宮本久德(みやもと・ひさのり)は昭和39年11月生まれ、福岡県出身の陸上自衛官。
防衛大学校第33期の卒業で幹候70期、出身職種は高射特科だ。
平成28年12月(2016年12月) 第1高射特科団長・陸将補
前職は西部方面総監部防衛部長であった。
なお、第1高射特科団長としての指導方針は以下の通り。
【団長要望事項】
任務の完遂
日々進化
(画像提供:陸上自衛隊第1高射特科団公式Webサイト)
(画像提供:陸上自衛隊第1高射特科団公式Webサイト)
2019年2月現在、東千歳に所在し、北海道全体の防空任務を担う第1高射特科団で団長を務める宮本だ。
いうまでもなく、対ソ連(対ロシア)防衛を意識して編成された部隊であり、西部方面隊隷下にある第2高射特科団と併せ、我が国最大の規模を誇る高射特科部隊である。
近年では、ロシアに対する防空の緊急性がやや後退していることもあり、その想定を全国に広げ、訓練を繰り返す。
具体的には、喫緊もっとも脅威を抱える南西方面の島嶼部における防衛において、第2高射特科団と併せて空からの脅威に備えることが大きな課題だ。
もちろん、航空自衛隊の高射部隊とも連携しそれぞれの局面での役割分担と共同訓練の想定も忘れない。
ところで2019年2月現在において、この高射特科という部隊ほど、陸上自衛隊の中で存在感を増してきている職種は無いと言っていいかも知れない。
先述のように、南西方面島嶼部における対空防衛で、主要な役割を期待されることがそのもっとも大きな要因だ。
一つの想定だが、尖閣諸島を始めとする島嶼部で有事が発生した場合、海・空部隊の投入は抑制的に運用され、日中ともに陸軍主体の軍事衝突になるのではないだろうか。
なぜなら、海・空もこの局地戦に投入されるとなると、限定的な紛争という域を超えて、国家間の全面戦争になりかねないからだ。
おそらく中国人民解放軍はこの地域に兵を進めるにあたっては、開戦劈頭において、侵攻とははっきりとわからない形で民兵を中心とした先遣隊を送り込むはずだ。
それに対し、日本政府はもちろん、いきなり海空自衛隊を投入する決断はできないだろう。
さしあたって、陸自の水陸機動団などを載せた海自の第1輸送隊は近海に駆けつけると思うが、主力護衛艦や戦闘機はやや後方で待機になる。
そして中国人民解放軍も同様に、占領の既成事実化だけで国際情勢を落ち着かせたいために、小規模な陸軍部隊だけを派兵し直ちに外交努力を展開するのではないだろうか。
そしてこの均衡が崩れ戦線が拡大したら、次に攻撃を受けるのはおそらく宮古島や石垣島、それに沖縄の島嶼部といった島々になるはずだ。
なぜなら、これらの島嶼部に展開しているであろう陸自の12式地対艦誘導弾の性能は尖閣周辺を十分に射程圏内に収め、極めて高い精度で中国人民解放軍の海上勢力を全て、駆逐する能力を持つからだ。
そのため中国は、戦線の拡大が見られたら躊躇せずに、これら沖縄の島嶼部に巡航ミサイルなどで先制攻撃を掛けてくることが予想される。
そしてこれら島嶼部が無力化されたら、我が国は全面戦争に打って出る覚悟を持つか、もしくは尖閣を始めとした島嶼部の放棄と引き換えに、和平に応じるしかなくなるという結末になるだろう。
そしてアメリカなどの圧力もあって、後者を選ぶシナリオになる。
そのようなシナリオを避けるために必要になるのが、この陸自の高射特科部隊だ。
高射特科部隊は、戦線の拡大局面においてこれら島嶼部に巡航ミサイル等の攻撃を受けた際に、これら攻撃を迎撃することを主任務とする。
沖縄の島嶼部に地対艦ミサイル部隊が健在である限り、中国人民解放軍の海上勢力は尖閣にうかつに近づくことはできない。
海・空戦力の投入といった全面戦争の前段階で、陸上勢力同士の戦いで敵勢力の近接を排除できるということだ。
さらに戦線が拡大し、これら島嶼部に中国人民解放軍が上陸する事態になれば、おそらく第1空挺団が空挺降下し要衝の奪還に動く可能性もあるだろう。
ここまでくればもはや、海空自衛隊投入は間近となる全面戦争前夜の状態であり、我が国は覚悟を決める必要がある段階になる。
つまり、全面戦争一歩手間で中国人民解放軍の領土敵野心を挫くためには、この宮本率いる高射特科部隊の活躍が欠かせないということだ。
そんな事情もあり、2019年2月現在で、この職種部隊の存在感がかつて無いほどに高まっていると判断している。
では具体的に、高射特科職の存在感が高まっている事例としてどのようなものがあるのか。
詳細を説明していけばキリがないが、一例として将官人事における高射特科出身幹部の配置にそれが垣間見える。
例えば、我が国で有事が発生した際に全軍を統率する可能性がある陸上総隊の司令官は、2019年2月現在で住田和明(第28期)が務めている。
さらにそれだけでなく、運用の実務を担う幕僚長も、藤田浩和(第28期)だ。
この2人はともに、高射特科出身の最高幹部である。
さらに客観情勢から考えて、山崎幸二(第27期)・陸上幕僚長の後を継いで第37代の陸上幕僚長には、ほぼ間違いなく、住田が着任することになるはずだ。
このようなところでも、高射特科出身幹部の存在感が大きく感じられるのではないだろうか。
ちなみに、第1高射特科団長経験者からは、過去に陸上幕僚長に昇った幹部は一人もいない。
住田が陸上幕僚長に着任すれば、史上初となる人事だ。
そういった意味も含めて、ますますこの辺りの人事にはぜひ、注目して頂ければと思う。
では、2019年2月現在でその第1高射特科団をあずかる宮本とはこれまで、どのようなキャリアを歩んできた幹部なのだろうか。
少し詳細に、その経歴を見ていきたい。
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