栁裕樹は神奈川県出身の陸上自衛官。
防衛大学校第38期(応用化学)の卒業で幹候75期、職種は野戦特科だ。
平成29年7月(2017年7月) 陸上幕僚監部装備計画部装備計画課長・1等陸佐
前職は第9特科連隊長であった。
2017年12月現在、陸上幕僚監部装備計画部装備計画課長を務める栁だ。
連隊長職は第9師団隷下、岩手駐屯地に所在する第9特科連隊で務めたが、第9特科連隊はFH-70(155mm榴弾砲)を中核とする砲兵部隊。
初任地である第13特科連隊もFH-70を中核とする部隊であったが、その一方で、第4地対艦ミサイル連隊で中隊長職も経験する。
地対艦ミサイル連隊ほど、近年において「失敗だった」防衛政策は他に類を見ないだろう。
すなわち、地対艦ミサイル連隊はかつて6個連隊が整備されていたものの、2005年の中期防(中期防衛力整備計画)において連隊の数を半減させる政策が打ち出される。
そして実際に、宇都宮に所在していた第6地対艦ミサイル連隊が廃止されてしまったが、その一方で中国人民解放軍に依る島嶼部への脅威の増大から、にわかに地対艦ミサイル連隊の重要性が再浮上。
このことから、僅か6年後の中期防2011においては一転、地対艦ミサイル連隊の増強と新装備取得の予算化まで成されるなど、我が国の島嶼部防衛における中核的な装備と位置づけられることになった。
一度失われた幹部曹士の経験値はにわかに取り戻せないものの、幸いにして増強政策に転じた時に廃止されていたのは1個連隊だけだったので、まだダメージは少なかった。
そして2017年12月現在、栁が中隊長を務めていた第4地対艦ミサイル連隊は沖縄に編成替えされる事が決まっており、また第1~第3地対艦ミサイル連隊のうち幾つかが、さらに転じることになるか、あるいは部隊の新設もあるのではないだろうか。
そしてこれら部隊は、石垣島や宮古島に新設される陸自の新駐屯地に配備されることになるが、この配置は極めて強力な抑止力となり、中国人民解放軍はその戦略を根本的に見直す必要に迫られることになるだろう。
なぜ島嶼部防衛に配置された地対艦ミサイル連隊が、それほどまでに強力な切り札になるのか。
その理由は、
【コラム】「市民団体」が陸上自衛隊の沖縄新基地に反対する本当の理由とは
で詳述しているのでここでは割愛するが、いずれにせよ、2017年現在の安全保障環境の中で、地対艦ミサイルの役割が大きくなってきており、さらに大きくなっていくことは間違いないということだ。
さて、その地対艦ミサイル連隊を含む、野戦特科を率いるエキスパートの栁だが、陸上自衛隊入隊が平成6年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成25年1月であったので、第38期1選抜(1番乗り)のスピード出世だ。
そのキャリアを見ても、非常に充実した補職を歴任していることから、38期組のエースとして将来を嘱望されている幹部の一人であることは疑いの余地がない。
野戦特科は、全体としては予算削減の中心的な槍玉に挙げられている「冬の時代」にあり、FH-70を中心とした部隊は統廃合の上で縮小され、方面隊直轄の部隊になる流れにある。
しかしながら、先のような理由で地対艦ミサイル連隊だけは人員・装備ともに増強と更新に予算がついている「今が旬」の兵科だ。
その意味において、地対艦ミサイル連隊での指揮経験がある栁にとっては、アドバンテージに働くのではないだろうか。
38期から、最初の陸将補が選抜されるのは2019年夏の将官人事の予定になっている。
まさに今、1等陸佐として現場を指揮する中心的な役割を果たしている世代だが、栁もまた、今以上の活躍が期待されている将来の最高幹部候補の一人だと言って良いだろう。
まずは、次の異動と補職を楽しみに、注目し応援していきたい。
◆栁裕樹(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
6年3月 陸上自衛隊入隊
7年3月 第13特科連隊(岡山)
年 月 幹部学校(目黒)
年 月 第4地対艦ミサイル連隊中隊長(八戸)
年 月 大臣官房広報課(市ヶ谷)
年 月 陸上幕僚幹部監理部会計課(市ヶ谷)
年 月 陸上幕僚幹部防衛部防衛課(市ヶ谷)
25年1月 1等陸佐
年 月 陸上自衛隊研究本部(朝霞)
年 月 陸上幕僚監部人事部補任課人事第1班長(市ヶ谷)
28年3月 第9特科連隊長
29年7月 陸上幕僚監部装備計画部装備計画課長
【注記】
このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。
主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。
自衛官各位の敬称略。
※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。
【引用元】
防衛省 岩手地方協力本部公式Webサイト(着任式画像)
http://www.mod.go.jp/pco/iwate/6STA/sta_r.htm
コメントを残す