【退役】前原弘昭(航空総隊司令官・空将)|第27期・航空自衛隊

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前原弘昭は昭和35年5月2日生まれ、長崎県出身の航空自衛官。

防衛大学校第27期の卒業で幹候73期、職種は飛行でF-15戦闘機パイロット出身だ。

 

平成30年8月(2018年8月) 第46代航空総隊司令官・空将のポストを最後に退役することが決まった。

前職は航空総隊副司令官であった。

 


(画像提供:航空自衛隊航空総隊司令部公式Webサイト

【以下、2018年7月27日加筆】

ついに、長きに渡り航空自衛隊の顔と言ってもよいほどに存在感を放ち続けた、前原の退役が決まった。

最後の最後まで、丸茂吉成(第27期)と航空幕僚長のイスを競い合い、下馬評では前原有利といわれ続けてきたほどに、空幕長に昇るものと思われていたほどのエリートだった。

 

前原が航空総隊司令官にあった2016年12月から2018年8月は、北東アジアがその危機に揺れ続けた時期にあたる。

それこそ、心身ともに極限まで研ぎ澄まし、激務が続いた航空総隊司令官のポストであっただろう。

北朝鮮からの度重なるミサイルの発射に24時間365日体制で対応に当たり、我が国の平和と安全のために尽力し続けた、最後の任務であった。

 

昭和58年の航空自衛隊入隊から35年。

平成2年7月には、石川の第6航空団でF-15戦闘機パイロットとして空に上がり始め、常に最前線で任務に当たり続けた自衛官人生であった。

その激務が、やっと終わった。

とても寂しいことではあるが、心身ともに極限まで使い切り、おそらく今は、やり遂げた満足感でいっぱいなのではないだろうか。

 

本当に、長い間お疲れ様でした。

ありがとうございました。

今はまず、ゆっくりと休まれて積年の疲れをお癒やし下さい。

その後に始まるであろう、前原空将の第二の人生も充実したものとなりますことを、心からお祈り申し上げます。

本当に、ありがとうございました。

 

【以下、2017年5月4日までの過去記事】

2018年5月現在、航空自衛隊のほぼ全ての実力組織を統率する要職にある前原だ。

自らもF-15戦闘機のパイロット出身であり、茨城県の百里基地にある偵察航空隊を皮切りに、

小松基地の第6航空団や千歳基地の第2航空団でも現場指揮を執り、国防の最前線で過酷な任務にあたってきた。

また、スタンフォード大学客員研究員としてアメリカに留学し、20年8月からは青森県三沢基地に所在する第3航空団司令を務めるなど、米軍・在日米軍ともに太いパイプを持つ。

早い話が、航空自衛官として、これ以上はないキャリアと知見を積み上げた最高幹部ということだ。

そのキャリアの延長として、航空自衛隊の実力組織を束ねる航空総隊司令官に着任したのは、まさに順当な人事であったと言えるだろう。

 

その航空総隊司令官。

海上自衛隊で言うところの自衛艦隊司令官に相当するポストであり、陸上自衛隊では有事に際して特に権限が付与された際の陸上総隊司令官に相当(※)する、非常に大きな指揮権限を持つ。

そのような組織の長であるため、航空自衛隊においては実質的に、航空幕僚長に次ぐNo.2としてのポジションにあり、次の航空幕僚長最有力候補として扱われるポストだ。

実際に2000年代以降、第25代航空幕僚長であった竹河内捷次(第9期)から第35代の丸茂吉成(第27期)までの11人で見ると、実に過半数の6人が、航空総隊司令官からのジャンプアップだ。

数ある航空自衛隊の任務の中でも、もっとも重要な責任を任されるポストであると言ってよいだろう。

(※)陸上総隊は、平時においては各地に所在する方面隊と同格であり、方面隊隷下の実力組織に対して縦の位置付けになっていない。

そのため陸上総隊司令官と、自衛艦隊司令官及び航空総隊司令官とは、やや位置づけが異なる(2018年5月現在)。

 

なお、航空幕僚長に就くものが最後に通過点する可能性があるポジションは2018年5月現在、航空総隊司令官以外では以下の4つとなっている。

 

・航空幕僚副長

・航空教育集団司令官

・航空支援集団司令官

・情報本部長

 

