鈴木直栄(防衛研究所副所長・陸将補)|第30期・陸上自衛隊

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その鈴木が陸上自衛隊に入隊したのは昭和61年3月。

1等陸佐に昇ったのが平成19年1月だったので、30期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。

その原隊(初任地)は福島県に所在するFH-70主力の第6特科連隊で、2018年11月現在でも、連隊編成を維持している。

しかしながら、先述のような陸自の再編方針の下で、第22普通科連隊の即応機動連隊化に伴い一部部隊がこれに合流。

また一部部隊が東北方面特科隊として合流し、2019年度中にその歴史に幕を閉じる予定であり、思い出の原隊が間もなく消滅しようとしている。


(画像提供:陸上自衛隊第13旅団公式Webサイト

その後、大隊長職は、「大火力の聖地」とも言うべき北海道の第7師団隷下・第7特科連隊第2大隊長として経験。

同じく連隊長(相当職)は、我が国最大の特科部隊である第1特科団隷下、第4特科群長として上富良野で上番した。

野戦特科を率いる幹部として、これ以上はない充実した戦力を率いて、指揮官としてのステージを積み上げている。

その間、中央(陸上幕僚監部)では教育・訓練系の要職で力を発揮。

教育訓練部、運用部運用第2課訓練班長、監理部総務課長といったポストを歴任するなど、幅広い分野で組織・仕組みづくりにも大きな成果を残した。

その後、陸自全体で組織の運用方針が行き届いているか、あるいは想定通りの能力を発揮できる環境にあるか、といったことを監査する責任者である陸上幕僚監部監察官も経験。

その後職として平成28年3月に第13旅団長に着任し、30年8月に防衛研究所副所長に転じた形だ。

職種部隊での幅広い経験はもちろん、陸自全体を俯瞰する、非常に責任ある要職を歴任してきたことも印象的な、第30期組を代表する最高幹部であると言ってよいだろう。

 

では最後に、その鈴木と同期である30期組の人事の動向について見てみたい。

30期組は、既に1選抜の陸将が出揃っており、同期の陸上幕僚長候補という意味では絞り込みが終わっている状況だ。

そして2018年11月現在、その候補者たる30期組の陸将にある幹部は、以下の通りになっている。

 

髙田祐一(第30期)・富士学校長(普通科出身・2017年8月)

小野塚貴之(第30期)・陸上幕僚副長(施設課出身・2017年8月)

野澤真(第30期)・第2師団長(野戦特科出身・2017年8月)

吉田圭秀(第30期相当)・第8師団長(普通科出身・2017年8月)

田中重伸(第30期)・第3師団長(航空科出身・2017年12月)

※肩書はいずれも2018年11月現在。( )は陸将昇任時期。

 

以上のようになっており、30期組は髙田、野澤、小野塚、吉田の4名が、極めて近い将来の陸幕長候補と言うことになるだろう。

中でもおそらく、大本命として陸自内外から期待を集めているのは、おそらく高田であろうと予想している。

次の次の陸上幕僚長候補として、内局はもちろん、政治家サイドでも強く意識されている存在ではないだろうか。

 

鈴木については、これだけの要職を歴任した幹部ではあるものの、30期組がすでに、一部で退役を迎えた陸将補も出始めている年次だ。

そのためあるいは、防衛研究所副所長の在職を2020年夏まで任されるようであれば、このポストを最後に制服を置くことになるのかも知れない。

その最後の大仕事として、我が国の最高幹部候補を教育し、また戦史研究と現場へのフィードバックを行う制服組の責任者を任されたことは、まさに鈴木らしい総仕上げと言えるだろう。

その動向が伝えられることはほとんどないが、防衛研究所の活躍を報じるニュースがあれば、その影では鈴木の活躍があることに思いを馳せて、これからも応援していきたい。

ぜひ、制服自衛官には、目立たずともこれほど重要な仕事があることも、一人でも多くの国民に知って頂ければ幸いだ。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:陸上自衛隊第13旅団公式Webサイト

◆鈴木直栄(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
61年3月 陸上自衛隊入隊(第30期)
62年3月 第6特科連隊

平成
5年 月 幹部学校
7年 月 富士学校特科部
9年1月 3等陸佐
9年 月 檜町業務隊付
10年 月 陸上幕僚監部教育訓練部(訓練)
12年7月 2等陸佐
13年 月 第7特科連隊第2大隊長
15年 月 陸上幕僚監部教育訓練部(訓練)
16年3月 陸上幕僚監部教育訓練部(教訓)
17年1月 1等陸佐
17年8月 幹部学校
18年8月 統合幕僚監部運用部運用第2課訓練班長
20年8月 第4特科群長兼上富良野駐屯地司令
22年7月 陸上幕僚監部監理部総務課長
24年7月 北部方面総監部人事部長
25年8月 中部方面総監部幕僚副長(防衛) 陸将補
26年8月 陸上幕僚監部監察官
28年3月 第13旅団長
30年8月 防衛研究所副所長

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