2019年8月、海上自衛隊・海将人事が発令された。
海上自衛隊では4月に、統合幕僚長であった河野克俊(第21期)、海上幕僚長であった村川豊(第25期)が勇退となり、新しい海上幕僚長に山村浩(第28期)が着任したばかりだ。
自衛艦隊司令官、護衛艦隊司令官も交代になるなど、最高幹部の異動が固まったために、やや小規模な異動にとどまっている印象がある。
なおそんな中で、注目すべきはやはり伊藤弘(第32期)の、1選抜(1番乗り)での海将昇任だろうか。
伊藤は前職では、国家安全保障局担当の内閣審議官として内閣府に出向していたが、このポストはいわゆる日本版NSCを実務で支えるポストである。
海上自衛隊を代表し、我が国の防衛政策と緊急時の対応に、武官の立場から国家の意思表示をすると言っても良いポジションであり、極めて重要な要職を担った。
そのポストを終えて今回、海将に昇任し補給本部長に着任したわけだが、過去にはCTF-151(第151合同任務部隊)の指揮官を務めていたキャリアを誇る。
また若き2等海佐の時代には、イラク戦争のタイミングで米中央軍の連絡官として半年間、米国フロリダ州タンパに赴くなど、世界の安全保障環境にも精通した最高幹部でもある。
今後さらに、重い責任を担っていくことになるのは確実だが、海将昇任後の最初のポストは補給本部長となった。
やや意外な感じもするが、補給本部は戦力の集中と機動運用の関係で、3自衛隊ともその存在感がますます大きくなっている組織だ。
そういった意味では、近い将来の海上幕僚長候補として経験しておくべき要職であったのは間違いないのではないだろうか。
なお例によって、アイキャッチ画像の美しい女性は、将官人事とは何の関係もない。
今まさに、アフリカソマリア沖で、派遣海賊対処行動水上部隊(DSPE)の任務にあたっている護衛艦「あさぎり」の女性クルーの、休息の一コマである。
当ブログでは何度もお伝えしているが、DSPEは我が国の国益に直結する非常に重要な任務だ。
この任務が無ければ、我が国の海上交易は直ちにマヒし、国内経済は大混乱に陥るだろう。
ぜひ時々でも良いので、遠く離れたアフリカの地で、我が国の国益を守るために戦っている自衛隊の幹部曹士がいることにも、どうか思いを馳せて欲しい。
その他、人事異動の詳細な内容は以下の通り。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:防衛省統合幕僚監部公式ツイッター)
佐世保地方総監を命ずる
(舞鶴地方総監)
海将 中尾剛久
舞鶴地方総監を命ずる
(海上自衛隊補給本部長)
海将 大島孝二
海将補の兼任を解除する
(内閣事務官兼海将補)
伊藤弘
海将に任命する 海上自衛隊補給本部長を命ずる
(内閣事務官)
伊藤弘
退職を承認する
(佐世保地方総監)
海将 菊地聡
(以上、2019年8月23日付)
防衛省発表資料
https://www.mod.go.jp/j/press/jinji/2019/0808c.pdf
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