曽根勉(そね・つとむ)|第38期・第35普通科連隊長

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その曽根が陸上自衛隊に入隊したのは平成6年3月。

1等陸佐に昇った時期が自衛隊の人事記録になく判明しないが、これはおそらく、先述のように平成24年6月から防衛駐在官として外務省に出向しているためだと思われる。

実質的に、25年1月昇任の1選抜と考えて良さそうだ。

原隊(初任地)は滝ヶ原に所在する普通科教導連隊であり、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切った。

(画像提供:陸上自衛隊第35普通科連隊公式Webサイト

その後、山岳レンジャーで知られ我が国を代表する最精鋭部隊の一つである第13普通科連隊、防衛大学校の小隊指導教官を経て、中隊長ポストを宮崎県に所在する第43普通科連隊で経験。

なおこの中隊長時代に、第8次イラク復興支援群第3科の運用訓練幹部として、極めて大きな危険と隣り合わせのサマーワに渡っていることは先述のとおりだ。

中央では、陸上幕僚監部運用支援・情報部運用支援課の運用支援班要員として沖縄に赴任し、在日米海兵隊とのコミュニケーションを担当する陸上連絡官というレアなポジションを務め他他、統合幕僚監部では防衛計画部防衛課防衛班でも任務を経験。

またその間、筑波大学大学院の修士課程を修了し、ドイツ連邦軍の指揮幕僚大学にも留学するなど、嘘のようなエリート街道を突き進んだ。

平成24年6月から、在オーストリア日本大使館防衛駐在官としてウィーンに駐在していたことは先述のとおりであり、こちらも嘘のように国際経験が豊かなキャリアを誇る。

そして27年8月、相馬原に所在する”空中機動旅団”、第12旅団司令部で第3部長を務めると、その後職として29年8月に第35普通科連隊長に上番し、その手腕を発揮している。

3回目にもう一度言うが、嘘のようなエリート任務をこなしてきた、35期を代表する高級幹部の一人であると言ってよいだろう。

 

なお上記写真の1枚目、極寒の吹雪の中で手袋もつけずに地図を開いているのが、曽根本人である。

この写真は、平成30年2月6日~9日までの間、福井県北部で発生した豪雪に伴う災害派遣に、隊員約360名、車両約70両を率いて、曽根自ら先頭に立ち現地入りした際に撮影されたものだ。

多くの車両が幹線道路で立ち往生し、ドライバーの多くが命の危険に晒される猛吹雪の中、自衛隊が駆けつけて給油や食事の交付、また必要に応じ病人の治療や搬出を行ったことを覚えている人は多いだろう。

あの極めて厳しい環境の中、このエリート中のエリートとも言える曽根が陣頭に立ち、現場で指揮を執っていた。

これが自衛隊の強さであり、また指揮官の在り方であることはいまさら申し上げるまでも無いことではあるが、それでもやはり、改めて陸上自衛隊の凄さを感じる。

ぜひ、あの大豪雪に際し陸上自衛隊では、指揮官自らがもっとも過酷な現場に立っていたことを。

それが陸上自衛隊の文化であることを。

一人でも多くの人に知ってもらいたいと願う。

 

では最後に、その曽根と同期である38期組の人事の動向について・・・

見てみたいところなのだが、38期組は2019年夏の将官人事、つい先月、最初の陸将補が選抜されたばかりの年次だ。

今のところ、第4地対艦ミサイル連隊の中隊長や第9特科連隊長などの要職を歴任し、陸幕の装備計画部装備計画課長から陸将補に昇任した栁裕樹(第38期)が、1選抜昇任であることは把握しているものの、後の3名はわからない。

こちらは判明次第、またご紹介していきたいと思う。

 

曽根については、そのキャリアから考えて軽武装・高機動力を誇る精鋭部隊を率いることに長けている高級幹部ではないだろうか。

また数々の国際経験に加え、在沖縄米軍との連絡役を務めるなど、欧州事情にも精通し米国にもパイプを持つ、嘘のような(4度目)キャリアを誇る。

いずれ将官に昇り、より重い責任を担っていくことは間違い無いのではないだろうか。

これからの活躍に要注目の幹部であり、しっかりと目を離さず、そして応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊第35普通科連隊公式Webサイト

◆曽根勉(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
6年3月 陸上自衛隊入隊(第38期)
6年10月 普通科教導連隊(滝ヶ原)
9年3月 霞ヶ浦駐屯地業務隊付・筑波大学大学院修士課程(霞ヶ浦)
11年3月 第13普通科連隊(松本)
14年3月 防衛大学校小隊指導教官(横須賀)
16年8月 第43普通科連隊中隊長(都城)
17年10月 第8次イラク復興支援群第3科 運用訓練幹部(サマーワ)
18年3月 陸上幕僚監部運用支援・情報部運用支援課運用支援班 在日米海兵隊陸上連絡官(沖縄)
19年8月 統合幕僚監部防衛計画部防衛課防衛班(市ヶ谷)
21年8月 中央情報隊付・ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学(ハンブルグ)
23年8月 陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課付(市ヶ谷)
24年6月 在オーストリア日本大使館防衛駐在官(コソボ・マケドニア・セルビア・モンテネグロ兼轄) 欧州安全保障協力機構(OSCE)軍事顧問(ウィーン)
27年8月 第12旅団司令部第3部長(相馬原)
29年8月 第35普通科連隊長(守山)

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