これらポストについて、かつては航空幕僚副長がその指定席とも言えるポジションだったが、近年は航空総隊司令官が主となってきているのは先述のとおりだ。

航空教育集団司令官と航空支援集団司令官については、実際に空幕長に着任した幹部の数は少ないものの、そのポストの格から考えても、今後も航空幕僚長が選抜されることは十分考えられるポストになるだろう。

一方で情報本部長については、例外的に過去1回の着任があったが、今後は一般化しないのではないだろうか。

 


(画像提供:航空自衛隊航空総隊司令部公式Webサイト

ではその前原については、後職で航空幕僚長に昇ることがあるかといえば、それは100%無い。

自衛隊の人事は期別で管理されており、同期から航空幕僚長が選抜された場合は、原則として同期は、適切な時期を見計らって退役となるのが原則になっているからだ。

そして27期からは、既に丸茂吉成(第27期)が、2017年12月に航空幕僚長に着任している。

そのため前原は、どれだけ長くとも2018年12月までに、航空総隊司令官のポストを最後に退役となるだろう。

 

なお丸茂の航空幕僚長着任にも関わらず、27期からは他に以下の2名も退役すること無く、空将として極めて重要な任務にあたり続けている。

 

荒木淳一(第27期)・航空教育集団司令官(2014年12月)

橋本尚典(第27期)・防衛装備庁長官官房装備官(航空担当)(2015年12月)

※肩書は全て2015年5月現在。( )は空将昇任時期。

 

いずれの幹部もやはり、着任時期から考えると長くとも2018年12月までに退役となると考えて、まず間違いないだろう。

長きに渡り、我が国の空の安全を支え続けた最高幹部たちであったが、その自衛官生活最後の日が近づいているかと思うと、やはり寂しい限りだ。

 

或いはその時期については、早ければ2018年5月にも予想される統幕長人事の結果でも左右されるかも知れない。

もちろん、過去の幕僚長在任期間から考えて、少なくとも2018年5月の段階で航空幕僚長である丸茂が、河野克俊(第21期)の跡を継ぎ、第31代の統合幕僚長に昇る可能性は極めて低い。

逆に、統幕長人事が2018年12月までずれ込むことがあればその可能性が一気に高まるが、少なくとも5月の段階では考えられないだろう。

 

一方で2018年5月に統幕長が交代し、陸幕長である山崎幸二(第27期)が着任することになれば、陸自は海空に比べ一気に将官の若返りが進むことになる。

そのため、海空でもその影響は避けられず、2018年夏の将官人事で多くの27期が退役となるはずだ。

その際には、空自で活躍する上記の空将たちも、更に退役が早まることになるだろう。

 

F-15戦闘機パイロットとして我が国の空を守り続け、さらに指揮官として最高のポストまで昇り詰めた前原であったが、その勇姿を見られるのは本当に残りわずかとなってしまった。

とても寂しい限りだが、その活躍には最後までしっかりと注目し続けたい。

そして最後まで、しっかりと応援し続けたい。

 

本記事は当初2017年7月1日に公開していたが、加筆修正が重なったので2018年5月4日に整理し、改めて公開した。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:航空自衛隊航空総隊司令部公式Webサイト

◆前原弘昭(航空自衛隊) 主要経歴

昭和
58年3月 航空自衛隊入隊 (第27期)
61年4月 茨城県百里基地 偵察航空隊

平成
2年7月 石川県小松基地 第6航空団
5年8月 幹部学校指揮幕僚課程(市ヶ谷)
6年1月 3等空佐
6年8月 航空幕僚監部防衛部(六本木)
9年7月 2等空佐
9年12月 北海道千歳基地 第2航空団第201飛行隊長
13年3月 航空幕僚監部防衛部防衛課(市ヶ谷)
14年1月 1等空佐
14年9月 スタンフォード大学客員研究員(アメリカ)
15年8月 航空幕僚監部防衛部運用課
17年8月 福岡県春日基地 西部航空方面隊司令部防衛部長
18年8月 航空幕僚監部人事教育部補任課長
20年8月 青森県三沢基地 第3航空団司令 空将補
22年12月 航空総隊司令部防衛部長(府中)
24年3月 航空幕僚監部監理監察官(市ヶ谷)
26年3月 統合幕僚監部運用部長(市ヶ谷) 空将
27年3月 航空総隊副司令官(横田)
28年12月 航空総隊司令官(横田)
30年8月 航空総隊司令官のポストを最後に退役

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