井川賢一(第15旅団幕僚長・1等陸佐)|第35期・陸上自衛隊

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その井川が陸上自衛隊に入隊したのは平成3年3月。

1等陸佐に昇ったのが平成22年1月であったので、35期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世であった。

原隊(初任地)は静岡県御殿場市の板妻駐屯地に所在する第34普通科連隊であり、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切っている。

(画像提供:防衛省公式フェイスブック

(画像提供:防衛省公式フェイスブック

その後、多くの幹部自衛官が思い出深い補職として話してくれることが多い中隊長ポストを、青森に所在する第5普通科連隊の中隊長で経験。

連隊長には京都府福知山市に所在する第7普通科連隊で上番し、この際に先述の、第5次南スーダン派遣施設隊長を務めている。

またその間、中央(陸上幕僚監部)では、監理部広報室、防衛部防衛班を経て班長ポストで教育訓練部制度班長を務めた他、「日本版海兵隊」とも言われる水陸機動団の運用を計画する、水陸両用作戦推進室長も務めている。

さらに特徴的なのは、その人柄を窺うことができる特別なポストだ。

平成19年3月からは、折木良一(第16期)が陸上幕僚長に着任するとその副官に選ばれ、さらに折木が21年3月に統合幕僚長に昇ると、そのまま統合幕僚長副官としても務めている。

そこから遡ること9年前には、幹部候補生学校で区隊長も務めているなど、上からも下からも愛される、井川の人柄や実務能力の高さが窺える配置を多く経験した。

そして29年3月から、研究本部の主任研究開発官として水陸両用作戦研究の責任者を務め、その後職として29年12月に、第15旅団司令部幕僚長に着任している。

現場にも精通し、また我が国の未来を担う水陸両用作戦にも通じ、その上で厳しさと優しさを兼ね備えた我が国を代表する、高級幹部の一人であると言ってよいだろう。

 

なお余談だが、井川の名前を聞いて「どこかで聞いたような・・・」と思った人がいれば、相当な自衛隊通だ。

先述のように、井川は極めて厳しい環境の中で第5次南スーダン派遣施設隊長を務めている。

この際、韓国軍から「弾薬が不足しているので貸して欲しい」と頼まれ、1万発の銃弾を韓国軍に貸与したのが井川であった。

ご存知のようにこの際、韓国軍はこの事実を国内のマスコミに抜かれると、最初は事実そのものを否定。

最後は「お礼を言うようなものではない」と開き直るという、いつもの行動パターンを見せた。

極めて後味の悪い出来事となったが、あの時の指揮官が井川であった。

昨今の様々な出来事と合わせ、まったく変わらない隣国の行動パターン、本当に残念に思う。

 

では最後に、その井川と同期である35期組の人事の動向について見てみたい。

35期組は、2016年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜されたばかりの年次にあたる。

そして2019年2月現在、その任に在る最高幹部たちは以下の通りだ。

 

井土川一友(第35期)・北部方面総監部幕僚副長(2016年7月)

上田和幹(第35期)・需品学校長兼ねて松戸駐屯地司令(2016年7月)

遠藤充(第35期)・第3施設団長(2016年7月)

戒田重雄(第35期)・第1空挺団長兼ねて習志野駐屯地司令(2016年7月)

坂本雄一(第35期)・中部方面総監部幕僚副長(2017年3月)

武田敏裕(第35期)・富士学校機甲科部長(2017年8月)

青木誠(第35期)・富士学校特科部長(2017年8月)

※肩書は全て2019年2月現在。( )は陸将補昇任時期。

※2018年夏以降の将官人事で昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。

 

以上のようになっており、まずは井土川、上田、遠藤、戒田の4名が、35期組の陸上幕僚長候補として1歩抜け出した状態にあると言って良さそうだ。

 

井川についてはこれほどまでに充実した実績を誇る高級幹部だ。

現職が、我が国の最前線を守る極めて厳しい旅団の実務担当者ということを考えても、近い将来に陸将補に昇り、ますますその活躍の幅を広げていくことになるのではないだろうか。

笑顔が魅力的な、類まれな実績を誇る井川1等陸佐のご紹介であった。

その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊中部方面隊公式Webサイト

◆井川賢一 (陸上自衛隊) 主要経歴

平成
3年3月 陸上自衛隊入隊(第35期)
4年3月 第34普通科連隊
10年3月 幹部候補生学校区隊長
12年8月 幹部学校(CGS学生)
14年8月 第5普通科連隊中隊長
16年3月 陸上幕僚監部監理部広報室
18年3月 幹部学校戦術教官
18年8月 陸上幕僚監部防衛部防衛班
19年3月 陸上幕僚長付副官
21年3月 統合幕僚長副官
22年1月 1等陸佐
22年3月 幹部学校(AGS等学生)
23年3月 陸上幕僚監部教育訓練部制度班長
25年4月 第7普通科連隊長兼福知山駐屯地司令
25年12月 第5次南スーダン派遣施設隊長
27年4月 陸上幕僚部防衛部兼統合幕僚監部防衛計画部水陸両用作戦推進室長
29年3月 研究本部主任研究開発官(水陸両用作戦研究室長)
29年12月 第15旅団司令部幕僚長

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