福田和彦(ふくだ・かずひこ)は昭和38年7月生まれ、鹿児島県出身の陸上自衛官。
防衛大学校第30期の卒業で幹候67期、出身職種は会計だ。
令和2年8月(2020年8月) 陸上自衛隊補給統制本部副本部長・陸将補のポストを最後に、誇りある自衛官人生を全うされご退役された。
前職は関西補給処長兼宇治駐屯地司令であった。
(画像提供:陸上自衛隊宇治駐屯地公式Webサイト)
(画像提供:陸上自衛隊宇治駐屯地公式Webサイト)
2020年8月、長きに渡り文字通り「縁の下」から国防を支え続けた自衛官が一人、静かに自衛隊を去った。
陸上自衛隊補給統制本部副本部長・陸将補として誇りある自衛官生活を全うされた、福田和彦(第30期)・陸将補だ。
明治建軍以来、優秀な将官を輩出し続けた鹿児島出身らしいお顔。
西郷隆盛を思わせる太い眉が印象的な、それでいて決して表に出てくることはない、後方支援職種の幹部として活躍し続けた自衛官人生であった。
後方支援職種出身の自衛官の場合、幹部であっても、時には将官に昇っても、ほとんど表に出てくることがない。
やはりどうしても、各地の記念行事などでは戦闘職種が人気であり、またわかりやすさもあって陸自の広報は、戦車や空挺を通じ国民への情報発信を行うのが常だからだ。
近年でこそ、災害の多発やそれに伴う自衛隊の活躍もあり、ようやく後方支援職種にも注目が集まり始めているが、それでもまだまだ、その活躍が実際に知られる機会は少ないのではないだろうか。
その上で今、後方支援職種はかつてないほどに、その重要性を増してきている。
2017年から始まった陸自大改革と、それに伴う組織変更、戦術思想の転換に伴うものだ。
詳細は省略するが、今の陸上自衛隊は重火力を中心にどんどん規模が削減されている。
そして戦力を集中させ、その上で機動力を向上させる機動戦闘型の組織へと大きく変貌を遂げつつあるが、この戦闘思想で重要になるのは、言うまでもなく後方支援職種となる。
例えば隊員輸送一つとっても、輸送能力を伴わない機動戦闘など実現不可能であることは論をまたない。
部隊そのものの運搬すら速やかにできないのであれば、戦力の集中もなにもあったものではない。
そして、任意の地点に任意の部隊を送り込めるということは、その移動に伴う各種装備や資材も任意に移動する能力が求められるということでもある。
そうでなければ、戦闘部隊は3日と戦うことはできないだろう。
そしてそのような兵站・後方支援の幹部として活躍し、またまさにその指揮官である関西補給処長を務めたのが、福田の前職。
さらに退役ポストとなった陸上自衛隊補給統制本部副本部長は、全国に5つある補給処を文字通り統制し、機能させることに責任を持つ部署であった。
このように、陸自大改革を裏から支え、そして戦闘思想に命を吹き込むのが、福田の役割であった。
決して目立つことがない部署であり、役割であったが、ぜひ今は、一人でも多くの読者の皆様に、そんな福田の誇りある自衛官人生に思いを馳せてもらいたいと願っている。
福田陸将補、本当に長い間お疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。
今はまず、ごゆっくりとお過ごしになって積年の疲れをお癒やし下さい。
そしてまた、新たに始まる第二の人生に向け英気を養われてご活躍されることを、心からお祈り申し上げております。
長い間、本当にお疲れさまでした。
ありがとうございました。
(2020年10月7日 最終更新)
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以下は、在職時に更新していた記事のアーカイブです
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2019年3月現在、我が国の兵站の中枢である陸上自衛隊補給統制本部で、副本部長の要職にある福田だ。
東京都の十条駐屯地に位置するが、この十条には他に海上自衛隊の補給本部、航空自衛隊の補給本部も設置されており、文字通り我が国の補給を支える、国防の心臓部とも言える最重要防衛拠点の一つである。
