その丸山が陸上自衛隊に入隊したのは平成5年3月。
1等陸佐に昇った記録が防衛省の人事発令で確認できないが、平成23年6年からマレーシア防衛駐在官(1佐ポスト)として赴任しているので、おそらく赴任直前に昇任しているのではないだろうか。
37期組は1選抜(1番乗り)の1佐昇任が24年1月なので、おそらく1選抜扱いでの、スピード昇任であったと思われる。
(画像提供:小島肇・元2等陸佐)
(画像提供:陸上自衛隊第2特科連隊公式Webサイト)
原隊は、言わずと知れた我が国が誇る”精鋭無比”・第1空挺団特科大隊。
中隊長ポストもそのまま、第1空挺団特科大隊の第2中隊長として上番し、初級幹部の時代から長きに渡り、この最精鋭部隊で心身を鍛え上げた。
その後、幹部自衛官の最難関試験とされるCGS(指揮幕僚課程)に合格・修了すると幕僚やスタッフとしての任務が多くなり、第4師団司令部第3部では防衛班長を、陸幕の運用支援・情報部運用支援課では日米共同計画係を、統幕の総務部総務課では渉外班長を務めるなど、国際色豊かな補職を歴任。
さらに、平成20年12月からマレーシア国防軍の指揮幕僚課程に留学すると、23年6年からはそのマレーシアに防衛駐在官として3年間赴任し、「軍人外交」の責任者として両国の友好関係を強化した。
さらに特筆するべきは、帰国後の27年10月から任された、富士学校特科部総合火力教育訓練センターの準備室長のポストだ。
ご存知のように陸上自衛隊では、2018年3月から「陸自大改革」と呼ばれる大規模な組織変革を進めている。
詳細は割愛するが、「戦力の集中と機動力の向上」「諸職種混成」を基本コンセプトに、あらゆる事態に全ての部隊が協働し、迅速に対処することを企図するものである。
その新しい時代にあって、野戦特科部隊はどうあるべきなのか。
そのグランドデザインと幹部曹士の教育をプランニングする大役を任されたのが、丸山であった。
まさに今後30年の、国防の在り方そのものを0から考える非常に困難な任務であったはずだ。
この人事一つをとっても、丸山にかかる陸自内外の期待の大きさを感じずにはいられない。
そしてその後職として、”精鋭無比”・第1空挺団の高級幕僚として原隊に戻り、さらに平成31年3月に第2特科連隊長に上番すると、「北鎮師団」が誇る我が国最強の火力を指揮している。
37期組を代表する、非常に充実したキャリアを誇る陸上自衛官の一人であると言ってよいだろう。
なお上記ではさらっと流したが、丸山が任されたマレーシア防衛駐在官のポストは軍事・外交の両面で極めて重要なポストなので、もう少し深堀りしておきたい。
基礎的な知識からおさらいすると、マレーシアは、マレー半島とその東に浮かぶボルネオ島北東部に広がる、様々な意味でアジアの要衝と言ってよい国である。
ピンとこない人がいれば、先っぽにシンガポールがある、あの半島とその横の島に広がる国であるとイメージして欲しい。
ちなみにシンガポールは元々マレーシアの一部であり、1963年にマレーシアから独立した歴史を持つ。
東アジアと西アジアを結ぶ中間に位置し、地理的・文化的・政治的意味合いが極めて重要な国である。
特に近年では、その華僑の多さから中国寄りの姿勢を示すこともあり、またイスラム教が国教のためイスラム圏にも理解を示すことから、西側諸国とは一線を画す政治姿勢も見られる。
かと思えば、伝統的に北朝鮮とも友好関係を維持してきた歴史があるなど、外交面での存在感が非常に大きな国だ。
我が国にとっても、西側諸国の一員として協力関係を引き出せるか。
あるいはより中国寄りの姿勢を鮮明にしていくか、といったところで、高度な外交力が必要とされる重要な国家の一つである。
丸山が「軍人外交」を任されたのはそのような、我が国にとって極めて重要なパートナーであり、友好関係を維持発展させなくてはならない最重要国家ということだ。
ちなみにマレーシアは、3000万人ほどと我が国の1/4程度の人口規模でありながら、常備軍は約10万人を数える。
陸軍主体の国軍で、約8万人が陸軍だが、陸上自衛隊16万人に比べるとおよそ半数だ。
