【退役】河本宏章(補給統制本部副本部長・陸将補)|第28期・陸上自衛隊

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一方で、1等陸佐以降のキャリアでは、その多方面に渡る能力の高さが窺える、非常に多彩なポストを歴任していることが印象的だ。

陸幕の要職だけでも、情報部(運用支援・情報部)企画班長、防衛部防衛課防衛調整官、監理部総務課長と、3つの部署を渡り歩き要職を歴任。

技術系のポストでは研究本部の主任研究開発官を任されたかと思えば、防衛大学校では統率・戦史教育室長にも着任するなど、非常に広い守備範囲の補職で活躍する。

 

さらに興味深いのは、平成18年12月から1年半に渡り、和歌山地方協力本部長も務めていることだ。

地本長の仕事は、高級幹部にとって唯一、「営業活動」が必要なポストと言って良い。

自衛隊だけでなく世間の常識に通じていることはもちろん、高いコミュニケーション能力と優れた知見、そして何よりも人を惹き付ける人間的魅力が要求されるポストである。

これだけ幅広い分野に能力の高さを発揮しながら、なおかつ高い人間力も兼ね備えているというのは、いくらエリートといえ、余りにも出来過ぎというものである。

 


(画像提供:陸上自衛隊西部方面隊公式Webサイト

さて、そんな河本が陸将補に昇ったのは平成24年8月。

西部方面総監部幕僚副長、装備庁調達事業部調達総括官を経て補給統制本部副本部長に着任したが、やはり印象深いのは、西部方面総監部時代の配置であろうか。

上記の画像は当時の一コマだが、米軍将校の名前を省略させてもらうと、左端が河本であり、その2人右側が金丸章彦(第27期)・西部方面総監部幕僚長(当時)。

その2人右側の陸将が西部方面総監(当時)の番匠幸一郎(第24期)であり、その2人右側が吉田圭秀(第30期相当)・西部方面総監部幕僚副長(当時)だ。

 

番匠幸一郎は当時、次期陸上幕僚長間違い無しと言われ、西部方面隊隷下に「日本版海兵隊」を創設するべく尽力をした、我が国の安全保障政策上で歴史に残る名将である。

 

金丸章彦はCRF(中央即応集団)隷下の第1ヘリコプター団長を務めた程の男で、あの福島原発爆発事故に於いて、ヘリから散水を行う作戦の指揮を執った。

西部方面隊に海兵隊を創設するにあたり、これ以上はない幕僚長であったはずだ。

 

吉田圭秀は東大出身の英才であり、普通科連隊の厳しい現場を歴任しながらも、中央では外務省や政治とも密接な協力関係を築き、抜群の政治力を兼ね備えるに至った将官である。

様々な無理の調整には、打ってつけの幕僚副長であっただろう。

 

そして、技術系の知見に優れ、オールラウンダーの河本である。

幕僚副長として、組織全体の足らざるところを補うにはこれ以上無い将官であり、まさに驚くほど、この頃の西部方面総監部はタレントのバランスが良く、最強の布陣であったと言えるのではないだろうか。

 

なおその後、番匠は誰からも陸幕長着任が確実視されている中で、西部方面総監を最後にまさかの退役。

金丸は2017年12月現在で補給統制本部長を務め、補給統制本部副本部長を務める河本とはまた、上司と部下の関係になり良いコンビで力を発揮している。

吉田は、日本版NSC(国家安全保障会議)を支える内閣官房国家安全保障局の内閣審議官を務めるなど活躍した後、第8師団長に昇った。

2017年12月現在、第30期の陸幕長候補として最終レースに残っている状況である。

 

上記の画像は、まさに陸自のスーパーエリートたちが集まった1枚であり、当時の西部方面隊の充実ぶりを示すものだが、それだけこのホットスポットに対する我が国の危機感は極めて強いと言うことだ。

そして2017年12月現在、我が国のスーパーエリートたちはますます、西部方面隊に集まってきている。

傍若無人なならず者国家の野望は、この最高幹部とその隷下幹部曹士たちが必ず抑止力を効かせ、我が国の平和を守ってくれるだろう。

 

なお、河本が属する29期組については既に陸上幕僚長候補が出揃っているので、河本がそのレースに参加することはない。

全軍を俯瞰するのではなく、技術系の知見で組織を支援しその強みを発揮する将官なので、違和感のない人事だが、その知見はもちろん我が国の平和と安全に不可欠な存在である。

 

補給統制本部副本部長の次はどのような活躍を見せてくれるのか。

その動向もしっかりと追いながら、応援していきたい。

 


(画像提供:防衛省九州防衛局公式Webサイト

◆河本宏章(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
59年3月 陸上自衛隊入隊(第28期)

平成
7年1月 3等陸佐
10年7月 2等陸佐
15年1月 1等陸佐
16年3月 幹部学校付
17年3月 陸上幕僚監部情報部調査課企画班長
18年3月 陸上幕僚監部運用支援・情報部運用支援課企画班長
18年12月 和歌山地方協力本部長
20年8月 研究本部主任研究開発官
20年12月 陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛調整官
21年3月 陸上幕僚監部監理部総務課長
22年7月 防衛大学校統率・戦史教育室長
24年8月 第10師団副師団長 陸将補
25年12月 西部方面総監部幕僚副長
27年12月 防衛装備庁調達事業部調達総括官
28年12月 補給統制本部副本部長
30年8月 補給統制本部副本部長のポストを最後に勇退

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