なお補給統制本部は、全国の補給処を文字通り統制しその業務をサポートするが、組織としての上下関係にはない。
あくまでも、全国に5るある補給処、すなわち北海道補給処(北海道恵庭市)、東北補給処(宮城県仙台市)、関東補給処(茨城県土浦市)、関西補給処(京都府宇治市)、九州補給処(佐賀県吉野ヶ里町)の上級組織は各地の方面隊であり、方面総監の指揮命令系統に属するので注意して欲しい。
おそらくこれは、平時の兵站業務は中央と連携し、事実上その指揮を受けながら進めても問題はないが、有事の際の兵站はまさに用兵そのものであり、全軍を統率する方面総監が握るべきという考えなのではないだろうか。
先の大戦を例に出すまでもなく、兵站とは軍事力そのものであり、兵站が破られるとすなわち国が破られるのは明らかだ。
どれほどに第1空挺団が精強であろうとも、メシがなければ3日も戦えない。
弾薬が届かなければ、100発100中の銃の名手でもただ黙って身を隠すしか為す術はない。
その意味では、決して目立つことはないが、福田を始めとしたこの職種に責任を持つ幹部曹士の働きこそ、我が国が精強であり続けられるかどうかの、根源であると言えるだろう。
自衛隊ファンでなくとも、もっとも注目すべき重要な仕事をこなす隊員たちである。
ところで上記の全国の5つの補給処について。
北海道、東北、関東、関西、九州の5ヶ所体制になっているが、何か疑問に思うことはないだろうか。
明らかに、絶対に必要な場所に一つ、足りていない。
それは、沖縄の補給処だ。
ご存知のように、我が国は2019年現在、南西方面島嶼部にこそもっとも現実的な驚異を抱えている。
尖閣周辺で有事が発生すれば、必然的に宮古島や石垣島も、これら島嶼部への橋頭堡として機能することを阻止するべく、中国人民解放軍は攻撃を仕掛けてくるだろう。
これは、これら島々に基地があるからではない。
尖閣周辺で反撃の拠点になる、もっとも近い島だからだ。
武装した部隊がいなければ速やかに侵攻し占領。
武装した部隊が入れば攻撃を加えた後に侵攻し占領するだけである。
ましてこれら有人島には、中国人民解放軍が最も恐れる、12式地対艦ミサイルを運用する陸上自衛隊の部隊が配備される予定だ。
であれば、南西方面島嶼部の防衛とはすなわち、沖縄本島を含めた全ての島々を防衛する構想をもって、対応しなければならない。
にも関わらず、有事の際の物資は九州補給処(佐賀県吉野ヶ里町)から送るだけで足りるだろうか。
少なくとも沖縄本島と各地の離島に、相当程度の弾薬と各種物資をプールし、また速やかに近隣から補給できる体制を整えるべきだろう。
ただでさえ、我が国の防衛構想は軽武装の自衛隊による初期戦闘、それに加えて日米同盟による米軍のバックアップという戦略から成り立っている。
にも関わらず、初期戦闘を継戦する能力にすら十分な補給能力がないのであれば、戦略が根本から破綻するというものだ。
繰り返しになるが、補給とは国防能力そのものであり、どれだけ鍛え上げた隊員でも、メシがなければ3日で立つことすらできなくなる。
燃料が尽きれば、12式地対艦ミサイルを運搬する車両も車庫から出ることすらできない。
そういった意味では、早期に沖縄にも補給処を設置し、国防体制を拡充してもって抑止力の向上に務めるべきではないだろうか。
このような課題を抱える中、それら補給能力を全国的に統制する補給統制本部の副本部長に着任した福田にかかる責任は極めて重く、国民からの期待も非常に大きい。
では、そんな要職中の要職である補給統制本部の副本部長を務める福田とは、これまでどのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。
少し詳細に、その経歴を見ていきたい。
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その福田が陸上自衛隊に入隊したのは昭和61年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成17年1月だったので、30期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。
