平野邦治(北部方面後方支援隊長・1等陸佐)|第34期・陸上自衛隊

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その平野が陸上自衛隊に入隊したのは平成2年3月。

1等陸佐に昇ったのが20年6月であったので、34期組1選抜(1番出世)よりも1年半も早い昇任であった。

これは平野が防衛駐在官として海外に赴任するに際しての人事上の特別なルールであり、事実上通常の1選抜の扱いと考えて良いだろう。

(画像提供:陸上自衛隊北部方面隊公式Webサイト

その原隊(初任地)は朝霞に所在する第31普通科連隊であり、その後化学学校で教育を受け職種部隊に配属。

24年12月には、ある意味において化学科の幹部にあってもっとも名誉あるポストの一つと言ってよいだろう、中央特殊武器防護隊の隊長に上番。

なお中央特殊武器防護隊は、陸上総隊(平野が隊長時には中央即応集団)隷下にあり、有事の際には全国あらゆる場所に駆けつけ、NBC攻撃に対処する極めて勇敢な部隊だ。

また平野は、別の意味で化学科の幹部にあって最高に名誉あるポストの一つである、在オランダ防衛駐在官のポストも務めている。

なぜ、職種部隊とは関係無さそうな防衛駐在官のポストが、化学科の幹部にとって大きな名誉なのか。

それはこのポストには、化学科にとって非常に特別な意味があるからだ。

オランダには、化学兵器の拡散防止と使用を禁じた国際条約によって設置された国際機関・OPCW(化学兵器禁止機関)が存在する。

同条約にはもちろん日本も加盟しているが、OPCWの運営にあってはその発足から日本政府と日本人・それに陸上自衛隊(官)も中心的な役割を果たし、活躍をしてきた歴史がある。

そしてその日本側の代表部署がオランダのハーグにある日本大使館に設置をされたことから、在オランダ防衛駐在官は陸自の受け持ちとなり、特に化学科の高級幹部が赴くようになった歴史的背景がある。

言い換えれば、OPCWにおける日本代表の外交官は、実質的に化学科に在る陸自幹部の指定席と言ってもよいだろう。

ちなみに平野の前任者ももちろん化学科の幹部であり、2019年3月現在で陸上自衛隊九州補給処長を務める陸将補の吉野俊二(第31期)であった。

自衛隊で培った知見を活かし、世界平和に直接貢献する、非常に名誉あるポストということだ。

こんな誰も知らないこんなところでも、平野を始めとした我が国の自衛官は、世界平和のために汗を流している。

ぜひこの事実を、一人でも多くの国民の知るところとなって欲しいと願っている。

 

このような職種幹部としての任務以外にも、平野の活躍はまだまだ幅広い。

中央や各地の組織における幕僚・スタッフのポジションでは、陸上幕僚監部の教育訓練部、研究本部の研究員を経て、北部方面総監部では装備部の後方運用課長を、陸上幕僚監部では装備部武器・化学課の化学室長を、東部方面総監部では装備部長などの要職を歴任するなど、多くの分野で実績を残した。

そして30年3月、北部方面後方支援隊長に上番し、我が国最大の地方隊・北部方面隊における後方支援業務の全てに責任を担い、活躍を続けている。

化学科に留まらず、我が国を代表する後方支援系職種の高級幹部の一人であると言ってよいだろう。

 

では最後に、その平野と同期である34期組の人事の動向について見てみたい。

34期組は、2015年に最初の陸将補が選抜された年次にあたる。

そして2019年3月現在で、陸将補の任に在るのは以下の幹部たちだ。

 

荒井正芳(第34期)・自衛隊東京地方協力本部長(2015年8月)

柿野正和(第34期)・陸上幕僚監部監理部長(2015年8月)

小林弘樹(第34期)・統合幕僚監部運用部副部長(2015年8月)

橋爪良友(第34期)・陸上総隊司令部運用部長(2015年8月)

佐藤真(第34期)・第1師団副師団長兼ねて練馬駐屯地司令(2016年3月)

鳥海誠司(第34期)・陸上自衛隊教育訓練研究本部教育部長(2016年7月)

松永康則(第34期)・中部方面総監部幕僚副長(2017年3月)

大場剛(第34期)・第4師団副師団長(2017年8月)

※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は陸将補昇任時期。

※2018年8月以降に昇任した陸将補は期別未確認のため、追記する可能性あり。

 

以上のように、まずは荒井、柿野、小林、橋爪の4名が頭一つ抜けた状態にあり、第34期の最高幹部人事の中心になって行くことになりそうだ。

 

平野については上述のように、我が国が追求する機動戦闘にとって全く欠くことのできない部隊を多く経験し、そして後方支援にこれ以上はない知見を積み上げてきた高級幹部の一人である。

おそらく今後もさらに活躍を続け、あるいは将官に昇任し、各地の補給処で指揮を執っていくことになるのではないだろうか。

いずれにせよ、その活躍こそが我が国の平和と安全に直結する、重要な責任を担い続けていくことだけは、間違いのないところである。

その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊北部方面隊公式Webサイト

◆平野邦治(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
2年3月 陸上自衛隊入隊(第34期)
2年9月 第31普通科連隊(朝霞)
年 月 化学学校(大宮)
年 月 第10師団司令部付隊(守山)
年 月 陸上幕僚監部教育訓練部(市ヶ谷)
年 月 幹部学校(目黒)
20年6月 1等陸佐
20年6月 在オランダ防衛駐在官(オランダ)
23年8月 陸上自衛隊研究本部研究員
23年12月 北部方面総監部装備部後方運用課長(札幌)
24年12月 中央特殊武器防護隊長(大宮)
26年8月 陸上幕僚監部装備部武器・化学課化学室長(市ヶ谷)
27年8月 東部方面総監部装備部長(朝霞)
30年3月 北部方面後方支援隊長(島松)

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