引田淳(ひきた・あつし)|第31期・航空自衛隊

Pocket

引田淳は昭和38年4月生まれ、愛知県出身の航空自衛官。

防衛大学校第31期の卒業で87幹候、出身職種は飛行だ。

 

平成29年9月(2017年9月) 西部航空方面隊副司令官・空将補

前職は飛行開発実験団司令であった。

 

航空自衛隊第31期組スーパーエリートの一人である引田だ。

某公共放送のかつての番組に依ると、本当か嘘か、訓練生時代に航空機からの脱出が得意であったことから、TACネームがTenko(引田天功)になったというエピソードがある。

非常に充実したキャリアを誇り、31期組の中でも極めて大きな存在感を感じさせる最高幹部だ。

 

その引田が2018年2月現在で務めるのは、西部航空方面隊副司令官。

この補職で空将補として4つ目のポストとなるが、南西航空方面隊と並び航空自衛隊の最前線であり、緊迫する東アジア情勢に対応する西部航空方面隊の要職は、エリートの指定席だ。

前職では飛行開発実験団司令を務め、航空機や航空機搭載ミサイル、その他装備品の試験や基本運用を行い、そのデータを取得して現場にフィードバックするなど、極めて重要な役割を果たした。

 

なお上記の画像は、引田が在日本米国国防武官であるジェームズ・オリアリー海軍大佐から、Legion of Merit / Degree of Officer(勲功章)を贈呈された際のものである。

この勲功章は、特に困難な任務において特別な功績を挙げた軍人に送られるものであり、引田はその米国防衛駐在官時代の活躍を特に評価され、受章が決まったものだ。

引田は自衛官の華である防衛駐在官の中でも、エリート中のエリートの指定席である米国防衛駐在官を平成23年6月から務めており、その際の活躍が際立っていたことを評価されたことになる。

自衛隊の最高幹部に求められる米国通であるということと併せ、引田の自衛官生活の中でも大きなインパクトのある補職になったのではないだろうか。

 

 

さて、その引田のキャリアと、31期同期の人事の状況についても見てみたい。

引田が航空自衛隊に入隊したのは昭和62年3月。

1等空佐に昇ったのが平成18年1月なので、31期組1選抜(1番乗り)のスピード出世だ。

さらに空将補に昇ったのは平成23年6月。

31期組であれば、どれほど早くとも最初に空将補に昇るのは平成24年夏の将官人事のはずなので、同期1選抜に比べ実に1年以上も早く、空将補に昇ったことになる。

 

なおいつもの話だが、これは引田が規格外に優秀な幹部であったことによる特別措置・・・ではもちろんない。

陸空の幹部は、外務省に出向し在外日本大使館に防衛駐在官として赴任する際、その任期中に昇任が見込まれる幹部は、予め昇任させてから出向させる人事の慣例がある。

これがどのようなルールに依るものかは定かではないが、多くの陸空自衛官が、防衛駐在官として海外に赴任する際に取られている措置なので、そのような運用になっているのは間違いないようである。

 

なお、引田と同じ31期組の航空自衛隊で、2018年2月現在で空将補に在るものは以下の通りだ。

31期組は、2018年夏の将官人事で最初の空将が選抜される年次にあたるので、空将補に在るものが最高位となる。

そのため、31期組のスーパーエリート名簿と言って良いだろう。

 

引田淳(第31期)・西部航空方面隊副司令官(2011年6月)

内倉浩昭(第31期)・航空幕僚監部防衛部長(2012年7月)

森川龍介(第31期)・航空教育集団幕僚長(2012年7月)

荒木哲哉(第31期)・航空幕僚監部総務部長(2013年8月)

西谷浩一(第31期)・防衛監察本部監察官(2013年8月)

後藤雅人(第31期)・第4術科学校長(2013年12月)

秋山圭太郎(第31期)・第5術科学校長(2016年7月)

石村尚久(第31期)・第4術科学校長(2017年12月)

※肩書はいずれも2018年2月現在。( )内は空将補昇任時期

 

上記のような状況になっており、この中から、2018年夏の将官人事で、最初の空将が選ばれることになる。

なお、海空自衛隊では1選抜で空将補に昇ることが必ずしも空幕長レースでアドバンテージを握ることを意味しておらず、1選抜空将に選ばれる者も、空将補昇任時期だけで予想することはできない。

上記の中では、2011年6月に空将補に昇任した引田から、2013年8月に昇任した西谷あたりまでは、2018年中に誰が空将に昇っても全くおかしくない状況だ。

 

引田についても、おそらく近い将来に空将に昇任し、いずれかの航空方面隊司令官に着任するなど、さらに活躍の場を広げることは間違いないだろう。

米国通のトップエリートであり、この先5年ほど、2020年代前半にかけて我が国の国防を中心になって担うことになる男である。

その活躍には一層注目し、そして応援していきたい。

 

本記事は当初2017年9月7日に公開していたが、加筆修正が重なったので2018年2月14日に整理し、改めて公開した。

◆引田淳(航空自衛隊) 主要経歴

昭和
62年3月 航空自衛隊入隊(第31期)

平成
10年1月 3等空佐
13年7月 2等空佐
18年1月 1等空佐
18年4月 幹部学校付
19年8月 航空幕僚監部防衛課
19年11月 航空幕僚監部運用支援課
20年4月 航空幕僚監部運用支援課人事第1班長
21年9月 航空幕僚監部防衛課付
22年8月 航空幕僚監部情報課付
23年6月 米国防衛駐在官 空将補
26年6月 防衛大学校防衛学教育学群長(教授)
27年12月 飛行開発実験団司令
29年9月 西部航空方面隊副司令官

 

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省及び外務省のルールに従い、それぞれのHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省 防衛大学校公式Webサイト(イベント写真)

http://www.mod.go.jp/nda/times/no175.html

防衛省航空自衛隊 飛行開発実験団公式Webサイト(だるま目入れ式)

http://www.mod.go.jp/asdf/gifu/adtw/anzengyoji29.html

外務省 在カナダ日本国大使館公式Webサイト(レセプション写真)

http://www.ca.emb-japan.go.jp/JapaneseSite/Taishikan/Ishikawa-taishi/national_day_reception_11.htm

Pocket