森脇良尚(東部方面総監部幕僚副長・陸将補)|第31期・陸上自衛隊

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その森脇が陸上自衛隊に入隊したのは昭和62年3月。

1等陸佐に昇ったのが18年1月であったので、31期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。

陸将補に昇ったのは28年12月であったので、10年に渡り1等陸佐の現場に立ち、十分な現場経験を積んだ上での、堂々の将官昇任であった。

(画像提供:陸上自衛隊福島駐屯地公式Webサイト

平成18年1月の1佐昇任以降の経歴で見ると、中央(陸上幕僚監部)での班長ポストは防衛部防衛課の編成班長で経験。

また教育者のポストでも活躍が目立ち、18年8月には陸上自衛隊幹部学校で教官を務め、26年8月からは同じ幹部学校で教育部長も務めている。

連隊長ポストは福島県に所在する第44普通科連隊で上番し、あの東日本大震災当時に連隊長を務めていたのは先述のとおりだ。

幕僚やスタッフのポジションでは、1等陸佐であった時に山形県に所在する第6師団で幕僚長を務めた他、陸将補に昇った最初のポストでは、我が国の最北端を守る”北鎮師団”・第2師団で副師団長の重責も担っている。

そして30年8月に東部方面総監部の幕僚副長に着任し、我が国の心臓部である首都圏の防衛に重い責任を担っている。

文字通り、31期を代表する最高幹部の一人であると言えるだろう。

 

ところで、森脇が東日本大震災当時、福島においてどれほど献身的な活動を展開したいたのかは、前ページでお話したとおりだ。

そしてこの話にはまだ、少しばかりの続きがある。

心身ともに疲れ果て、それでもなお、被災者と国民のために活動を続ける44(獅子)連隊の幹部曹士の下に、一人の著名人が2011年4月16日に訪問した。

男の名は、長渕剛。

言わずと知れた日本を代表するミュージシャンの一人で、オッサン世代はもちろん、若い世代からも未だに強い支持を受けているアーティストだ。

自衛隊・自衛官の献身的な活動に心を打たれ、自分にも何かできないかと、慰問コンサートを開催する目的で、44連隊をサプライズ訪問した。

 

そして急ごしらえの舞台に立ち、

日本中が絶望に沈み、もうだめだと思ってる時、自衛隊の皆が立ち上がってくれた。自衛隊の勇姿がこの国を救ってくれた。

隊員の皆さんは日本の誇り、僕の誇りです!

と絶叫すると隊員たちのボルテージは最高潮に。

そして涙する隊員たちもいる中で、隊員たちは肩を組み、長渕とともに「とんぼ」や「乾杯」を熱唱。

大いに士気を上げることになったが、隊員たちは、

「自分のできる限界が、さらに伸びる勇気をもらった」

と話し、福島の復興に全力を尽くすことを誓った。

森脇自身も

「長渕さんの手は温かかった。これを機にさらに頑張れる」

と感激しながら話し、思わぬサプライズ慰問は隊員たちに大きな勇気を与えてくれる出来事になった。

 

東日本震災は確かに未曾有の国難であり、今もなおその傷は癒えたとは言えない。

その一方で、この国には自衛隊という誇らしい防人たちがいることを、最後の砦である自衛隊員たちはこれほどまでに精強であり強い武人であることを、私達国民に教えてくれる出来事になったことは間違いないだろう。

その事実から、私達国民が貰った勇気はとても大きい。

ぜひ、森脇の仕事をご紹介する時には、このお話も併せてご紹介をしておきたかった。

できればもう一度、あの震災で自衛隊と一人ひとりの自衛官が力を尽くしてくれた事実に、読者の皆様も思いを馳せてもらえれば幸いだ。

 

では最後に、その森脇と同期である、31期組の人事の動向について見てみたい。

31期組は、2018年夏の将官人事で1選抜の陸将が選抜されたばかりの年次にあたる。

そして2019年3月現在では、以下の幹部たちがその任にあたっている。

 

竹本竜司(第31期)・第1師団長(2018年8月)

沖邑佳彦(第31期)・第4師団長(2018年8月)

前田忠男(第31期)・第7師団長(2018年8月)

※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は陸将昇任時期。

 

上記のようになっており、31期組についてはこの3名で、同期の陸幕長候補が出揃ったと考えてよいだろう。

本来であれば、4名が1選抜で陸将に昇任するのが慣例なのだが、2018年夏の将官人事では3名の陸将昇任に留まっているのが、31期組人事の特徴だ。

程なくして4人目が陸将に昇ると思われるが、あるいは陸自大改革か、もしくは自衛官の定年延長の影響で、人事の流れが少し変わったのかも知れない。

 

森脇については、豊富な現場経験と教育者としての領域に、顕著な実績を多く残している最高幹部だ。

そういった意味では、今後は新設された教育訓練研究本部などに転じ、さらに活躍を重ねていくことになるのではないだろうか。

いずれにせよ、2020年代前半にかけて、我が国の安全保障環境政策の中で中心的役割を果たしていくことは間違いのない将官である。

その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊福島駐屯地公式Webサイト

◆森脇良尚(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
62年3月 陸上自衛隊入隊(第31期)

平成
10年1月 3等陸佐
13年7月 2等陸佐
18年1月 陸上自衛隊幹部学校付 1等陸佐
18年8月 陸上自衛隊幹部学校教官
20年4月 陸上幕僚監部防衛課編成班長
22年3月 第44普通科連隊長
24年8月 第6師団幕僚長
26年8月 陸上自衛隊幹部学校教育部長
28年12月 第2師団副師団長 陸将補
30年8月 東部方面総監部幕僚副長

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2件のコメント

東日本橋大震災時の森脇連隊長と44連隊の活躍については是非「大鷲の憂愁獅子の涙」を検索して閲覧して下さい。

退役自衛官様コメントありがとうございました。
また、お仕事大変お疲れ様でした。

検索しましたが、このような記事があったのですね!
数が多いようですので、ゆっくり拝読させて頂きます。
貴重な情報提供、ありがとうございました。

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