杉山良行は昭和33年2月1日生まれ、静岡県出身の航空自衛官。
防衛大学校第24期の卒業で幹候70期、出身職種は飛行でF-4EJ戦闘機のパイロットだ。
平成29年12月(2017年12月) 第34代航空幕僚長・航空幕僚長たる空将のポストを最後に勇退が決まった。
前職は航空総隊司令官であった。
【以下、2017年12月19日加筆】
2017年12月20日、第34代航空幕僚長・杉山良行の勇退が決まった。
正直、杉山の退役は意外であり、このまま統合幕僚長に昇ると予想していた人事予想を完全に外してしまった。
予想ページはこちら。
お詫びしますm(_ _)m
【コラム】次期統合幕僚長人事予想(第31代・2017年10月)
統合幕僚長人事は、前身である統合幕僚会議の時代から、陸上自衛隊優先で進められて来た歴史がある。
つまり、本来であれば陸海空3自衛隊の持ち回りで就く要素が大きい統合幕僚長について、これまで陸→海→陸もしくは、陸→空→陸というローテーション崩れは何度も在るが、海→空→海あるいは空→海→空というローテーション崩れは、50年以上の歴史の中で1度も起きていない。
別の言い方をすれば、3代連続して陸上幕僚長出身者が着任しなかった事例は存在しないということだ。
そして2017年12月現在、統合幕僚長を務める河野克俊(第21期)は海上自衛隊出身。
前任は航空幕僚長出身である岩崎茂(第19期)。
その前任は陸上自衛隊出身である折木良一(第16期)であった。
つまり、陸→空→海と来ており、順当に考えれば次の統合幕僚長は陸上幕僚長である山崎幸二(第27期)となるはずだ。
しかしながら山崎は、2017年8月に陸幕長に着任したばかり。
一方で、史上初となる2回めの定年延長を経て、統合幕僚長のポストに在る河野の任期は2018年6月まで。さすがに3度目の定年延長は考えづらい。
また、陸幕長に着任して10ヶ月の山崎が早々に統幕長に着任することもなかなか考えづらい。
となれば、2017年12月のタイミングで杉山が統幕長に昇り、史上初の空→海→空の統幕長ローテーションになるのではないかと予想していたのだが、完全に外れてしまった。
これには2つ、大きな理由が在るのではないかと考えている。
一つは、極限まで緊張状態に在る北東アジア情勢を考えると、米軍にも自衛隊制服組にも精通し、また制服組と官邸サイドの架け橋としてこれ以上の存在はありえない統幕長である河野を今、このタイミングで代えることは極めて困難であること。
もう一つは、軍事組織の慣例は想像以上に強固だったということではないだろうか。
つまり、陸上自衛隊優先の原則は容易に崩れず、少なくとも3代連続で陸幕長出身者が着任しないという事態は考えられないということだったのかもしれない。
前者の要素は間違いなくあるだろう。
実際に、航空自衛隊では杉山の後任に丸茂吉成(第27期)が着任したにも関わらず、航空総隊司令官である前原弘昭(第27期)を始めとして、27期組で要職にあるものの多くが現行ポストに残留した。
このタイミングで大幅な最高幹部クラスの入れ替えは難しく、少しづつ時期を見ながら、交代に支障がない人事を進めていくと言うことなのだろう。
後者の要素は、2018年6月の河野の3度めとなる統幕長の任期切れの際に明らかになるだろう。
陸幕長である山崎がその後任に就けば、この要素も非常に大きかったということだ。
こちらについては、その時を楽しみに待ちたい。
いずれにせよ、西部航空方面隊や南西航空方面隊空域に精通し、パイロットとしても指揮官としても、常に我が国の国防の最前線に立ち続けた杉山が、統合幕僚長として力不足であったということだけは、無い。
極めて充実したキャリア、厳しくも部下思いの愛情深さなど、自衛隊トップに立つものとして非常にふさわしい最高幹部であった。
この大変な時期に自衛隊を去ることは色々と心残りであろうとは思うが、後進も頼もしい幹部ばかりである。
安らかな気持ちで勇退をして、今後は民間人の立場から、より厳しく自衛隊を指導し活躍されることを心から期待したい。
長い間本当にお疲れ様でした。
まずはご家族とゆっくりお過ごしになって、積年のお疲れをお癒やし下さい。
【以下、2017年9月6日記載】
防衛大学第24期の卒業であり、既に現役では統合幕僚長の河野克俊(21期)に次ぐ一番の年寄りになってしまった杉山。
陸上幕僚長が2017年8月に就任した山崎幸二(第27期)であり、海上幕僚長が2016年12月に就任した村川豊(第25期)なので、3自衛隊の中で最古参の幕僚長ということになる。
航空自衛隊入隊より戦闘機パイロット(F-4EJ改)として活躍し、空幕の要職はもちろん、航空開発実験集団司令官、南西航空混成団司令、航空総隊司令官と絵に描いたような出世街道を駆け抜け、第34代航空幕僚長に就任した。
そしてその就任が2015年12月ということなので、我が国の安全保障環境がもっとも厳しさを増し、年々スクランブル件数が過去最高を更新していく中での、航空自衛隊の舵取りを任されたことになる。
