【退役】河野克俊(統合幕僚長・海将)|第21期・海上自衛隊

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おそらく、先に述べたような慣例から考えると、どれほど適材適所であり、有能であったとしても、海自出身である村川の可能性は極めて低く、まず0であると言って良いだろう。

なおかつ村川は後方支援職種(経理)の出身であり、緊迫する現下の東アジア情勢下においては、統合幕僚長に昇るのは少し考えづらいのではないだろうか。

これらのことから、統幕長候補としては消去法で消えることになりそうだ。

 

次に候補になるのが陸の山崎幸二だ。

先述の通り、統合幕僚長に3代連続で陸が着任しなかった例はなく、統合幕僚長は29代が岩崎茂(19期)で航空自衛隊出身、第30代が河野克俊(21期)で海上自衛隊出身と続いている。

そのため本来であれば、いわゆる南スーダン日報隠蔽問題の騒動で岡部俊哉(25期)が引責辞任に追い込まれていなければ、陸上幕僚長から岡部がそのまま統合幕僚長に着任していたはずだ。

2017年6月の河野の定年延長期限切れの時であり、スムーズに次の人事が既定路線で動いていたのではないだろうか。

そしてこのような慣例を踏襲するのであれば、2018年5月に、陸の山崎が陸幕長の任期を1年も務めずに切り上げ、第31代の統合幕僚長に着任する見通しとなる。

慣例を考えた上では、一番スムーズな落とし所だ。

 

では空の丸茂はどうだろうか。

率直に言って丸茂のキャリアは完璧だ。

2018年現在、丸茂は我が国の、緊迫する国防の最前線を知り尽くす自衛隊最高幹部の1人と言って良い。

空幕においては次期主力戦闘機の選任責任者を務め、現場では南西航空混成団(現:南西航空方面隊)や西部航空方面隊において指揮官を歴任。

朝鮮半島情勢だけでなく、中国人民解放軍の行動が活発化しスクランブルが急増する時代において最前線で指揮を執り、完璧な対応で我が国の空の安全を守り続けた経歴を持つ。

 

キャリアだけで言えば、今の安全保障環境下において、丸茂が統幕長に昇らないとは思えない。

後は、空幕長に昇ってわずか5ヶ月後に着任することがあり得るのか、ということくらいであろうか。

とは言え在任期間の短さで言うなら、山崎は2018年5月の段階で10ヶ月である。

5ヶ月は短すぎるが10ヶ月ならOKというのも根拠のない理屈だ。

 

つまり、慣例で考えれば山崎、キャリアで考えれば丸茂ということだ。

そして軍事組織の慣例は、おそらく一般に知られている以上に相当強固なものがあり、容易に変えがたいものがある。

軍事組織とはそれほどまでに本能的に保守的であり、新しい試みを嫌う。

言い換えれば、効果が読めない武器、結果の予測が困難な作戦で人命を損耗し、国運を変えるようなことなどできるはずがないということであり、保守的になるのが当たり前ということである。

人事についても思い切ったことをし辛いのは、何らかの問題が発生した場合に、その原因が人事にあるとされかねないことも大きい。

特に平時では、そこまでして前例を破りリスクを背負う理由が人事権者に無い以上、前例を踏襲したくなるのは当たり前であろうということになる。

 

なお参考までに、これまでに統合幕僚長(統合幕僚会議議長)に昇った陸海空の各幕僚長のうち、それぞれ出身での幕僚長在任期間の最短記録は280日であり、約9ヶ月であった。

第11代統合幕僚会議議長であり、第14代陸上幕僚長であった高品武彦(陸士54期)の記録で、1977年10月20日に陸幕長に昇り、 1978年7月28日に統合幕僚会議議長に着任した。

このことから考えても、2017年12月に航空幕僚長になったばかりの丸茂が、僅か5ヶ月後の2018年5月に統合幕僚長に昇ることは、極めて難しいと言うのが常識的な線だ。

 

つまり、第31代統合幕僚長に昇る可能性が極めて高いのは山崎ということだ。

おそらく2018年3月現在で、山崎の統幕長着任を予想していない関係者は相当な少数派ではないだろうか。

後は時期だけの問題ということになるが、それはそれとして河野はまだまだ現役であり、我が国と世界の平和に重い責任を担う幹部であることは間違いの無いところだ。

 

その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:防衛省統合幕僚監部公式Webサイト

◆河野克俊(海上自衛隊) 主要経歴

昭和
52年3月 海上自衛隊入隊(第21期)

平成
4年8月 おおよど艦長
8年1月 1等海佐
9年8月 第1護衛隊群司令部幕僚
10年12月 海上幕僚監部防衛部防衛課防衛調整官
11年12月 第3護衛隊司令
12年6月 海上幕僚監部防衛部防衛課長
14年8月 海将補
14年12月 第3護衛隊群司令
16年3月 佐世保地方総監部幕僚長
17年7月 海上幕僚監部監理部長
18年3月 海上幕僚監部総務部長
18年8月 海上幕僚監部防衛部長
20年3月 掃海隊群司令
20年11月 護衛艦隊司令官 海将
22年7月 統合幕僚副長
23年8月 自衛艦隊司令官
24年7月 海上幕僚長 海上幕僚長たる海将
26年10月 統合幕僚長 統合幕僚長たる海将
30年4月1日 統合幕僚長のポストを最後に退役

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