今日は少し、変わった企画で記事を書いてみたい。
「退職自衛官の生き方」というテーマについてだ。
ご存知のように、自衛官は国民から尊敬を集める崇高な職業ではあるものの、率直に言ってその人生は決して楽なものではない。
年齢に関わらず心身の鍛錬を求められ、24時間365日、事態即応の覚悟で暮らす必要がある。
東日本大震災においては、自らも被災者であるにも関わらず、家族の安全確認よりも被災者救助を求められ、それでも果敢に戦った多くの自衛官の姿が私たち国民の心を深く捉えた。
数々の災害派遣で指揮を執り続け、2019年8月に退役をした田浦正人(第28期)・前北部方面総監はあるメディアのインタビューに対し、
「私は多くの現場で隊員に出動命令を出してきましたが、どのような事態にも敢然と立ち向かう隊員たちの後ろ姿は、菩薩のように見えました」
と語っていたことがあるのが印象的だ。
本当に、言葉には言い尽くせないほどにこの職業にある幹部曹士の皆様には、心からの敬意を感じている。
その一方で、多くの自衛官はどれだけ偉くなっても、そのほとんどが60歳まで勤めることすらできない。
1佐まで昇るようなエリートですら、定年延長が実施されても57歳で退役である。
民間企業が65歳までの雇用を制度化する中で、正直余りにも厳しい現実がある。
そして多くの自衛官は、退役が見えてきた段階で就職活動を始めるものの、全ての人が満足できる第2の人生をスタートできるわけではない。
自衛隊で培った経験や能力を活かすことができればいいが、良いタイミングで良い仕事に恵まれるのは、やはり難しい。
そのような中、自衛隊では師団広報室長として活躍し、退役後にはなんと、自ら映像プロダクションを始めてしまった元自衛官がいる。
たびたび画像のご提供元としてご紹介をさせて頂いている、小島肇(第19期)・元2等陸佐だ。
私に自衛隊のことを色々と教えてくださる師匠であり、またたびたび、自衛隊の取材・撮影で助手をさせて頂いており、実際の自衛官の活躍の現場を見学させて頂いている、管理人(私)にとってとても大事な先生である。
自分の能力を活かすことができるご縁に恵まれないなら、独立してしまえという発想はなかなかのぶっ飛びようだ(汗)
実際に退役直前には、防衛ホーム新聞に
「退役後、独立することを決めた小島2佐」
として、新聞紙面にまで載ってしまっている。
そして退役後、もちろん一民間人として正規の手続きを踏み、自衛隊の活躍を映像化しDVDなどを販売しているのだが、やはり元々、広報室長まで務めた幹部が撮影する動画は文字通り「唯一無二」だ。
一般人では想像もできないカメラアングル、企画を部隊に提案し、その活躍を映像化することに成功している。
例えばこんな感じだ。
(画像提供:小島元2佐)
こちら、いずれも各種兵装の「隊員目線」で撮影された動画を、静止画に切り取ったものである。
通常、民間の映像プロダクションがこんな企画を出しても中々通らないのではないだろうか。
それは元自衛官だからえこひいきで、という意味ではない。
「この場所であれば、このようにカメラを取り付けたら、安全を確保した上で良い映像が撮れる」
という安全対策を理解しており、さらに、
「このような動画・画像を撮影することで、自衛隊の広報に資することができる」
というところまで含めて、恐らく企画し、部隊に提案しているのだろう。
こんな企画書を立てることができるのは、まさに元自衛官だけであり、また広報室長だからだ。
さらに、2019年に行われた第7機甲師団の記念行事では、こんな撮影技術まで駆使して、すごい動画を作り上げてしまった。
(画像提供:小島元2佐)
それぞれ、どのようなシチュエーションかおわかりだろうか。
1枚目は、なんと観閲行進をドローン撮影してしまったものだ。
2枚めは、機甲科部隊と共に低空飛行で協働作戦を遂行するヘリの内部に小型カメラを設置し、「隊員目線」での記念行事を撮影したものである。
【※注意※】
いうまでもなく、記念行事の会場内で無許可でドローンを飛ばしたら、つまみ出されるどころか確実に逮捕されます。
絶対にしないで下さい。
下から空を見上げる、観客席の一員として会場に足を運んだ人も多いと思うが、まさか実際に訓練展示をしている隊員目線でこの光景を見たことがある人はいないだろう。
そういった意味で、とても新鮮な動画で素晴らしいものだった。
なお小島元2佐に、
「この動画、youtubeにアップして皆さんにご案内していいですか?」
とお聞きしたところ、
「売り物だからダメに決まってんだろ!」
と怒られてしまった・・・当たり前である。
(´・ω・`)
しかし粘りに粘り、
「3分ほどの短いプロモーションビデオなら、アップしていい」
と言って頂いたので、こちらで共有させてもらいたい。
ご興味があれば、ぜひ見て欲しい。
元自衛官として得た能力を活かし、第二の人生を歩んでいるのはとても素晴らしい生き方だ。
そう言えば、元准尉で第一次イラク復興支援隊の要員としても現地で活躍した加藤直樹(曹学8期)も、退職金のほとんどを投入し、射撃訓練上を北海道に作ってしまった。
実際に私も、北海道の恵庭に足を運び、加藤元准尉の射撃場を取材させていただいたこともあるが、現役自衛官、民間人の多くに愛される、素晴らしい射撃場であった。
なお、その時の記事はこちらで見ることができる。
自衛隊はなぜ精強なのか ある下士官の生き方から見えた自衛隊の真実
現役の時も、退役後の生き方としても、自衛官の人生は本当に大変だ。
しかしそんな中でも、現役時に得た知見を元に、素晴らしい第2の人生を送っている多くの自衛官がいる。
ぜひ、読者の皆さんの周囲にも、退役自衛官として頑張っている元隊員がいれば、できる限り応援をしてほしいと願っている。
それもまた、私たち一般国民にできる、とても大きな国防への貢献だ。
国防に人生を捧げてきた人たちの退役後の人生は、その誇りある人生にふさわしいものでなければならない。
今回は、そんな自衛官に注目し記事にさせて頂いた。
なお、上記ご紹介したプロモーションビデオの本編は、年明けにDVDとして発売されるそうだ。
アマゾンでも買えるそうなので、興味があれば購入してみてはどうだろうか。
※アフィリエイトリンクなど仕込んでいませんので、安心して踏んで下さい。
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(了)
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:小島元2佐)
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