杉山が航空幕僚長を任されたのにはいろいろな理由があるだろうが、おそらくその最たるものが、南方方面での経験が豊富なことであろう。
杉山が飛行隊長を任されたのは第302飛行隊(那覇:当時)。
現在は百里基地に所在するF-4EJ改の部隊だが、その編成地は千歳であり、その後那覇の第83航空隊(現・第9航空団)の隷下に編入され、さらに2009年、F-15戦闘機の南西シフトを受け首都圏に回されることになり、百里基地に移駐して首都圏の防空任務にあたっている。
杉山が隊長を務めていたのは平成9年から。
対外的にも国内的にも、沖縄は極めて重要な位置づけをさらに増しており、若い頃の隊長経験は2015年現在、航空自衛隊にとっても政府にとっても得難いものであったであろう。
加えて、杉山の航空方面隊司令官相当職は平成24年(2012年)12月からの南西航空混成団司令だ。
こちらも司令部は那覇に在り、平成29年(2017年)年7月には正式に南西航空方面隊となった。
これほどまでに重要性を増している南西方面において、飛行隊長として現場空域を知り尽くし、指揮官として方面隊(混成団)を指揮した経歴は極めて大きい。
まさに、なるべくしてなった、航空幕僚長への抜擢であったといえるだろう。
さてそんな杉山だが、2017年7月に陸上自衛隊で起きたいわゆる南スーダン日報問題は、責任を取らされる形で退役となった同期の岡部俊哉(第25期)の人生だけでなく、杉山の人生をも大きく変える出来事になったかもしれない。
すなわち統合幕僚長人事だ。
2017年9月現在の統合幕僚長は先述の通り河野克俊(21期)だが、本来その任期は2016年12月までであったところ、緊迫する北東アジア情勢に加え、後任に就く陸上自衛隊の岡部俊哉がまだ陸幕長就任4ヶ月であったことから後継には早すぎ、定年延長の措置が取られた。
その後さらに、岡部の陸上幕僚長任期満了の目処となる2018年7月を意識した1年間の定年延長措置が取られたのだが、その直後の2017年7月に岡部が更迭されてしまう。
つまり、統合幕僚長人事が極めて不透明になってしまい、少なくとも予定されていたシナリオは完全に白紙になったことになる。
これが2017年9月現在の状況だが、この状況で次の統合幕僚長、すなわち第6代の統合幕僚長を予想すると、おそらく杉山良行その人が就任する可能性が最も高いと見ている。
なぜか。
予想の根拠を挙げてみたい。
まず常道で考えれば、河野の次の統合幕僚長は陸上自衛隊から出るのが筋だ。
基本的には政治色が強い役職なので、組織改編前の統合幕僚会議議長の時代から、このポストは陸海空自衛隊の幕僚長出身者で持ち回りで選ばれ就任してきた歴史がある。
その中でもさらに陸が優先され、陸海空のサイクルを崩し、陸→海→陸や陸→空→陸となったことはあっても、3回連続で陸が選ばれなかったことは歴史上1度もない。
そのような意味合いからも、現在の統合幕僚長である河野は海上自衛隊出身であり、その前任の第4代統合幕僚長である岩崎茂(第19期)は航空自衛隊であったことから、次に空もしくは海が選ばれれば、史上初の番狂わせとなる。
しかしながら軍事組織は時に、慣例を打ち破っても臨機応変に適材適所の対応しなければならないこともあるだろう。
ひとつひとつ見ていきたい。
まず常道通り、陸上自衛隊から選ばれるパターンだ。
その候補者は陸上幕僚長である山崎幸二(第27期)であり、有力候補者の一人であることに変わりはない。
2017年8月に就任したばかりだが、河野の任期が切れる2018年6月末をめどに、1年足らずの経験で統合幕僚長に上る可能性は十分考えられる。
その一方で山崎は施設科の出身であり、2017年9月現在のように、東アジア情勢が極度の緊張状態にあるその延長線上の国際情勢の中では、果たして陸海空3自衛隊のトップとして十分な知見を持ち合わせているのか、という疑問が持たれるであろう。
施設科は完全な後方支援職ではなく、むしろ普通科と密接に協力をし合いながら最前線で戦う職種でもある。
しかしながら、2017年9月現在我が国が直面している安全保障上の危機は、北朝鮮の弾道ミサイルであり、中国の南西方面における島嶼部への領海侵犯だ。
このような状況下においては、陸自の職種でもっとも存在感を増しているのは普通科、とりわけ日本版海兵隊とも呼ばれる西普連(西部方面普通科連隊)であり、あるいは高射特科や野戦特科(地対艦ミサイル連隊)である。
もちろん施設科を含め、全ての職種の必要性が重要であるのは言うまでもないのだが、危機に際しまず一番に殴り込みをかけ、あるいは国土を防衛するその危機の現場で一瞬の判断力を求められるのは、おそらく普通科となるであろう。
この状況において、その知見がトップに備わっていないとなると、やはり厳しい。
山崎が選ばれる可能性は、「次は陸上自衛隊の番」という政治的な配慮からは最も可能性が高いものの、現実の脅威に対する人事としては、やや弱いことは間違いない。
