櫻井真啓|第37期相当・海上自衛隊

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櫻井真啓(桜井真啓)は昭和46年2月14日生まれ、大阪府出身の海上自衛官。

龍谷大学文学部を平成5年に卒業し海上自衛隊に入隊しているので、幹候44期・防衛大学校第37期相当の幹部ということになる。

 

平成29年12月(2017年12月) 第1掃海隊司令・1等海佐

前職は内閣官房国家安全保障局企画官であった。

 

2018年4月現在、第1掃海隊司令を務める櫻井だ。

一般に、防衛大学校卒業生に比べ昇任が不利とされる一般大学卒業生であり、なおかつ理系が重んじられるとされる自衛官の世界において、文学部の卒業でありながら要職を歴任し続ける幹部だ。

任官以降、現場においては乙型護衛艦あるいはミサイル護衛艦で指揮を執り、そのキャリアの延長で掃海隊を預かる。

 

また、陸勤務では平成23年から3年間、防衛駐在官として中国に赴いていたキャリアがやはり印象的な補職だ。

平成23年(2011年)といえば、尖閣諸島の国有化に伴い中国の我が国に対する領土的野心のこじつけと蛮行が激化し、両国間の大きな問題となっていた時期だ。

そしてその問題は今も大きく尾を引き、陸海空全戦力の南西シフトが加速する大きな要因となっているが、櫻井が中国に赴いたのはまさにそのもっとも大変な時期である。

 

防衛駐在官の果すべき大きな役割の一つに、軍人外交を展開し武官同士で交流をすることで、文官或いは政治家同士の交流ではなし得ない両国間の安定に尽くすことがある。

そしてまさにこの時期、武官同士の交流でどこまでが限界ラインなのか、お互いの腹を探り合う動きがあったであろうことは想像に難くない。

そのような困難な状況の中で3年間の任務をこなした櫻井だが、帰国すると海幕の情報課情報班長に着任し、さらにその後職では内閣官房国家安全保障局企画官に着任することになった。

 

なお、この内閣官房国家安全保障局だが、日本版NSCと呼ばれる国家安全保障会議を実務的に担う部署であり、いわば我が国の安全保障に係る最高意思決定機関に対し、その判断材料を提供する部署にあたる。

櫻井が防衛駐在官として得た知見がいかに我が国の安全保障政策にとって重要なものであり、そして広く、世界の平和と安定に欠かせないものであったのかを物語る補職であったと言えるだろう。

 

そしてこれら7年に及ぶ陸勤務を経て2017年12月、久しぶりに掃海隊の現場に戻り、第1掃海隊司令に着任し指揮を執ることになった。

 

 

さて、その第1掃海隊である。

一般に掃海艇部隊といえば、第二次世界大戦時の不発機雷の処理や、もしくは国際貢献活動における非戦闘地帯での、遺棄された機雷を処理することが任務というイメージを持つ人が多いかも知れない。

しかし我が国の、第1掃海隊を含む掃海隊群は、2016年に護衛隊群から第1輸送隊をその隷下に収めることで、その任務に極めて大きな役割が加わった。

即ち、水陸両用戦の支援任務だ。

第1輸送隊は、輸送隊という穏やかな名前とは似つかわしくないほどに、その実務は強襲揚陸部隊となっている。

そして、主力戦車も運搬可能な第1エアクッション艇隊を運用して、戦闘の最前線に戦闘部隊を送り込む役割を担う。

いわば、最前線に立つ部隊である。

 

ではなぜ、その殴り込み部隊を支援する役割を掃海隊群が担うのか。

それは我が国の離島が 中国人民解放軍 どこかの国に不法占拠され、守備隊によって防備が固められた際、周辺海域には機雷を含めた防衛体制が惹かれ、海上ルートが閉ざされる可能性が高いことによる。

このような際に、航路啓開の任に当たり、海上から実力部隊を送り込むことができるのは掃海隊群だけだ。

そしてその主力である、櫻井が率いる第1掃海隊には、深々度における高い機雷排除能力を持つ掃海艦「あわじ」に加え、沿岸域での高い機雷排除能力を誇る掃海艇「はつしま」がある。

つまり、浅い海域でも深い海域においても、高い航路啓開能力を有するということだ。

そしてその2艇を支援する掃海母艦「うらが」には、優れた掃海艇支援能力に加え、機雷敷設能力も備わっており、いわば「やられたことはやり返す」実力も備えている。

このような部隊が第1輸送隊を隷下におさめ、有事の際に殴り込みを支援することになるのは、必然であると言えるだろう。

 

今回の人事はいわば、東アジアにおける危機的な安全保障環境の現状を知り尽くす櫻井が、その安全保障の最前線において、再び指揮を執ることになったものだ。

そして櫻井には、乙型護衛艦やミサイル護衛艦の経験が豊富なことも考え併せると、掃海隊の指揮官としてこれ以上に頼もしい幹部はいないだろう。

その活躍からは今後も目を離さずに注目し、そして応援していきたい。

 

◆櫻井真啓(海上自衛隊) 主要経歴

5年3月 海上自衛隊入隊(第37期相当)
7年 月 「ゆうべつ」船務士(大湊)
8年 月 「あさかぜ」ミサイル士(横須賀)
9年 月 「しまかぜ」応急長(舞鶴)
10年 月 「ゆうばり」航海長(大湊)
11年 月 佐世保地方総監部副官(佐世保)
14年 月 「ゆげしま」艇長(呉)
17年 月 統合幕僚監会議事務局第3幕僚室
18年 月 統合幕僚監部運用第1課総括班
20年 月 第46掃海隊司令(沖縄)
23年 月 在中国日本国大使館防衛駐在官
26年 月 海上幕僚監部情報課情報班長
27年 月 内閣官房国家安全保障局企画官
29年12月 第1掃海隊司令

 

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省海上自衛隊 第1掃海隊公式Webサイト(プロフィール画像など)

http://www.mod.go.jp/msdf/mf/other/butai/hp/1md/np2.html

http://www.mod.go.jp/msdf/mf/other/butai/hp/1md/htu.html

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