福元洋一は昭和41年8月4日生まれ、宮崎県出身の陸上自衛隊。
防衛大学校第33期の卒業で幹候70期、職種は野戦特科だ。
平成29年8月(2017年8月) 防衛医科大学校学生部長・1等陸佐
前職は第3師団司令部幕僚長であった。
なお、第10特科連隊長兼ねて豊川駐屯地司令であった頃の指導方針は以下の通り。
【連隊長要望事項】「前傾姿勢」
2018年5月現在、防衛医科大学校学生部長を務める福元だ。
野戦特科の幹部であり、広報や報道官の要職を歴任しているのが印象的なキャリアになっている。
その福元の連隊長職は愛知県豊川市に所在する第10特科連隊。
第10特科連隊はFH-70を主兵装とする野戦特科の部隊だが、この兵装を運用する部隊は、近年の予算削減措置をまともに受け続けている受難の時期が長い。
なおかつ第10特科連隊の場合、福元が連隊長を務めていた平成25年度に、5個大隊から3個大隊に大幅縮小される憂き目を見ている。
さらに全国の特科連隊や特科隊がそうであるように、時期は未定だが、第10特科大隊も廃止される方針が既に確定した。
ただ、廃止と言っても消滅するわけではなく、他の方面隊でもそうであるように、兵力の集中と機動力の向上を目的として、方面隊直轄の特科隊として再編されるということだ。
特科隊に限らず、これはこれからの陸自の一般的な形になっていくだろう。
すなわち、予算の削減が進み定員の充足が進まない昨今の情勢下に置いて、精強さを維持しながら国防力の強化を図るには、日本各地に所在する各部隊の機動力を向上させ、全国のあらゆる地域に展開する能力を保有すること。
さらに兵力を分散するのではなく集中配置し、初動でまとまった兵力を投入できること。
このような試みの先駆的な動きとして野戦特科の再編が進んでいるものであり、近代の陸戦において決定的な役割を果たす野戦特科の重要性が低下しているわけではない。
野戦特科は、主力同士の正面戦闘では絶対に欠かすことができない職種であり、ぜひこれからも全国の特科部隊を応援して欲しい。
なお、この第10特科連隊出身の幹部には、第33代陸上幕僚長を務め、東日本震災においてはJTF-TH(Joint Task Force – Tohoku)の指揮官を務めた、故・君塚栄治(第20期)氏がいる。
現役の将官では、権藤(權藤)三千蔵(第29期)や山根寿一(第33期)がいるが、かつては本州最大の規模を誇った野戦特科部隊であったこともあり、今もこの職種にある幹部にとっては憧れの配置の一つだ。
その誇りある部隊の伝統は、中部方面特科隊として再編されても、いささかも変わることはない。
さて次に、その福元のキャリアと33期組の動向について見てみたい。
福元が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
北海道真駒内に所在する第11特科連隊で初級幹部としての基礎を叩き込まれ、以降、各地の野戦特科で指揮を執ったキャリアを持つ。
平成16年にはイラク復興業務支援隊の一員としてサマーワに渡り、連日宿営地の近くにロケット砲が撃ち込まれる過酷な環境の中で、広報官としての任務をこなした。
陸幕総務課の広報室に在職中の赴任であったが、その後も統合幕僚監部の総括副報道官を務めていることから考えて、広報の任務に特別の能力の高さを見せているということなのかも知れない。
なお33期は、2014年に最初の陸将補が選抜された年次にあたる。
2018年5月現在では、33期からは以下の幹部たちが陸将補にある状況だ。
冨樫勇一(第33期)・統合幕僚監部報道官(2014年8月)
山根寿一(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2014年8月)
牛嶋築(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2014年8月)
末吉洋明(第33期)・統幕運用部副部長(2014年8月)
廣惠次郎(第33期)・通信学校長(2015年3月)
児玉恭幸(第33期)・陸上幕僚監部監察官(2015年8月)
梅田将(第33期相当)・大阪地方協力本部長(2015年12月)
酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地(2016年3月)
宮本久徳(第33期)・第1高射特科団長(2016年12月)
堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)
楠見晋一(第33期)・東京地方協力本部長(2017年8月)
※肩書はいずれも2018年5月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2018年3月の昇任将補について未確認のため、追記する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは冨樫、山根、牛嶋、末吉の4名を中心に、33期の人事は展開していくことになるだろう。
福元については正直、防衛医科大学校学生部長という配置が何を意味するものなのかさっぱりわからず予想が困難だが、政経中枢師団である第3師団の幕僚長という要職を経験している幹部である。
第10特科連隊では大隊長と連隊長を務めていることもあり、さらに第3師団での要職経験も併せて考えると、中部方面隊の要職に就いて、第10特科連隊を中部方面特科隊に吸収・再編する役割を担うことになるかも知れない。
いずれにせよ、第33期組は2020年代前半にかけて、我が国の平和と安全を中核になって担っていく世代だ。
その活躍には注目し、今後とも応援していきたい。
※
本記事は当初2017年6月29日に公開していたが、加筆修正が重なったので2018年5月9日に整理し、改めて公開した。
◆福元洋一(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 陸上自衛隊入隊(第33期)
2年3月 第11特科連隊第1大隊中隊長(真駒内)
10年 月 富士学校特科部教育課武器教官(富士)
11年 月 幹部学校付(目黒)
13年 月 第2師団司令部第3部防衛班長(旭川)
15年 月 幹部学校教育部戦術第3教育室教官(目黒)
15年 月 陸上幕僚監部監理部総務課広報室(市ヶ谷)
16年 月 イラク復興業務支援隊広報幹部
17年 月 陸上幕僚監部監理部総務課広報室(市ヶ谷)
18年 月 陸上幕僚監部教育訓練部教育訓練課教育班共通教育係長(市ヶ谷)
20年 月 第10特科連隊第2大隊長(豊川)
21年 月 幹部学校付(目黒)
22年 月 統合幕僚監部総括副報道官(市ヶ谷)
24年7月 第10特科連隊長兼ねて豊川駐屯地司令(豊川)
26年8月 研究本部主任研究開発官(朝霞)
27年12月 第3師団司令部幕僚長(伊丹)
29年8月 防衛医科大学校学生部長
【注記】
このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。
主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。
自衛官各位の敬称略。
※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。
【引用元】
防衛省陸上自衛隊 第3師団公式Webサイト(プロフィール画像及び着任式画像:第3師団だより28年1月号)
http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/cs.html
http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/prmagazine.html
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