竹中信行 (防衛監察本部監察官・海将補)|第36期相当・海上自衛隊

Pocket

その竹中が海上自衛隊に入隊したのは平成4年3月。

1等海佐に昇ったのが23年1月、海将補に昇ったのが29年7月であったので、36期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。

ただでさえ、将官に昇る幹部の数が少ない海上自衛隊において、一般大学卒業生でありながら1選抜での昇任は特筆するべきことであり、文字通り36期を代表する幹部であると言ってよいだろう。

(画像提供:海上自衛隊舞鶴地方隊公式Webサイト

(画像提供:海上自衛隊舞鶴地方隊公式Webサイト

潜水艦幹部の出身であり、2等海佐以降の経歴はやえしお副長兼航海長を経て、20年12月になるしおの艦長に着任。

26年7月には第5潜水隊司令に就き、我が国が誇る最新鋭潜水艦「そうりゅう」を指揮するなど、潜水艦隊指揮官としてのキャリアは非常に充実している。

なお、なるしおについても、平成15年に就役したばかりであった当時最新鋭の潜水艦であり、竹中はその5代目の艦長であった。

2019年2月現在でも現役で活躍している、我が国の潜水艦部隊を支える戦力である。

 

またその間、中央(海上幕僚監部)では、人事教育部補任課を経て班長ポストを防衛部防衛課の業務計画班長と防衛調整官で、課長ポストは防衛部防衛課長に就くなど、エリートポストど真ん中で要職を歴任。

そして29年8月、1選抜で海将補に昇任すると舞鶴地方総監部幕僚長の要職を任され、その後職として30年8月に防衛監察本部監察官に着任している。

いずれのポストも非常に重い責任を担うものばかりであり、竹中に対する海自内外の期待の大きさを示すものとなっている。

 

ところで余談だが、日本のみならず、潜水艦を運用する世界の軍関係者にとって、「佐久間勉」という名前は、特別な響きが在る。

一般には馴染みのないお名前であろうかと思うが、「第6潜水艇遭難事件」と聞けば、ピンとくる人もいるのではないだろうか。

この事件は、我が国における潜水艦の黎明期にあった1910年(明治43年)に発生。

潜水艦の開発実験任務の途中で、第6潜水艇が沈没・着底し乗組員総員が殉職することとなった事件である。

この事件に際して、艇長であった佐久間は事故の経緯と沈没・着底後の艇内の様子を事細かに時系列で記録を続ける。

そして死を迎えるまさにその時まで最後の任務を続けるが、最後の最後に薄れゆく意識の中で、判読困難な文字で記していたのは以下の2点。

 

・潜水艇は極めて可能性のある艦種であり、この事故をきっかけとして実験が滞ることがないように、心から願う。

・事故の原因は全て小官(佐久間)にあり。部下たちの遺族に対し、特別の計らいを望む。

 

そして佐久間以下全ての乗組員は2名を除き、死を迎えるその時まで冷静に、自分の持ち場を守った場所で息絶えていた。

残りの2名は、最後まで機関を再起動させようと故障区画の修理にあたっており、その場所で最後の時を迎えていた。

 

後日、着底した第6潜水艇をサルベージし艦内を調査した海軍関係者は、その余りに見事な最期と、佐久間艇長の最後の任務たる事故記録の一切、そして遺言に驚くことになるが、この事件にもっとも驚き、また海軍軍人の精神を見たのは英国海軍であった。

当時英国海軍は、佐久間の最後に関する詳報を直ちに海軍内で共有。

海軍軍人の鑑であると顕彰することになるが、おそらくその影響であろう。

事故(1910年)から100年以上が経つが、今も佐久間艇長の顕彰式典には、在日英国大使館付きの武官が出席し、スピーチを行うことが慣例となっている。

 

そして、その佐久間勉艇長の出身地は福井県若狭町。

そんなこともあり、舞鶴地方隊では毎年4月15日、佐久間艇長殉職の日を記念した追悼行事を支援している。

一般国民には本当に、もっともっと知るべき先人たちの誇り高い活躍が、数多く存在する。

 

では最後に、その竹中と同期である36期組の人事の動向について見てみたい。

36期組は、2017年夏の将官人事で最初の海将補が選抜されたばかりの年次だ。

そして2019年2月現在で海将補の任にある幹部は、以下の通りになっている。

 

竹中信行(第36期相当)・防衛監察本部監察官(2017年8月)

金嶋浩司(第36期)・第4航空群司令(2017年12月)

金刺基幸(第36期)・防衛大学校訓練部長(2018年3月)

星直也(第36期)・防衛装備庁プロジェクト管理総括官(2018年8月)

石巻義康(第36期)・第3護衛隊群司令(2018年12月)

※肩書はいずれも2019年2月現在。( )内は海将補昇任時期。

 

以上のような状況になっており、まずはこの4人が36期組のトップエリートとして、今後もさらに要職を歴任していくことになるだろう。

 

竹中についてはその中でも、一般大学の卒業生でありながら1選抜で昇任を続ける、今海上自衛隊でもっとも注目したい最高幹部の一人だ。

2020年代後半にかけて、その活躍は我が国の国防そのものであり、ますます重い責任を担うポストを歴任していくだろう。

その動向は今後も追い続け、そして変わらず応援をしていきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略

(画像提供:海上自衛隊舞鶴地方隊公式Webサイト

◆竹中信行(海上自衛隊) 主要経歴

平成
4年3月 海上自衛隊入隊(第36期相当)
15年1月 3等海佐
18年7月 2等海佐
19年12月 やえしお副長兼航海長
20年12月 なるしお艦長
21年12月 海上幕僚監部人事教育部補任課
23年1月 1等海佐
24年8月 海上幕僚監部防衛部防衛課業務計画班長
26年7月 第5潜水隊司令
27年8月 海上幕僚監部防衛部防衛課
27年12月 海上幕僚監部防衛部防衛課防衛調整官
28年7月 海上幕僚監部防衛部防衛課長
29年8月 舞鶴地方総監部幕僚長 海将補
30年8月 防衛監察本部監察官

Pocket

2件のコメント

2019年2月時点での36期組の海将補ですが、星 直也 氏(防衛装備庁プロジェクト管理総括官)が抜けております。差し支えなければ追加していただけますでしょうか。

コメントを残す