次に候補者となるのが海上自衛隊の村川豊(第25期)だ。
村川の海上幕僚長就任は2016年12月なので、河野の引退が予想される2018年6月末現在における交代には特段の問題はない。
しかしながら、統合幕僚長人事は、繰り返しになるが政治色も帯びざるを得ないポストだ。
2期連続で海上自衛隊出身者が就任することは考えづらく、というよりも、おそらくそれだけでまずありえないであろう。
加えて村川は、純粋な後方支援職であり経理出身だ。
やはり、東アジア情勢が緊迫の度を増している状況下にあっては、統合幕僚長に適任であるとは言いにくい。
次に候補者となるのが航空幕僚長である杉山。
空→海→空という統合幕僚長の順送りは史上初となるので慣例破りの人事だが、陸海空3幕僚長の現職の中で、南西方面における危機を肌で感じ、実力部隊を指揮した経験を持つのは杉山だけである。
危機の最前線に立ち、南西航空混成団司令を務め、年々スクランブル件数が過去最高を記録する中で航空幕僚長を務めた男が間もなくである2017年12月にその任期を終えることが予想される。
そのまま退役を認めてしまうのは、明らかに合理的ではない人事の選択になるであろう。
南西方面におけるエキスパートの知見を政府が渇望しているのは、第3代統合幕僚長であった折木良一(第16期)、第4代であった岩崎茂(第19期)が退役早々、防衛大臣政策参与(防衛大臣補佐官)として、官邸に呼び戻されたことからも明らかだ。
なお折木は特科(野戦特科)の出身であり、西部方面隊で日本版海兵隊の一翼を担う特科を指揮した経験を持つ。
岩崎は緊張感を増す東アジア情勢の中で、パイロットであり航空幕僚長出身である知見をあてにされての人事である。
これらの人事からも、統合幕僚長のポストには総合的に危機に対処できる人材が求められていることは明らかであり、そういった意味からも、杉山が選ばれる可能性が高いといえるだろう。
その場合、就任は2017年12月であり、そのタイミングで第6代統合幕僚長に昇格するのではないだろうか。
そして河野は即日、防衛大臣政策参与に就任するだろう。
なお、このストーリーが外れた場合は、どう考えても陸上幕僚長の山崎幸二が就任するストーリー以外はあり得ず、2018年7月頃を目処に、ある意味で予定通り、陸上幕僚長からの統合幕僚長への昇進となる。
その答えは、2017年12月に出るはずだ。
この記事をポストしてから僅か3ヶ月後の事であり、楽しみに待ってみたい。
◆杉山良行(航空自衛隊) 主要経歴
昭和
55年3月 航空自衛隊入隊(第24期)
平成
3年1月 3等空佐
6年7月 2等空佐
7年8月 航空幕僚監部補任課
9年8月 第83航空隊第302飛行隊長(那覇)
11年1月 1等空佐
11年4月 幹部学校付
12年8月 幹部学校
12年12月 航空総隊司令部演習計画課長
14年8月 航空幕僚監部防衛調整官
16年8月 航空幕僚監部運用課長
17年7月 第4航空団司令(松島) 空将補
19年12月 西部航空方面隊副司令官(春日)
21年3月 航空幕僚監部監理監察官(市ヶ谷)
22年7月 航空幕僚監部人事教育部長(市ヶ谷)
24年1月 航空開発実験集団司令官(入間) 空将
24年12月 南西航空混成団司令(那覇)
26年12月 航空総隊司令官(横田)
27年12月 航空幕僚長
29年12月 航空幕僚長のポストを最後に勇退
【注記】
このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。
主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。
自衛官各位の敬称略。
※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。
【引用元】
防衛省統合幕僚学校 公式Webサイト(研修講師写真)
http://www.mod.go.jp/js/jsc/school/section_education_domestic_270114.html
防衛省航空自衛隊 ニュースリリース公式Webサイト(会談写真)
http://www.mod.go.jp/asdf/news/release/2016/1107/
防衛省 平成29年度防衛白書公式Webサイト(会談写真)
http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2017/html/n3214000.html
統幕長人事で防大の期が6期空くというのも過去に
ない話で河野→山崎だと空き過ぎのような
しかし二代続けて海自からと言うのも考えづらく
どうなるのか?
mana様
コメントありがとうございます。
朝鮮半島情勢が落ち着くまで、河野統幕長の勇退は無いのかもしれないですね。
さすがに次は山崎陸幕長のような気がするのですが、あるいは3度めの任期延長もあり得るかもしれないですね