その楠見が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
1等陸佐に昇ったのが20年1月であったので、33期組1選抜(1番乗り)となるスピード昇任だ。
航空科出身の最高幹部であり、原隊(初任地)は札幌の丘珠駐屯地で、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切った。
(画像提供:自衛隊東京地方協力本部公式ツイッター)
1等陸佐以降の経歴でみると、職種部隊での勤務は平成20年3月から務めた、相馬原駐屯地に所在する第12ヘリコプター隊長が唯一のポストとなる。
その一方で、2010年3月まで正式に職種化されず、他の職種で幹部にあるものが兼務で運用していた情報系での活躍も目立ち、陸上幕僚監部では運用支援・情報部情報課の地域情報班長を務めた他、防衛大学校では防衛学教育学群統率・戦史教育室で室長を務めた
また先述のように、人事系でも非常に特徴的なキャリアを歩んでおり、岡山地方協力本部長、東部方面総監部人事部長、東京地方協力本部長などで要職を歴任。
異なる地本で地本長を2回経験しているというキャリアも、相当にレアで特筆するべき経歴だ。
また2等陸佐であった16年8月には、第30代陸上幕僚長であった森勉(第14期)の副官を務めるなど、こちらも特筆するべきレアなポジションを経験している。
そして30年8月、中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長に着任し、我が国の安全保障を担保するに欠かすことができない情報を一元的に管理運用する要職で手腕を発揮。
決して目立つことはないが、日本と世界の平和を護る上で非常に重要な任務に取り組んでいる。
33期のみならず、陸自を代表する最高幹部の一人と言ってよいだろう。
では最後に、その楠見と同期である33期組の人事の動向について見てみたい。
33期組は2014年に最初の陸将補が選抜され、2020年に最初の陸将が選抜される予定になっている年次だ。
そして2019年2月現在で、以下の幹部たちが陸将補の任にあたっている。
冨樫勇一(第33期)・陸上幕僚監部人事教育部長(2014年8月)
山根寿一(第33期)・第13旅団長(2014年8月)
牛嶋築(第33期)・東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(2014年8月)
末吉洋明(第33期)・陸上幕僚監部運用支援・訓練部長(2014年8月)
廣惠次郎(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2015年3月)
児玉恭幸(第33期)・陸上幕僚監部監察官(2015年8月)
梅田将(第33期相当)・大阪地方協力本部長(2015年12月)
酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地(2016年3月)
宮本久徳(第33期)・第1高射特科団長(2016年12月)
堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)
楠見晋一(第33期)・中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長(2017年8月)
更谷光二(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年3月)
※肩書はいずれも2019年2月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2018年8月以降の将官人事で昇任した陸将補の確認が未了のため、加筆する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは冨樫、山根、牛島、末吉の4名が中心になって、33期組の最高幹部人事は進んでいくことになるだろう。
楠見については、人事系および情報系で大きな実績を残し、また活躍をし続けている幹部だ。
そのため今後は、ますますその重要性が高まる情報系のポストで要職を歴任し、その存在感を高めていくことになるのではないだろうか。
笑顔が印象的な、それでいて情報幹部というおっかない顔も持つ楠見のご紹介であった。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:自衛隊東京地方協力本部公式ツイッター)
◆楠見晋一(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 陸上自衛隊入隊(第33期)
2年3月 北部方面航空隊(札幌丘珠)
9年8月 幹部学校指揮幕僚課程(目黒)
11年8月 体育学校(朝霞)
12年8月 中央業務支援隊付(市ヶ谷)
13年8月 陸上幕僚監部防衛部運用課(市ヶ谷)
16年8月 陸上幕僚長副官(市ヶ谷)
19年3月 幹部学校幹部高級課程(目黒)
19年10月 統合幕僚学校統合高級課程(目黒)
20年1月 1等陸佐
20年3月 第12ヘリコプター隊長(相馬ヶ原)
21年12月 陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課地域情報班長(市ヶ谷)
24年4月 岡山地方協力本部長(岡山)
26年3月 東部方面総監部人事部長(朝霞)
28年8月 防衛大学校防衛学教育学群統率・戦史教育室長(防大)
29年8月 東京地方協力本部長(市ヶ谷) 陸将補
30年8月 中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長
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