その高島が海上自衛隊に入隊したのは昭和59年3月。
1等海佐に昇ったのは平成15年1月であったので、28期組1選抜(1番乗り)のスピード出世だ。
海将補、海将に昇ったのはそれぞれ22年12月、29年12月であり、海将昇任後、最初のポストとして潜水艦隊司令官に着任している。
(画像提供:海上自衛隊公式ツイッター)
(画像提供:防衛省統合幕僚学校公式Webサイト)
その高島が艦長ポストを務めたのは、平成13年6月からの「なつしお」。
1991年から2011年まで活躍したはるしお型潜水艦の2番艦で、高島はこの艦長時代になつしおを率いて、「きりしま」「はまぎり」「むらさめ」「いかづち」と共にリムパック2002(環太平洋合同演習)にも参加している。
いうまでもなく、リムパックに派遣されるのは海自の中でも最高の状態にある艦とクルーであり、高島はその、栄誉ある派遣艦の艦長であった。
その後、第1潜水隊司令、第2潜水隊群司令と、潜水艦隊の指揮官として順調にステップを昇り、平成24年7月には舞鶴地方総監部の幕僚長に、25年8月には阪神基地隊の司令も務めた。
その間、中央(海上幕僚監部・統合幕僚監部)では、班長ポストを海幕防衛部運用課の運用2班で。
課長ポストは統合幕僚監部防衛課で、部長相当のポストは統幕の首席後方補給官と総務部長の2つを歴任している。
そして平成29年12月に海将に昇任し、潜水艦隊司令官に着任して現職で活躍をしている。
現場経験も中央での仕組みづくりにも精通した、海上自衛隊を代表する最高幹部の一人と言ってよいだろう。
なお余談だが、これは海上自衛隊に限った話ではないが、自衛隊の幹部ではやはり、指揮官職が非常な栄誉とされる。
特に将官に昇った者にとっては、やはり将官旗を掲げて部隊を率いることが最高の栄誉だ。
また部隊指揮を任された将官には着任式があり、栄誉礼をもって部隊に迎えられる。
海自では、舷門で出迎える「と列員」が海将補では6名、海将では8名など、細かなルールも定まっており、その儀式は非常に厳格で幹部曹士ともに身が引き締まる式典が執り行われることになっている。
そういった意味では、将官に昇ってからの高島は、指揮官ポストからは少し遠いところにあった。
海将補に昇って最初のポストは幹部学校の副校長。
そして統幕首席後方補給官、舞鶴地方総監部幕僚長と、スタッフとしての補職が続く。
その次に阪神基地隊司令に着任し、将官として最初の指揮官ポストに就いたが、その後職では再び中央に呼ばれ、統合幕僚監部の総務部長であった。
そんな経緯を経て、平成29年12月に海将に昇り、出身である潜水艦隊の最高のポスト、潜水艦隊司令官に着任し将官旗を掲げたのだから、きっと感慨もひとしおであろう。
前ページの冒頭で貼らして頂いている、潜水艦上に将官旗を掲げて体を乗り出す高島とそのスタッフの写真には、そのような意味がある。
長かった自衛官生活の中でも、とりわけ思い出深い補職を、高島は務めているのではないだろうか。
では最後に、その高島と同期である、28期組の動向についてみてみたい。
28期組は、既に佐官以下の全ての幹部が退役し、多くの将官も順次勇退を迎えている世代だ。
そして2019年1月現在で、海将にある最高幹部は以下の通りとなっている。
山村浩(第28期)・海上幕僚副長(27年8月)
菊地聡(第28期)・佐世保地方総監(27年12月)
佐藤直人(第28期)・防衛装備庁長官官房装備官(28年12月)
高島辰彦(第28期相当)・潜水艦隊司令官(29年12月)
※肩書はいずれも2019年1月現在。( )内は平成表記での海将昇任時期。
以上のようになっており、同期の中で海上幕僚長候補として先頭にあるのは、山村だ。
そのキャリア、実績ともに28期のエースであり、極めて有力な、近い将来の海上幕僚長候補の一人となっている。
高島については、海将に昇ったのが29年12月であることなどを考えると、あるいは現職が長かった自衛官生活の最後の補職になるのではないだろうか。
そういった意味では、先述のように栄誉礼をもって潜水艦隊司令官に着任し、厳かな離任式をもって退役の日を迎えるのは、海上自衛隊の幹部にとって最高に名誉なことだ。
一人の国民としては寂しい限りだが、その日がくれば、心からの敬意と感謝でお見送りをしたい。
とは言え、まだまだ厳しい国防を最前線で担う、要職を担い続けている高島である。
何があるかわからない国際情勢の中で、その活躍にこそまだまだ注目を続け、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:海上自衛隊自衛艦隊司令部公式Webサイト)
◆高島辰彦(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
59年3月 海上自衛隊入隊(第28期相当)
平成
7年1月 3等海佐
10年7月 2等海佐
11年3月 海上幕僚監部経理課
13年3月 潜水艦隊司令部
13年6月 なつしお艦長
14年8月 海上幕僚監部運用課
15年1月 1等海佐
16年8月 海幕防衛部運用課運用2班長
17年12月 第1潜水隊司令
19年7月 統合幕僚監部防衛課長
21年8月 第2潜水隊群司令
22年12月 海上自衛隊幹部学校副校長 海将補
23年12月 統幕首席後方補給官
24年7月 舞鶴地方総監部幕僚長
25年8月 阪神基地隊司令
26年12月 統合幕僚監部総務部長
29年12月 潜水艦隊司令官 海将
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