山本和德(やまもと・かずのり)は昭和42年10月5日生まれ、青森県出身の陸上自衛官。
日本大学工学部を卒業し平成3年3月に陸上自衛隊に入隊しているので、防衛大学校第35期相当の幹候72期(統一期91期)ということになる。
出身職種は元々は高射特科であったが、情報職種の新編に伴い正式に、情報科の幹部として活躍しているのではないだろうか。
平成31年3月(2019年3月) 初代となる第8情報隊長・2等陸佐
前職は情報学校第1教育部第3教育室長であった。
(画像提供:陸上自衛隊第8師団公式Webサイト)
(画像提供:陸上自衛隊公式Webサイト)
2019年5月現在、初代となる第8情報隊の隊長を務める山本だ。
第8情報隊は北熊本駐屯地に所在し、戦闘における各種情報を収集する役割を担う、国防の文字通り最前線で活躍する部隊である。
なお「第8情報隊」と聞いて「そんな部隊あったっけ・・・??」と思う人も多いかも知れないが、無理はない。
2019年3月に新編されたばかりのできたてホヤホヤの部隊で、山本がその隊長に着任してまだ2ヶ月(2019年5月現在)の組織だからだ。
通常、「情報隊」や「情報職種」と聞くと、おそらくヒューミントなど戦場外で活躍する部隊や個人のことを連想される人も多いかも知れない。
実際に我が国には、日露戦争において大活躍し、参謀次長長岡外史をして、「陸軍10個師団に相当する働き」と言わしめた伝説のスパイ、明石元二郎・陸軍大将など名だたる情報将校が歴史を彩る。
しかしこと、この第8情報隊についてはそのような領域での仕事ではなく、まさに眼の前にいる勢力を索敵し、その発見と企図の探り出しをすることが大きな任務だ。
言い換えれば、我が国に侵攻しようとする敵を直接偵察する、機甲科の偵察隊に近い存在であると言ってもよいだろう。
ただし、運用する機材は無人機であり、上記2枚めの画像ような働きをする。
また上記2枚めの画像は回転翼機型の無人機だが、この第8偵察隊には最新鋭の無人偵察機、スキャンイーグルが配備されたことも、注目点の一つだ。
スキャンイーグルは我が国で初めて導入された兵器であり、ジェット推進機構を持ち、中距離程度の索敵を行う性能を誇る。
米ボーイングの子会社、Insitu社が開発したもので1機あたりの価格は13億円余りとも言われており、非常に高価な機材となっている。
ところでなぜ、このような高価で最新の機材が、尖閣を防衛する第15旅団ではなく、南九州を防衛する第8師団なのか。
更に言うと、「情報隊」という部隊が師団・旅団の隷下に設置されたのはここ第8師団だけであり、第15旅団にも存在しないのはなぜなのか、についてだ。
確かに、南九州は中国人民解放軍の圧迫を受けている最前線ではあるが、普通に考えればより差し迫った脅威があるのは、第15旅団隷下の沖縄方面であると考えられそうなものだ。
それはこちらをご覧頂ければ、わかりやすいかも知れない。
先日、平田浩二(第41期)・奄美警備隊長のご紹介でも使わせて頂いた図だが、こちらが我が国の、南西方面を巡る各要衝の位置関係である。
ご覧頂ければわかるように、我が国はこの地域に、兵站上の重大な脆弱性を抱えている。
南九州から奄美にかけての海上優勢を失えば、第15旅団を始めとした全ての部隊が干上がるということだ。
この課題は繰り返しお伝えしていることだが、那覇に「沖縄補給処」の設置がなく、最低限の兵站拠点すらないことが非常に大きい。
言い換えれば中国人民解放軍は、南西方面の島嶼部を盗るためには直接欲しい島にいきなり上陸をするのではなく、この地域・海域に艦を出して兵站を圧迫するだろう、ということだ。
そうすれば、同地域の陸自戦力はすぐに無力化することになる。
さらに、場合によってはその中間にある奄美を直接、占領する作戦も当然立てているはずだ。
つまり、尖閣を始めとした南西方面島嶼部に脅威があるということは、これら地域への極めてか細い兵站ルートが敵の標的になり得るということである。
そしてそれが第8師団の警備担当地域であり、だからこそ、この地域には我が国の領土に近接しようとする敵を直接観測する、第8情報隊の設置が急務になった。
この辺りは正直、防衛白書などで説明されているわけではないが、要衝の位置関係からみてまず間違いのないところではないだろうか。
いうまでもなく、その初代隊長を任された山本にかかる責任は極めて重く、その国防に対して国民から掛けられる期待は非常に大きい。
では、そんな山本とはこれまで、どのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。
少し詳細に、その経歴を見ていきたい。
コメントを残す