その吉浦が陸上自衛隊に入隊したのは平成2年3月。
原隊(初任地)は明野に所在する第10飛行隊であり、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切っている。
(画像提供:陸上自衛隊立川駐屯地公式Webサイト)
(画像提供:陸上自衛隊立川駐屯地公式Webサイト)
その後、職種部隊では、帯広に所在する北部方面隊の対戦車部隊の精鋭・第1対戦車ヘリコプター隊を経て、防府に所在する第13飛行隊では隊長兼防府分屯地司令を務めた。
平成27年12月からは、西部方面航空隊長兼高遊原分屯地司令にも上番している。
なお対戦車ヘリコプターは対戦車戦闘の切り札とも言える部隊で、富士総合火力演習でも人気の演目を飾る機種だが、いかんせん非常に高価な装備だ。
さらにその調達課程で様々な問題が発生したことから、今後の編成がやや不透明な状況となっているが、いずれにせよ非常にカッコイイ、いかにも陸自航空隊らしい強さと迫力に溢れている部隊である。
また職種部隊以外の現場では、平成15年8月から第16次ゴラン高原派遣輸送隊長を務めたことは先述のとおりだ。
その間、中央では、陸上幕僚監部防衛部の情報通信・研究課を経て、班長ポストは陸上幕僚監部監理部総務課企画班長と統合幕僚監部運用部運用第2課国際地域調整官で経験。
なお統幕の国際地域調整官時代には西アフリカのガーナに赴任し、エボラ出血熱の流行に対する国際緊急援助活動に必要な物資の輸送を行うための現地指揮官も務めた。
また記憶にあたらしいところでは、平成26年12月にはエア・アジア航空機消息不明事案に協力するためインドネシアの現地調整所に赴任し、指揮官を務めるなど、文字通り世界をまたにかけて活躍している。
紛争地だけでなく、疫病が猛威を振るうタフな現場に着任し、日本が果すべき国際貢献活動の最前線に立っていたわけだが、残念ながら多くの自衛官がこのような危険な現場で活躍していることを知る国民は余り多くない。
ぜひ、我が国の自衛官はこのような形でリスクと戦い世界平和に貢献していることを、一人でも多くの人に知ってもらいたいと願っている。
またこれらの活躍とは別に、平成24年12月からは鳥取地方協力本部長の要職を務めた他、29年3月には研究本部の主任研究開発官として活躍していることも、印象的な補職だ。
そして30年3月、東部方面航空隊長兼ねて立川駐屯地司令に上番し、首都圏をはじめとした1都10県の防衛警備の責任者として、重責を担い続けている。
タフな現場を数多く歴任した、34期を代表する高級幹部の一人であると言ってよいだろう。
では最後に、その吉浦と同期である34期組の人事の動向について見てみたい。
34期組は、2015年に最初の陸将補が選抜された年次にあたる。
そして2019年3月現在で、陸将補の任に在るのは以下の幹部たちだ。
荒井正芳(第34期)・自衛隊東京地方協力本部長(2015年8月)
柿野正和(第34期)・陸上幕僚監部監理部長(2015年8月)
小林弘樹(第34期)・統合幕僚監部運用部副部長(2015年8月)
橋爪良友(第34期)・陸上総隊司令部運用部長(2015年8月)
佐藤真(第34期)・第1師団副師団長兼ねて練馬駐屯地司令(2016年3月)
鳥海誠司(第34期)・陸上自衛隊教育訓練研究本部教育部長(2016年7月)
松永康則(第34期)・中部方面総監部幕僚副長(2017年3月)
大場剛(第34期)・第4師団副師団長(2017年8月)
※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は陸将補昇任時期。
※2018年8月以降に昇任した陸将補は期別未確認のため、追記する可能性あり。
以上のように、まずは荒井、柿野、小林、橋爪の4名が頭一つ抜けた状態にあり、第34期の最高幹部人事の中心になって行くことになりそうだ。
吉浦については、航空隊の現場における豊富な活躍だけでなく、国際貢献活動の現場も知り尽くすエキスパートだ。
今後はさらに重い責任を担い、あるいは陸将補に昇任の上で、陸上総隊の関連する部署で活躍の場を広げていくことになるのではないだろうか。
いずれにせよ、この先2020年代なかばにかけて、要注目の高級幹部の一人になることは間違いのない吉浦である。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:外務省公式Webサイト)
◆吉浦健志(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
2年3月 陸上自衛隊入隊(第34期)
年 月 第10飛行隊(明野)
年 月 第1対戦車ヘリコプター隊(帯広)
年 月 幹部学校付(♯45指揮幕僚課程)(目黒)
年 月 第9師団司令部(青森)
15年8月 第16次ゴラン高原派遣輸送隊長
16年3月 陸上幕僚監部防衛部情報通信・研究課(市ヶ谷)
年 月 第13飛行隊長兼防府分屯地司令(防府)
年 月 幹部学校付(♯58幹部高級課程)(目黒)
年 月 幹部学校付(♯8統合高級課程)(目黒)
22年8月 陸上幕僚監部監理部総務課企画班長(市ヶ谷)
24年12月 鳥取地方協力本部長(鳥取)
26年3月 統合幕僚監部運用部運用第2課国際地域調整官(市ヶ谷)
27年12月 西部方面航空隊長兼高遊原分屯地司令(高遊原)
29年3月 研究本部主任研究開発官(朝霞)
30年3月 東部方面航空隊長兼ねて立川駐屯地司令(立川)
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