軍人との外交は、文民である外交官には限界があり、軍人同士であるからこそ引き出せる情報が極めて多い。
そのような意味からも、陸軍主体の国家であるマレーシアに、空挺出身で気合の入った丸山が派遣されたのは非常に意味のある任務だったのではないだろうか。
ぜひそんな観点でも、丸山の活躍には注目して欲しい。
では最後に、その丸山と同期である37期組の人事の動向について見てみたい。
37期組は、2018年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜されたばかりの年次だ。
そして2019年11月現在で陸将補の任にあるのは、以下の幹部ということになる。
上野和士(第37期)・防衛監察本部監察官(2018年8月)
白川訓通(第37期)・第5施設団長(2018年8月)
田浦尚之(第37期)・通信学校長(2018年8月)
前島政樹(第37期)・西部方面総監部幕僚副長(2018年8月)
富崎隆志(第37期)・大阪地方協力本部長(2019年4月)
竹内哲也(第37期)・富士学校特科部長(2019年4月)
※肩書はいずれも2019年11月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2019年夏の将官人事で昇任した幹部の期別は未確認のため、加筆する可能性あり。
以上のようになっており、まずは上野、白川、田浦、前島の4名が1選抜前期で昇任し、それに富崎と竹内が続いているということになる。
今後もさらに、37期組からは多くの幹部が、将官に昇り活躍の場を広げていくだろう。
丸山については、これほどのキャリアと実績を誇る幹部だ。
陸上総隊の国際畑、富士学校の野戦特科教育、地方協力本部長に中央での組織づくりなど、どのような要職にも就く可能性があり、今後の活躍が非常に楽しみである。
いずれにせよ、37期組は今後10年に渡り、我が国と世界の平和を中心になって担っていく世代となる。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたいと願っている。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第2特科連隊公式Webサイト)
◆丸山徳一(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
5年3月 陸上自衛隊入隊(第37期相当)
6年2月 第1空挺団特科大隊(習志野)
12年8月 第1空挺団特科大隊第2中隊長(習志野)
14年8月 第48期指揮幕僚課程(目黒)
16年8月 第4師団司令部第3部防衛班長(福岡)
18年8月 陸上幕僚監部運用支援・情報部運用支援課日米共同計画係(市ヶ谷)
20年12月 マレーシア国防軍指揮幕僚課程(マレーシア)
21年12月 幹部学校戦術教育総括室教官(目黒)
23年6年 外務省防衛駐在官(マレーシア)
26年8月 統合幕僚監部総務部総務課渉外班長(市ヶ谷)
27年10月 富士学校特科部総合火力教育訓練センター準備室長(富士)
28年7月 第1空挺団高級幕僚(習志野)
31年3月 第2特科連隊長(旭川)
丸山さんとは司令部防衛班で一緒に勤務しましたが、常に冷静で状況判断が早くそれでいて仕事以外では楽しくメリハリのある班長でした。最高最強な班長です。
北島様コメントありがとうございました!
紳士で知的な内面が立ち居振る舞いにも現れておられる幹部であると、いつも遠くから拝見していましたが、お仕事ぶりも変わらないとなると最強ですね!
丸山1佐、そして北島様もますますのご活躍を微力ながら応援してまいりたいと思います。
どうぞ宜しくお願いします!
丸山連隊長の記事、待っていました!お元気そうですね北鎮の最大火力連隊長の任務ご苦労様です、小生は定点観測人です、前任の部隊の連中が 丸山一佐 は出来るやつだったなー と言っていました、現任務頑張って下さい。
すーさん!
本当に丸山連隊長には頑張って欲しいですね!
いつか習志野に帰ってきてほしいものです。