白根勉(しらね・つとむ)|第32期・海上自衛隊

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白根勉は昭和40年4月生まれ、福岡県出身の海上自衛官。

防衛大学校第32期、幹候は39期の卒業だ。

 

平成29年12月(2017年12月) 掃海隊群司令・海将補

前職は海上幕僚監部総務部副部長であった。

なお、掃海隊群司令としての指導方針は以下の通り。

 

「錬磨・発展」

「真心・真の強さ」

 

我が国が世界に誇る、掃海隊群の司令に着任した白根だ。

海上自衛隊の練度・精強さはすでに世界の知るところではあるが、中でも掃海部隊の実力と勇気は、その設立の経緯と相まって戦後日本人の誇りであり続けた。

そして現在、掃海部隊は離島防衛に無くてはならない新たな任務を付与されたことでさらにその存在感を大きくし、海自のエースが着任する指定席となりつつある。

 

ところで、掃海隊群と言えば「海の掃除屋」であり、直接的な戦闘とは無縁な職種と思われている人も多いかもしれない。

確かにテレビなどで取り上げられる掃海隊の仕事といえば、第二次世界大戦中に沈下された機雷などが発見された際に爆破処理をする仕事で出動する場面などが、ほぼ全てだ。

その為、陸自の不発弾処理のイメージとどうしても被るかもしれない。

 

もちろん本来は、陸自の不発弾処理部隊も、有事の際には最前線で敵の攻撃に晒されながら不発弾処理をする部隊であり命知らずの精鋭集団なので、陸海ともにこのようなイメージは間違っている。

その上で海上自衛隊の掃海隊は、直接的な戦闘と無縁などころか、離島防衛において殴り込み実行部隊としての役割を持っていることに、ぜひ注目して欲しい。

 

この役割は、掃海隊群隷下に2016年、第1輸送隊が編入されたことに依る。

第1輸送隊は「おおすみ」「しもきた」「くにさき」からなる部隊だが、率直に言って輸送隊というよりも、強襲揚陸部隊だ。

各艦ともLCAC(エアクッション艇)を搭載しており、MBT(メインバトルタンク;主力戦車)を伴っての揚陸作戦の実行が可能な能力を誇る。

 

掃海隊群が投入されるであろう戦場の想定は、極めて過酷だ。

もっとも起こりうるシナリオでは、すでに敵が上陸し、拠点を築きつつある我が国の島嶼部における奪還作戦だろう。

 

このような場合、紛争当初から航空戦力、海上戦力を巻き込んだ総力戦が勃発する可能性ももちろんあるが、中国人民解放軍もそこまでの全面戦争はおそらく望まない。

もちろん我が国は、国の威信を賭けて必ず国土を奪還する必要がある。

そのためこのような状況では、双方が後方に海空の戦力を待機させながら、小規模な上陸部隊と、小規模な奪還部隊による戦闘が、島嶼部有事でもっとも起こり得るシナリオとなる。

 

そしてこのような局面にあって、西部方面普通科連隊などと連携し、奪還作戦を実行するのは掃海隊群となる。

具体的に掃海隊群は、すでに機雷が敷設されている可能性がある海域に進出し航路を啓開し、第1輸送隊を用いて陸自の奪還部隊を送り込む、極めて危険な殴り込みを実行することになるだろう。

 

我が国の安全保障環境は極めて厳しい状況だが、現実的な脅威は、島嶼部を侵略しようとする中国人民解放軍の動きだ。

その野心を挫くことができるのは、我が国の反撃・奪還能力の高さであり、この白根率いる掃海隊群の精強さそのものである。

逆に言えば、掃海隊群と陸自奪還部隊の精強さこそが最大の抑止力のひとつであり、白根にかけられている自衛隊内外の期待は極めて重い。

 

 

なお白根は、2000年に第1・第2掃海隊群が廃止・統合され、掃海隊群として新編した時から数えて12代目の司令になるが、第6代の司令は河野克俊(第21期)・統合幕僚長である。

このように従来から重要なポストではあったが、2016年に新任務が付与されてからはさらにポストの重要性が高まっており、今後も高まっていくことになるだろう。

なお白根の前任である湯浅秀樹(第30期)も、同期1選抜から4ヶ月の差で海将に昇り、後職で海上自衛隊幹部学校長に栄転している、極めて近い将来の海上幕僚長候補の一人になっている。

 

では、現司令である白根自身のキャリアはどうなっているのかも、少し詳しく見てみたい。

白根が海上自衛隊に入隊したのは昭和63年3月。

1等海佐に昇ったのが平成19年1月なので、32期の1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。

海将補に昇ったのが26年12月だったので、こちらは同期1選抜に比べ1年4ヶ月の遅れとなるが、順番で言えば3番目である。

やはり白根も、同期の出世頭でスーパーエリートのキャリアを誇った上で、掃海隊群司令に着任したと言って良いだろう。

 

なお2018年2月現在で、32期組の海将補には以下の者たちがある。

32期は、2019年夏の将官人事で最初の海将が選抜される年次なので、32期のエリート名簿と言って良い幹部たちだ。

 

二川達也(32期)・第31航空群司令(2013年8月)

伊藤弘(第32期)・内閣審議官(国家安全保障局担当)(2013年8月)

白根勉(第32期)・ 掃海隊群司令(2014年12月)

小座間善隆(第32期相当)・潜水艦隊司令部幕僚長(2015年3月)

柴田弘(第32期相当)・海上幕僚監部装備計画部長(2015年8月)

梶元大介(第32期)・第3護衛隊群司令(2016年12月)

中村敏弘(第32期)・第1航空群司令(2017年8月)

※肩書はいずれも2018年2月現在。( )内の数字は将補昇任時期。

 

32期組ではこのように、航空畑の二川に水上艦艇の伊藤の2名が先頭集団を走っている状況だが、これを白根が追う構図になっている。

この3名はやがて海将に昇り、我が国の安全保障体制において極めて重要なポストを歴任することになるだろう。

 

この先5~8年ほど、~2026年頃にかけて、国防における最高意思決定を担い、なおかつ実働部隊の責任者となる世代の32期だ。

その活躍は要注目の世代であり、これからも応援して行きたい。

 

◆白根勉(海上自衛隊) 主要経歴

昭和
63年3月 海上自衛隊入隊(第32期)

平成
11年1月 3等海佐
14年7月 2等海佐
16年9月 あぶくま艦長
17年8月 統合幕僚監部第5幕僚室
18年3月 統合幕僚監部防衛計画部計画課
19年1月 1等海佐
20年12月 海上幕僚監部指揮通信情報部指揮通信課
21年4月 海上幕僚監部指揮通信情報部指揮通信課指揮通信体系班長
22年12月 掃海隊群幕僚
23年12月 第7護衛隊司令
24年12月 海上幕僚監部指揮通信情報部指揮通信課長
26年12月 監察本部監察官 海将補
27年12月 海上幕僚監部総務部副部長
29年12月 掃海隊群司令

 

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省海上自衛隊 掃海隊群公式Webサイト(プロフィール画像及び着任式画像)

http://www.mod.go.jp/msdf/mf/news/news/20171220.html

http://www.mod.go.jp/msdf/mf/other/about/index.html

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2件のコメント

2022年12月現在、白根将補は海上幕僚監部付となり、退職されております。

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