陸将補に昇ったのが26年3月だったので、9年に渡り1佐で現場責任者を歴任し、堂々の将官昇任を果たしたということになる。
(画像提供:陸上自衛隊宇治駐屯地公式Webサイト)
1佐以降の経歴でみると、中央(陸上幕僚監部)での活躍が目立ち、班長ポストは運用支援課の企画班長と厚生課給与室長(人事計画課給与室長)で、課長ポストは会計課長でそれぞれ歴任。
また少し変わったとことで、統合幕僚監部では報道官も務めた。
その間、職種部隊や職種ポストでは中央会計隊長に加え関西補給処長の要職も歴任。
スタッフや幕僚ポストでは、幹部学校教官、東北方面総監部の人事部長も経験した。
そして平成30年8月から陸上自衛隊補給統制本部副本部長に着任し、我が国の兵站の中枢でその知見の全てを活かし、日本と世界の平和のために尽力をしている。
後方支援の現場に精通した、日本の生命線を守り抜くにふさわしいキャリアを誇る最高幹部であると言ってよいだろう。
では最後に、その福田と同期である30期組の人事の動向について見てみたい。
30期組は、既に1選抜の陸将が出揃っており、同期の陸上幕僚長候補という意味では絞り込みが終わっている状況だ。
そして2019年3月現在、その候補者たる30期組の陸将にある幹部は、以下の通りになっている。
髙田祐一(第30期)・富士学校長(普通科出身・2017年8月)
小野塚貴之(第30期)・陸上幕僚副長(施設課出身・2017年8月)
野澤真(第30期)・第2師団長(野戦特科出身・2017年8月)
吉田圭秀(第30期相当)・第8師団長(普通科出身・2017年8月)
田中重伸(第30期)・第3師団長(航空科出身・2017年12月)
※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は陸将昇任時期。
以上のようになっており、30期組は髙田、野澤、小野塚、吉田の4名が、極めて近い将来の陸幕長候補と言うことになるだろう。
中でもおそらく、大本命として陸自内外から期待を集めているのは、おそらく高田であろうと予想している。
次の次の陸上幕僚長候補として、内局はもちろん、政治家サイドでも強く意識されている存在ではないだろうか。
福田については、後方支援系の最高幹部として既にあらゆる要職を歴任し、これ以上の上のポストとなったら補給統制本部長くらいしか残されていない状況だ。
しかし補給統制本部長は関東補給処長から着任することが最近の傾向であり、なかなか考えられない異動であるかも知れない。
そういった意味では、あるいは現職が長かった自衛官生活の最後のポストになる可能性もあるのではないだろうか。
いずれにせよ、我が国の兵站の中枢にあり、1日たりとも気を抜くことができないポジションで心身ともに過酷な任務をこなす福田である。
その活躍にはますます注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊宇治駐屯地公式Webサイト)
◆福田和彦(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
61年3月 陸上自衛隊入隊(第30期)
平成
9年1月 3等陸佐
12年7月 2等陸佐
16年3月 陸上幕僚監部教育訓練課
17年1月 1等陸佐
17年8月 幹部学校付
18年8月 幹部学校教官
18年12月 陸上幕僚監部運用支援課企画班長
20年8月 陸上幕僚監部厚生課給与室長
21年3月 陸上幕僚監部人事計画課給与室長
22年7月 東北方面総監部人事部長
23年8月 陸上幕僚監部会計課長
26年3月 陸上自衛隊中央会計隊長 陸将補
27年8月 統合幕僚監部報道官
28年7月 関西補給処長
30年8月 陸上自衛隊補給統制本部副本部長
令和
2年8月 陸上自衛隊補給統制本部副本部長・陸将補のポストを最後にご勇退
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