その秋葉が陸上自衛隊に入隊したのは昭和61年3月。
1等陸佐に昇ったのが17年7月だったので、30期組1選抜後期(1番手グループ)となるスピード出世だ。
陸将補には27年8月に昇っているので、10年に渡り現場で指揮を執った上での、堂々の将官昇任であった。
(画像提供:陸上自衛隊小郡駐屯地公式Webサイト 広報えんじ2019年2月号外)
その後職種部隊では、中隊長ポストを第1施設大隊の第2中隊長で経験。
第5施設団本部勤務を経て、平成11年7月からは第8次ゴラン高原派遣輸送隊長も務めた。
なおゴラン高原派遣輸送隊は、国連PKO活動の一環で、中東ゴラン高原においてイスラエルとシリアが領有権を争う両軍の間に割って入り、その停戦を担保する非常に過酷な任務だ。
自衛隊は武力を行使する前提の前線には立てないために、その後方支援として輸送任務にあっったものである。
但し、ただ物資を運ぶだけの簡単な仕事ではもちろんない。
そもそもが、未舗装であり、冬季には雪がつもる2800mクラスの山岳地帯も経由する輸送任務である。
道路の補修から除雪作業まで、もちろん自分たちで行うものであり、誰も助けてくれない。
治安上の問題もつきまとう中での非常に過酷な任務であったが、秋葉はこの輸送隊の隊長として現地に赴任し、そして任務を完遂して、隷下部隊全員と共に無事に帰国している。
また帰国後は、恐らくこの時の実績と経験も評価されたのであろう。
当時CRF(中央即応集団)隷下にあった国際活動教育隊の第2代隊長兼ねて駒門駐屯地司令に着任し、国際貢献活動に赴く隊員たちの教育を担う責任者にも、抜擢されている。
その間、幕僚やスタッフのポジションでの活躍ももちろん幅広い。
中央では陸上幕僚監部の防衛部で勤務し、また東部方面総監部の防衛部防衛課長、東部方面総監部の人事部長など、各地で要職に就き、着実に成果を残した。
平成26年3月からは、イケメンを活かして自衛隊福岡地方協力本部長も経験している。
そして27年8月、陸将補に昇ると第5施設団長兼ねて小郡駐屯地司令に補され、その後職として陸上自衛隊関西補給処長兼ねて宇治駐屯地司令に着任し、さらにその手腕を発揮している。
30期のみならず、陸上自衛隊を代表する最高幹部の一人であると言ってよいだろう。
なお上記2枚の写真だが、これは秋葉が団長を務めた第5施設団の演習中のものであり、島嶼部で水際に地雷を敷設する訓練の一コマだ。
施設科というと、どうしても築城や道路の敷設、架橋といった任務が印象に残るが、工兵である以上、破壊活動もその大きな任務の一つとなる。
そして西部方面隊の場合、この画像のように島嶼部における地雷の敷設などで、拠点防衛を担う中核的役割も果たす。
直近の施設科の活躍は、非常に幅広く目覚ましいものがあるが、ぜひこんな過酷な任務に携わっている事実にも、目を向けて欲しいと願っている。
では最後に、その秋葉と同期である30期組の人事の動向についてみてみたい。
30期組は、既に1選抜の陸将が出揃っており、同期の陸上幕僚長候補という意味では絞り込みが終わっている状況だ。
そして2019年3月現在、その候補者たる30期組の陸将にある幹部は、以下の通りになっている。
髙田祐一(第30期)・富士学校長(普通科出身・2017年8月)
小野塚貴之(第30期)・陸上幕僚副長(施設課出身・2017年8月)
野澤真(第30期)・第2師団長(野戦特科出身・2017年8月)
吉田圭秀(第30期相当)・第8師団長(普通科出身・2017年8月)
田中重伸(第30期)・第3師団長(航空科出身・2017年12月)
※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は陸将昇任時期。
以上のようになっており、30期組は髙田、野澤、小野塚、吉田の4名が、極めて近い将来の陸幕長候補と言うことになるだろう。
中でもおそらく、大本命として陸自内外から期待を集めているのは、おそらく高田であろうと予想している。
次の次の陸上幕僚長候補として、内局はもちろん、政治家サイドでも強く意識されている存在ではないだろうか。
秋葉については、現場経験も豊富であり、またPKO活動でも結果を残すなど、今の時代に求められる施設科として顕著な実績を誇る幹部だ。
また第5施設団長など、最前線における施設防衛の経験ももちろん抜かりはない。
おそらく今後は、陸上総隊の要職に転じるか、あるいは補給系の幹部としてさらに上級組織に異動し、活躍の場を広げることになるのではないだろうか。
いずれにせよ向こう数年間、我が国の平和と安全に、もっとも責任を持つ要職で活躍を続けることは間違いのない最高幹部だ。
その動向には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊小郡駐屯地公式Webサイト)
◆秋葉瑞穂 (陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
61年3月 陸上自衛隊入隊(第30期)
平成
5年3月 第1施設大隊第2中隊長
7年3月 第1師団司令部第3部
7年8月 幹部学校(指揮幕僚課程)
9年1月 3等陸佐
9年8月 第5施設団本部
11年7月 第8次ゴラン高原派遣輸送隊長
12年3月 陸上幕僚監部防衛部
12年7月 2等陸佐
15年8月 防衛研究所
17年7月 1等陸佐
17年8月 幹部学校
18年8月 東部方面総監部防衛部防衛課長
21年3月 国際活動教育隊長兼ねて駒門駐屯地司令
24年3月 東部方面総監部人事部長
26年3月 自衛隊福岡地方協力本部長
27年8月 第5施設団長兼ねて小郡駐屯地司令 陸将補
30年8月 陸上自衛隊関西補給処長兼ねて宇治駐屯地司令
コメントを残す