木場元大(こば・もとお)|第35期・第28普通科連隊長

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その木場が陸上自衛隊に入隊したのは平成3年3月。

1等陸佐に昇ったのは平成31年1月だ。

原隊(初任地)は先述のように、伊丹に所在する第36普通科連隊であり、阪神淡路大震災への災派を含め、同地で厳しい自衛官生活のスタートを切っている。

(画像提供:陸上自衛隊第11旅団公式Webサイト

(画像提供:陸上自衛隊第11旅団公式Webサイト

その後職種部隊では、福知山に所在する第7普通科連隊を経て、中隊長ポストを帯広に所在する第4普通科連隊中隊で経験。

21年3月(2009年3月)に第36普通科連隊に戻ると、2010年1月12日にハイチで発生した大地震の第4次隊として現地に入り、震災復興に尽力をして国益に貢献した。

その間、幕僚やスタッフのポジションでは、北部方面総監部人事部、陸幕人事部人事計画課、中部方面総監部人事部、研究本部、北部方面総監部防衛部、幹部候補生学校主任教官などで要職を歴任。

31年1月に1等陸佐に昇ると、令和元年8月に第28普通科連隊長兼ねて函館駐屯地司令に上番し、活躍を続けている。

ぜひ、今注目して欲しい指揮官の一人である。

 

なお、先述のように木場は世間からの風当たりが極めて厳しい時代に自衛官になり、そして災派に出動しては献身的に、国民のために汗を流す自衛官人生を送ってきた。

その後、時代は下り、東日本大震災を一つの契機に自衛隊に対する日本国民の理解度は急速に変化した。

言うまでもなく、極めて厳しい任務の中で、自らの危険を顧みずに献身的に活動する自衛官の姿が国民の心を打ったためであり、国民の多くが自衛隊を応援し、心から誇りに思う時代になったと言ってよいだろう。

昔を知るオッサンからすれば、本当に心から嬉しい時代が来たと思っている。

 

その一方で、前・北部方面総監の田浦正人(第28期)が、退役間際にハジメビジョンの小島肇(第19期)・元2等陸佐のインタビュー映像に答えている言葉が思い出される。

それは「物事を正しく恐れて欲しい」というものであり、要約をすると、今の若い自衛官は、入隊した時からすでに、国民の熱い期待を受けながら任務に邁進できるようになったと。

しかしその国民からの信頼は、多くの先輩自衛官たちの活躍によって初めて得たものであって、国民からの信頼や期待は簡単に与えられるものであると勘違いしては、絶対にならないというものだ。

これは、熱烈な自衛隊応援団である管理人(私)も、心から共感させて頂きながら映像を拝見した。

私は、自衛官が自衛官と言うだけで、まるで人権を否定されるかのような事をされていた、理不尽極まりない時代を知っている。

そんな時代にあっても下を向かず、ただ黙って自らの任務に誠実であり続けた多くの先人たちの我慢強さ、強い責任感、高い人間力・・・

そういったものに国民が心を打たれたから自衛隊の今日があるのであって、これらを失ったら、たちまち自衛隊は、国民からの支持を失うだろう。

ぜひ、「物事を正しく恐れて」これからも国民の尊敬を集め続ける存在であってほしいと、心から願っている。

 

では最後に、その木場と同期である35期組の人事の動向を見ておきたい。

35期組は、2016年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたる。

そして2019年12月現在で、その任に在る幹部は以下の通りだ。

 

井土川一友(第35期)・統合幕僚監部運用部副部長(2016年7月)

上田和幹(第35期)・需品学校長兼ねて松戸駐屯地司令(2016年7月)

遠藤充(第35期)・富士学校普通科部長兼ねて諸職種協同センター副センター長(2016年7月)

戒田重雄(第35期)・第1空挺団長兼ねて習志野駐屯地司令(2016年7月)

坂本雄一(第35期)・陸上総隊司令部運用部長(2017年3月)

武田敏裕(第35期)・防衛監察本部監察官(2017年8月)

青木誠(第35期)・陸上幕僚監部監察官(2017年8月)

垂水達雄(第35期)・第2師団副師団長(2018年8月)

※肩書は全て2019年12月現在。( )は陸将補昇任時期。

※2019年夏の将官人事で昇任した陸将補の期別が未確認のため、追記する可能性あり。

 

以上にような状況になっており、まずは井戸川、上田、遠藤、戒田の4名に続き、坂本、武田、青木の3名が、35期で将官に昇っている形だ。

この7名については恐らく、陸将まで昇り要職を歴任していく最高幹部となるのではないだろうか。

 

木場については、人事系のキャリアが多く、また阪神淡路大震災やハイチ大地震への派遣など、タフな現場での復興支援活動でも実績を残してきた幹部だ。

おそらく今後も、関連する部隊で要職を担い、活躍を続けてくれるのではないだろうか。

いずれにせよ、35期組は2020年代後半にかけて、我が国と世界の平和を担う中心になる世代である。

その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊第28普通科連隊公式Webサイト

◆木場元大(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
3年3月 陸上自衛隊入隊(第35期)
4年3月 第36普通科連隊(伊丹)
11年3月 第3師団司令部第3部(千僧)
13年3月 第7普通科連隊(福地山)
14年3月 富士学校(富士)
15年3月 第4普通科連隊中隊長(帯広)
16年8月 北部方面総監部人事部(札幌)
18年8月 陸上幕僚監部(人計)(市ヶ谷)
21年3月 第36普通科連隊(伊丹)
23年2月 ハイチ救援隊(ハイチ)
23年8月 第36普通科連隊(伊丹)
24年3月 中部方面総監部人事部(伊丹)
26年8月 研究本部(朝霞)
28年3月 北部方面総監部防衛部(札幌)
29年8月 幹部候補生学校主任教官(前川原)
31年1月 1等陸佐

令和
元年8月 第28普通科連隊長兼ねて函館駐屯地司令(函館)

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