その眞鍋が海上自衛隊に入隊したのは昭和59年3月。
1等海佐に昇ったのが16年1月だったので2選抜前期での昇任ということになる。
海将補に昇ったのが26年12月だったので、1等海佐を11年に渡り経験した、非常に現場経験が豊富な最高幹部と言ってよいだろう。
(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト 活動状況紹介)
その水上艦艇指揮官としてのキャリアは、非常に充実している。
かしま副長、まつゆき艦長などを務めた後、1等海佐に昇り第1護衛艦隊群幕僚や第3護衛隊司令、自衛艦隊作戦主任幕僚などの要職を歴任。
海将補に昇任後は第3護衛隊群司令、練習艦隊司令官などの非常に重い責任を担った。
その間、中央(海上幕僚監部、統合幕僚監部)では人事計画課制度班長兼要員班長、人事計画課人事調整官兼企画班長など「人」にかかるポストを歴任。
統幕では、運用1課運用調整官を務めるなど、常に要職にあり続けた。
そして平成30年3月からは自衛艦隊司令部で幕僚長を務め、我が国の平和と安全を担うもっとも重い責任を担うポストで手腕を発揮している。
まさに、28期のみならず、我が国を代表する最高幹部の一人と言ってよいだろう。
なおこの眞鍋のキャリアについて。もうひとつ、特筆したいことがある。
あるいはまだ記憶に新しい人もいるかも知れない、リムパックでの、中国人民解放軍による「海自外し」の事件だ。
リムパック2016で発生した前代未聞の出来事で、この際中国海軍の司令官は、自艦で開催するレセプションに、海自の幹部だけを招かないという恐るべき稚拙なマネをやらかした。
そしてこの時の海自指揮官が、眞鍋であった。
当時、眞鍋は第3護衛隊群司令。
この前代未聞の中国海軍の振る舞いに対し、米太平洋艦隊司令官スコット・スイフト大将は中国人司令官を強くたしなめ、再考を促す。
その結果、何とも情けない話だが、同司令官は海上自衛隊の幹部も含めレセプションに招くことを承諾することになる。
そして眞鍋は、ただ淡々と笑顔で招待に応じ、中国艦に足を運んだ。
結果としてこの出来事では、中国海軍は極めて大人げない非礼な振舞いで国際的な評価を下げ、海上自衛隊は冷静で紳士な振る舞いで評価を上げることになったと言ってよいだろう。
隣国の最高幹部が「この程度」であることと対照的であり、海上自衛隊の精強さと眞鍋の頼もしさが、非常に際立った出来事であった。
なおこの一連の騒動を報じたのは当時、産経新聞だけであったかと記憶している。
オールドメディアは、このような報道姿勢こそ新聞不振の根本的な理由であることを、もう少し深刻に捉えるべきではないだろうか。
では最後に、その眞鍋と同期である28期組の人事の動向について見てみたい。
28期組は、すでに勇退を迎える将官も出始めている年次であり、同期の海上幕僚長候補は出揃っている。
そして、2018年11月現在でその候補者たる海将にあるのは、以下の幹部たちだ。
山村浩(第28期)・海上幕僚副長(2015年8月)
菊地聡(第28期)・佐世保地方総監(2015年12月)
佐藤直人(第28期)・防衛装備庁長官官房装備官(2016年12月)
高島辰彦(第28期相当)・潜水艦隊司令官(2017年12月)
※肩書はいずれも2018年11月現在。( )は海将昇任時期。
以上のようになっており、その中でも特に抜きん出ているのは、山村と言ってよいだろう。
菊地もこれに続き、28期組の海上幕僚長候補は、実質的にこの2名に絞られた形だ。
とは言え恐らく、次の海上幕僚長は山下万喜(第27期)が有力視されており、その着任時期は2018年12月、つまりこの記事をポストしてから間もなくと見られている。
そうなった場合、28期組から海幕長が出るのか。
状況はいろいろと変わってきそうだ。
眞鍋については、これほどの充実したキャリアを誇る最高幹部である。
その一方で、28期組は勇退が始まっている年次でもあり、あるいは自衛艦隊司令部の幕僚長ポストを最後に、長かった自衛官生活に別れを告げ、制服を置くことになる可能性もありそうだ。
どれほどにキレ者の最高幹部であっても、退役の時が来るというのは本当に寂しい気がするが、これもまた、自衛隊が精強であり続けるために仕方のない仕組みなのかも知れない。
眞鍋にとってそれが間もなくなのか、もう少し先なのかはもちろん確たることはわからないが、だからこそ、最後までその動向には注目をし続けていきたい。
そして、変わらず応援をしていきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト 活動状況紹介)
◆眞鍋浩司(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
59年3月 海上自衛隊入隊(第28期)
平成
7年1月 3等海佐
10年7月 2等海佐
10年12月 海上幕僚監部人事計画課
11年3月 せとぎり砲雷長兼副長
12年9月 練習艦隊幕僚
13年10月 かしま副長
14年9月 まつゆき艦長
16年1月 1等海佐
16年8月 第1護衛艦隊群幕僚
18年8月 海上幕僚監部人事計画課制度班長兼要員班長
19年7月 海上幕僚監部人事計画課人事調整官兼企画班長
20年8月 第3護衛隊司令
21年10月 統合幕僚監部運用1課運用調整官
23年8月 佐世保地方総監部防衛部長
25年3月 自衛艦隊作戦主任幕僚
26年12月 第3護衛隊群司令 海将補
28年12月 練習艦隊司令官
29年12月 自衛艦隊司令部勤務
30年3月 自衛艦隊司令部幕僚長
30年12月 自衛艦隊司令部幕僚長のポストを最後に勇退
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