東京都出身で早稲田大学の学生であった海軍大尉・市島保男 命は神風特別攻撃隊第五昭和隊の一員として出撃。
昭和20年4月29日、昭和天皇の誕生日に沖縄県東南方面の海上にて敵艦めがけて特別攻撃を敢行し、戦死した。
享年わずか23歳であった。
出撃命令を待つ前夜、仲間とともに過ごしていた時の様子を遺書に残している。
美しく生き抜けた
ただ命を待つだけの軽い気持ちである。
隣の室で「誰か故郷を想はざる」をオルガンで弾いてゐる者がある。
平和な南国の雰囲気である。
徒然なるまゝにれんげ摘みに出かけたが、今は捧げる人もなし。
梨の花とともに包み、僅かに思ひ出をしのぶ。
夕闇の中を入浴に行く。
隣の室では酒を飲んで騒いでゐるが、それもまたよし。
俺は死するまで静かな気持ちでゐたい。
人間は死するまで精進しつゝ゛けるべきだ。
ましてや大和魂を代表するわれわれ特攻隊員である。
その名に恥ぢない行動を最後まで堅持したい。
俺は、自己の人生は、人間が歩み得る最も美しい道の一つを歩んできたと信じてゐる。
精神も肉体も父母から受けたままで美しく生き抜けたのは、神の大いなる愛と私を囲んでゐた人々の美しい愛情のおかげであつた。
今かぎりなく美しい祖国に、わが清き生命を捧げ得ることに大きな誇りと喜びを感ずる。
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