した、未曾有の大災害となった阪神大震災を巡る、第36普通科連隊の活躍だ。

この時代、残念ながら国民の間ではまだまだ、自衛隊を「税金泥棒」と罵る”一般市民”が数多く存在し、自衛隊に対する風当たりは非常に強い世相であった。

まして、大阪や兵庫といった近畿地方の都市部では、当時から今も、有名な女性左派議員を当選させ続けているなど「反自衛隊」色の強い地域でもある。

そんな世相と地域性の状況の中において、阪神大震災で大きな被害を受けた地元の防衛警備にあたったのが、第36普連であった。

 

そして、時の第36普通科連隊長は黒川雄三・1等陸佐(当時)。

発災当時、直ちに隷下部隊に出動待機を命じた黒川であったが、発災から30分経っても1時間経っても一向に、政府から、あるいは地元自治体から災害派遣要請が自衛隊に寄せられることは無かった。

しかし震災の被害が甚大であることは明白であり、黒川はここで一つの思い切った英断を下す。

それは、自衛隊法83条3項の「近傍派遣条項」を活用し、黒川の独断で36普連を出動させると言うものであった。

 

なおこの時、発災は早朝5時46分である。

地元自治体からの災害派遣要請は午前10時頃まで自衛隊に寄せられることはなかった。

そして、黒川が部隊を動かしたのは実に午前7時30分であった。

 

阪神大震災において、その犠牲となった6400名以上の方の死因を、ご存知だろうか。

実に、80~90%のお亡くなりになった方の死因が、建物の倒壊などによる圧死であった。

そのため、もっと早く地元自治体や政府から災派(災害派遣)要請が出されていれば、おそらくさらに多くの人命を救えたはずだ。

黒川の英断がどれほど優れたものであったのか。

また36普通科連隊の活躍がどれほどすばらしいものであったのか。

おわかり頂けるのではないだろうか。

 

あれから20年以上の時が経過し、数多くの自然災害と自衛隊による災派を経験した私たちだが、この時の黒川と36普通科連隊の活躍を、決して忘れてはならない。

反自衛隊色の強い世相においては、いくら自衛隊法83条3項に明記されている「近傍派遣」を援用したと言ったところで、「独断で部隊を動かした」とメディアから糾弾されれば、黒川は職を失う可能性すらあっただろう。

 

それは、1976年6月に発生した「ベレンコ中尉亡命事件」の際に見られた、自衛隊に対する時の政権・三木武夫内閣の対応から考えても極めて現実的な可能性であった。

にも関わらず、黒川は「指揮官として何をすべきか」に徹した。

この誇りある決断と行動に、ぜひ改めて想いを馳せて欲しい。

 

そして今も当時と変わらず、ここ第36普通科連隊で連隊長に着任するものは皆、黒川に勝るとも劣らない責任感の強い幹部ばかりだ。

その第29代に着任したのが伊藤であり、ぜひ、この誇りある部隊を率いる指揮官の活躍に注目して欲しいと願っている。

 

では、そんな36普連を率いる伊藤とは、これまでどのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。

少し詳細に、その経歴を見ていきたい。

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