梶原直樹(かじわら・なおき)|第32期・第3師団長

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梶原直樹は昭和40年4月12日生まれ、東京都出身の陸上自衛官。

防衛大学校第32期(国際関係)の卒業で幹候69期、出身職種は野戦特科だ。

 

令和元年8月(2019年8月) 第3師団長・陸将

前職は統合幕僚監部防衛計画部長であった。

なお、第3師団長としての指導方針は以下の通り。

 

【統率方針】
責務の完遂

【要望事項】
当たり前のことを当たり前にできる部隊・隊員たれ
地域や国民の期待を自覚せよ

(画像提供:陸上自衛隊第3師団公式Webサイト

2019年11月現在、第3師団長を務める梶原だ。

第1師団と並び「政経中枢師団」と位置付けられる、文字通り我が国の政治経済の中枢を防衛する第3師団を率いる。

ご覧のように、どう見ても54歳には全く見えない超イケメンであり、山之上哲郎(第27期)・元東北方面総監が第1空挺団長であった時に匹敵する、陸自屈指のカッコよさだ。

しかも梶原は、制帽・制服補正のイケメンではなく髪も黒髪フサフサであり、その点ちょっと個人的に妬ましいほどである。

なおかつ32期の1選抜(1番乗り)で陸将に昇ったエリートであり、部下からの人望も厚く、ここまでフルスペックだと逆にマンガでもやり過ぎだと編集者に怒られるのではないだろうか。

そんな男が今、我が国第2の政治・経済の中心地を護っている。

 

これだけの要職を任される梶原のことだ。

そのキャリアはいずれも印象深い補職ばかりだが、敢えて一つ挙げるとすれば、それは平成25年8月から務めた、第1特科団長のポストだろうか。

第1特科団は、その司令部を北千歳に置く、陸自の切り札とも言って良い最強の火力を誇る野戦特科部隊である。

隷下には203mm自走榴弾砲やMLRS等、陸戦や上陸阻止戦の勝敗を左右する強力な火砲に加え、我が国が世界に誇る地対艦ミサイル3個連隊が設置されているなど、強大な戦力を備える。

特に地対艦ミサイルについては、我が国独自の防衛思想の中で進化を遂げた、それでいて2019年現在、世界でもっとも注目されている兵科の一つを指揮した。

実際にアメリカ軍は、リムパック2018において史上初めて、陸上自衛隊と地対艦ミサイル部隊の参加を要請し、米軍との共同運用に非常に強い関心を示している。

それは、我が国が開発した12式地対艦ミサイルが単に離島防衛に力を発揮すると言うだけでなく、非常に幅広い海域をその射程圏内に納め、なおかつ移動式であるために容易に補足されず、またユニットコストも極めて安価であることによる。

それでいて、特定海域の海上優勢を確保する上で強力な攻撃力を発揮できるとなれば、興味を示さないわけがないだろう。

陸上自衛隊では、この非常に優れた防衛装備を南西諸島の島嶼部に配置する計画を進めているが、これにより九州から沖縄にかけての海上には、全く穴のない防衛網が形成されることになるのではないだろうか。

言い換えればこれは、 中国人民解放軍    敵性勢力の海上戦力が第一列島線の内側に押し込まれ、「お池の艦隊」と化すことを意味するために、インパクトは非常に大きい。

そのようなこともあり、米国の関心が今もっとも高まっている自衛隊が誇る装備のひとつとなっているが、それら部隊を含めた野戦特科の切り札とも言える部隊を、梶原は率いた。

 

その一方で、野戦特科と言えば2019年現在、FH-70などの火砲を中心に予算削減の狙い撃ちに遭い、次々に部隊の縮小・再編が行われている。

しかし野戦特科における火砲とは、「戦場の女神」と呼ばれるほどに欧州では、戦闘の帰趨を決し、あるいは陸軍における戦争の流れ全体を引き寄せるユニットである。

島国である我が国ではピンとこないかも知れないが、陸上戦闘においては戦闘初期において、面制圧を目的とする重火砲が遠距離から敵性勢力の無力化を図る。

そして弱体化した敵の支配地域に機甲科や普通科を投入し、最終的な制圧を図るというのが基本的な戦闘の流れとなっている。

 

ではなぜ、そのように重要な兵科が今、どんどんと予算削減の対象になっているのか。

野戦特科を縮減する財務省等のロジックは、「このような上陸戦は、我が国では想定しづらい」というのが、その大きな理由だ。

しかしながら、我が国の兵器はそもそもが、抑止力として機能することを目的とするところが大きい。

つまり、防衛側に大火力の防衛兵器が備わっているとなれば、上陸側はそれに対抗する装備を持って上陸を図るか、あるいは大規模な損耗を覚悟した大規模部隊で作戦に臨まなければならない。

しかし、そのような大きな動きを見逃すほど我が国の海上防衛網はザルではないので、事実上そのような作戦を奇襲を持って発動することなど不可能である。

 

一方で、防衛側に大火力の火砲などが無ければどうだろうか。

攻撃側も、迫撃砲など比較的軽武装で小規模な部隊を隠密理に移動させ、着岸させられる可能性が高くなる。

小規模な部隊が小さな船舶で我が国への近接を試みた場合、その全てを補足することが難しいのは、北朝鮮の工作船の例からも明らかだ。

そしてこのような勢力が、密かに海岸付近に橋頭堡を築いていた場合。

即応できる大火力の火砲を万が一持ち合わせて居なければ、鎮圧すべき戦闘の初期段階から非常な苦戦を強いられることになるだろう。

 

さらに加えて、一般に余り知られていない野戦特科部隊の特殊な役割がある。

それは、敵性勢力からの遠距離砲撃の弾道や着弾点から敵の所在地を割り出し、さらにその企図を丸裸にしてしまう情報分析・偵察能力だ。

「そんなものは、レーダーや衛星からの情報があれば事足りるだろう」

と思われるだろうか。

しかしそれは、大きな間違いである。

なぜなら、遠距離の砲撃や面制圧、海上勢力の撃破を企図する部隊であれば、逆に言えば相手の同じ機能を持った部隊がどのような意思で、何を目的としているのか。

その意図が正しく推測できるということだ。

 

極論すると、ミサイルの弾道と着弾地点を見ても、普通科出身の幹部にはその隠された意図の可能性の全てを把握することはできない。

しかし野戦特科の幹部であれば、その可能性の全てを網羅することができ指揮官に意見具申でき、あるいは行動を決心できる。

つまり、相手が仕掛けてくるであろう攻撃手段の全てを、味方も攻撃側としていつでも知っておく必要があるということだ。

それなければ、本当に有効な反撃などできるものではない。

 

結局のところ、大火力を誇る火砲部隊は、存在していることそのものが安全保障であり、精強であり続けることが、任務そのものということである。

ぜひ、その野戦特科を代表する最高幹部である梶原には、その存在感を更に高める活躍を期待したいと願っている。

 

では、そんな重要な職種出身の幹部であり、要職を歴任し続ける梶原とはこれまでどんなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。

少し詳細に、その経歴を見ていきたい。

 

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2件のコメント

情報源が少なく記事にするのは難しいと思いますが、梅原淳1佐(自衛艦隊運用調整総括幕僚)、田中仁朗1佐(統幕運用第2課長)のご検討お願いします。

リクエストありがとうございます!
どちらも、とても魅力的な自衛官の方ですね。
情報の少なさはなんともし難いですが、どこかでトライアルしてみようと思います!
ありがとうございました。

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