高橋洋二(島根地方協力本部長・1等陸佐)|第37期・陸上自衛隊

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その高橋が陸上自衛隊に入隊したのは平成5年3月。

初任地は北熊本に所在する第8特科連隊であり、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切った。

(画像提供:陸上自衛隊第2特科連隊公式Webサイト

(画像提供:防衛省防衛白書2009公式Webサイト

その後職種部隊では、健軍に所在する第5地対艦ミサイル連隊、富士に所在する富士教導団特科教導隊、北千歳に所在する第1地対艦ミサイル連隊、そして東千歳に所在する第7特科連隊などを経て、先述のように平成29年3月から、旭川の第2特科連隊長に上番。

なお地対艦ミサイル部隊と、FH-70などを運用する野砲部隊は、同じ野戦特科に属するが率直に言って全くの別物だ。

そのためこの高橋の例のように、それぞれを広く経験している幹部というのはそれほど多くない。

通常はどちらかでキャリアを積むことが多いので、これもまた高橋のキャリアの特徴の一つと言ってよいだろう。

またその間、中央では統合幕僚監部の運用第2課国際協力室、運用第2課訓練班で勤務を経験した他、各地の幕僚やスタッフのポジションでは北部方面総監部の防衛部訓練課、東部方面総監部防衛部訓練課長などでも要職を歴任している。

そして平成31年3月、自衛隊島根地方協力本部長に着任し、自衛隊と民間を繋ぐ責任者としてさらに力を尽くしている。

37期の野戦特科を代表する、非常に充実したキャリアを誇る幹部自衛官の一人と言ってよいだろう。

 

なお一つそのキャリアを深掘りすると、高橋は平成18年9月から、第22次ゴラン高原派遣輸送隊の隊長ポストも務めている。

この任務はイスラエルとシリアの停戦を監視し、兵力を引き離す国連PKOの一つであるUNDOF(国連兵力引き離し監視軍)の一環であり、我が国は1996年から2013年まで後方支援輸送隊を派遣し続けた。

高橋はこの22次隊の隊長であり、幸いにして任期中「武器使用を考えなければいけない場面はなかった」と高橋自ら後日振り返ったように、任務に集中して大きな成果を挙げることができ、部下の隊員とともに無事帰国を果たしている。

 

またこの任務を完遂すると、次に統幕の運用第2課国際協力室に異動となり、2佐に昇任。

PKO任務で得た経験を広く共有し、国際貢献を担う任務にあたることになった。

このポストで高橋は、平成20年11月から派遣されたエジプト政府が主催する、アフリカ紛争解決・平和維持カイロ地域訓練センターへの派遣という極めて重要な任務を経験している。

同センターは、紛争が絶えないアフリカ地域での国連PKO要員を育てる事を目的とした教育機関だが、自衛官がPKO教官として海外に派遣されるのは、実に高橋が史上初であった。

そして高橋はこの時、ゴラン高原での経験を踏まえ、現地住民との関係構築方法について講義を行い、併せてアフリカ諸国10カ国の軍人、警察官、外交官ら30名余りを相手に様々な講義を行っている。

ちなみに上記写真2枚めは、その時の高橋の画像である。

周囲から熱心に知見を求められる様子がよく分かるが、これらもまた、国民一般にほとんど知られていない自衛官の活躍であり、世界の平和に貢献する誇らしい活動だ。

ぜひ、高橋のように具体的に、世界平和に貢献する自衛官が多くいることも、知ってもらいたいと願っている。

 

では最後に、その高橋と同期である37期組の人事の動向について見てみたい・・・。

ところなのだが、37期組は2018年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜されたばかりの年次だ。

そのため、この際に陸将補に昇任した幹部を見ると白川訓通(第37期)、田浦尚之(第37期)の両名が37期であることは確認できているものの、後の2名がまだ確認できていない。

おそらく、前職や過去のキャリア、着任時期から考えて、2018年8月に昇任した前島政樹と上野和士の2名も37期ではないかと推測をしているものの、断定はできない。

このあたりは、また判明次第追記していきたい。

 

いずれにせよ、高橋を含む37期組は、これから2020年代後半にかけて、我が国の平和を担う中心になっていく世代である。

その活躍には要注目であり、今後とも変わらず、応援をしていきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊第2特科連隊公式Webサイト

◆高橋洋二(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
5年3月 陸上自衛隊入隊(第37期)
年 月 第8特科連隊(北熊本)
年 月 第5地対艦ミサイル連隊(健軍)
年 月 富士教導団特科教導隊(富士)
年 月 第1地対艦ミサイル連隊(北千歳)
年 月 第11師団司令部(真駒内)
18年9月 第22次ゴラン高原派遣輸送隊長
年 月 統幕運用第2課国際協力室(市ヶ谷)
年 月 第7特科連隊(東千歳)
年 月 統幕運用第2課訓練班(市ヶ谷)
年 月 北方総監部防衛部訓練課(札幌)
26年1月 1等陸佐
26年3月 陸上自衛隊幹部学校(目黒)
27年3月 東方総監部防衛部訓練課長(朝霞)
29年3月 第2特科連隊長
31年3月 自衛隊島根地方協力本部長

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